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1980年代ヒット曲が今も不滅な理由

  • 書名 イントロの法則80’s
  • サブタイトル沢田研二から大滝詠一まで
  • 監修・編集・著者名スージー鈴木 著
  • 出版社名文藝春秋
  • 出版年月日2018年10月 5日
  • 定価本体1400円+税
  • 判型・ページ数四六判変型・216ページ
  • ISBN9784163909097
BOOKウォッチ編集部コメント

 本書『イントロの法則80's』は、著者自身が「世界でもかなり珍しいであろう」という「イントロ評論本」。イントロは、歌のメロディーから独立して商品価値を持つ可能性があり、1980年代はその意味で優れたイントロが量産された時代――。そう考える著者が、それを実証しようとまとめ上げたものだ。「TOKIO」「ルビーの指環」「君は天然色」など40曲をリストし、イントロを徹底分析したうえ、後の時代にも影響を与えた7つの法則をプレゼンする。

日本音楽史上最強時代

 平成元年は1989年だから80年代は昭和最後の一区切りといえる。平成に入って、つまり90年代以降、音楽界でもかねてより胎動していたデジタル化の動きが加速するのだが、80年代の音楽は、その前段階として、アナログとデジタルの配合比率が「黄金律で極まった時代」にあったという。そればかりか「ポップとラディカル」「進化と成熟」の調和がとれ、著者は「80年代は、日本音楽史上最強時代だった」と振り返る。

 著者のスージー鈴木さんは1966年、大阪生まれ。高校の図書館で見つけた、音楽評論家、渋谷陽一さんの「ロックミュージック進化論」(1980年)にひらめきを得て音楽評論を志すようになった。早稲田大学政治経済学部卒業後、広告業界に就職しサラリーマンをしながら地味ながら評論活動にも従事。「アラフィフ」となった数年前から著書を次々と出版するようになり、連載執筆、テレビやラジオ出演などメディア露出が増えて「大器晩成的に盛り上がっている」という。当欄でも先に「サザンオールスターズ 1978−1985」(新潮社)を紹介している。

 本書では「イントロ」がテーマではあるけれど、イントロ当てクイズが本体の歌あってこそクイズが成り立つように、イントロを文字通り導入として、その曲を演じた、あるいは作ったアーティストやその世界観、時代背景などが掘り下げて語られる。コード進行など音楽の専門的な内容に踏み込むところもあるが、著者自身が「ノスタルジーに陥らず、マニアックに溺れず」とブレーキをかけており、そのためか、その独特な見方や解説はわかりやすく面白く、ページをめくる速度の方はグイグイと加速する。

サウンドの成熟度

 1980年代といえばいまから30〜40年前。80年代から同じ分だけさかのぼれば1940〜1950年代ということになろうが、80年代に、40〜50年代の歌は「ナツメロ」として、一定以上の年齢層に需要はあったが、当時のカルチャーのメジャーな部分を成すものではなかった。

 日本の音楽シーンの原点を終戦の1945年として、2018年までを考えると、その中間点は81年。著者によれば、さまざまな理由により、81年までの上半期の「サウンドの成熟度」の伸び率は劇的な一方、中間点以降のそれは著しく鈍化しているという。つまり、80年代に40年代のものは古色が強めに響くけれども、考えられる頂点に近い成熟度に達している80年代のサウンドは「エバーグリーン(常緑樹)」化したといえ古臭くならないというわけだ。

 80年代を境にした成熟度の変化の違いの背景には、デジタル化の始まりや進化、洋楽新譜に対する信仰がやみ、90年代以降の「Jポップ」につながる、サウンドの「自給自足化」があったと著者は述べている。

「君は天然色」のイントロの秘密

 本書に収録された40曲は、著者による「選りすぐりのエバーグリーンなイントロ」。80年1月1日に発売された沢田研二の「TOKIO」は「80年代そのもののいイントロ」であり、同じ流れのなかで、そのほぼ1年後にリリースされた寺尾聰の「ルビーの指環」で「シティ・ポップ」に時代がスタートするなどと、軽やかな調子でそれぞれについて解説が進む。それらを読みながらインターネットの動画サイトなどでサウンドを確認する、立体的な読書もできる。

 著者が「80年代を代表するイントロといっていい」と、40曲のラストに掲げているのは大滝詠一の「君は天然色」。ピアノのチューニングの音から始まり、何が始まるのかと期待を盛り上げ、ドラムスティックでカウントするカッカッカッと7回したあとにジャーンとサウンドがやってくる。

 「80年代の他のどの曲にも似てない、とても奇妙なイントロ」なのだが「70年代に雌伏して、チャンスをずっと待っていた大滝詠一が、80年代に入った瞬間、ヒトとモノとカネとジカンをジャンジャン(大滝の口癖)使ってこしらえたのがこのイントロ」であり、後のプレイヤーらに影響を与えている。著者によれば「君は天然色」が収められたアルバム「A LONG VACATION」は商業的に成功したうえ「シティ・ポップ」の一派である「第三京浜ポップス」の系譜となり、山下達郎らにより継承されていく。

 著者は、80年代にひそかに増えた、より熱い大滝ファンである「ナイアガラ―」の一人という。当時の資料を引用して「君は天然色」のイントロを論じるパートは詳細で、ぜいたくに制作された様子は興味深い。

 80年代のヒット曲は「エバーグリーン」なこともあるが、それらと同時代の両親らとカラオケを楽しんだ子どもたちもよく知っており、さらに若い世代にも親しまれている。本書はタイトルも、装丁も、特定層をターゲットにしているようにみえるが、そのなかは著者が言うように「ノスタルジーに陥らず、マニアックに溺れず」と、こちらもエバーグリーン。世代を超えて楽しめるに違いない。

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