読むべき本、見逃していない?

日本はアメリカの「第三グループ」だった!

  • 書名 スノーデン 監視大国 日本を語る
  • 監修・編集・著者名エドワード・スノーデン、国谷 裕子ほか 著
  • 出版社名集英社
  • 出版年月日2018年8月17日
  • 定価本体800円+税
  • 判型・ページ数新書判・200ページ
  • ISBN9784087210453

 かつてジャーナリストは文学部出身者が好ましいと言われたことがあった。同時代の市井の人々の喜怒哀楽を伝える、いわば時代小説家のようなイメージだ。

 ところが今やそんな悠長なことは言っていられない。本書『スノーデン 監視大国 日本を語る』(集英社新書)を手にして、そのような思いを強くした。

ロシアを拠点に活動

 本書は2017年10月に、東京で開かれた公益社団法人自由人権協会(JCLU)70周年記念シンポジウム「デジタル時代の監視とプライバシー――市民によるコントロールのために――」を翻訳し、加筆修正して書籍化されたもの。

 巻頭にエドワード・スノーデン氏のメッセージが掲げられている。米国国家安全保障局(NSA)および中央情報局(CIA)の元局員。アメリカ政府が無差別監視をしている実態等を暴露した2013年6月の「スノーデン・リーク」で世界を震撼させた。2014年より「報道の自由基金」理事を務めている。アメリカにはいられなくなり、ロシアを拠点に活動している。

・アメリカ政府が日本政府にXKEYSCOREと呼ばれる最先端監視技術を秘密裏に提供している
・この事実を2017年4月にNHKが証拠文書と共に報じたが、日本政府は答えをはぐらかせている
・ジャーナリズムの役割は、権威を疑い、疑問を突き付けること。(政府という)社会における最も強大な組織による情報の独占に挑戦すること

 しばしば「隠すべきものがなければ何も恐れることはない」「良き市民である限り、何も影響を受けません」といわれる。それはナチスの宣伝大臣、ヨーゼフ・ゲッペルスの言葉だ、と警鐘を鳴らしている。

法整備はアメリカの要請

 本書は、第一章「米国国家安全保障局による大量監視の実態と日本」、第二章「 9・11以降の監視強化の動きとACLUの戦い」、第三章「日本の監視の現状」、第四章「大量監視とプライバシー保護のための仕組み」、第五章「デジタル時代の監視とプライバシー」に分かれる。

 スノーデン氏は、特定秘密保護法や共謀罪という近年の日本の監視強化の動きは、米国の要請によると見る。アメリカとの関係を深め、これまでよりもはるかに強力な監視システムを導入するには、それに対応する法整備が必要というわけだ。

 技術の進歩でこれまで不可能とされていたことが可能になる。すべての電子的な通信を集約し、誰をも監視できる。そうした米国が開発したシステムにすでに日本は組み込まれているが、米国にとって日本は、「第三グループ」だという。「第二グループ」は英国など英語を母語とする白人中心国家。「第一」は米国。日本は、今は米国に従順だが、未来永劫いつまでもこの関係が続くか分からない。したがって、XKEYSCOREの中の一部だけが提供されている。さらに言えば、NSAは日本のインフラに侵入し、ダメージを与える能力も持つという。日米協調も、やや片務的なようだ。

まるで近未来小説

 門外漢にとっては近未来小説のような話だが、スノーデン氏の指摘となると、信ぴょう性が高い感じがする。といっても一般のジャーナリストはどうすればいいのか。スノーデン氏は、メディア全体が協力することを求める。これは、朝日、NHK、共同通信がタッグを組んだ取材『ルポ タックスヘイブン――秘密文書が暴く、税逃れのリアル』(朝日新聞出版)でも書かれていたと記憶する。その理由として、スノーデン氏は「業界の将来のために共通認識を持たねばなりません」。市民から公益の熱心な擁護者だと思われることが重要だという共通認識を持つことの大事さを強調する。

 スノーデン氏自身は現在、内部告発者がジャーナリストにコンタクトをとり、内密に事実を伝えるには、どうすればよいか、またジャーナリストは入手した情報を公開するに当たり、どのような方法を使えば、最も安全かつ有益な結果を得られるのか。こうしたことに最も関心を向けているという。

 今でも、何をどう書くかという「パトス」の部分で「文学部」の魂は不滅だろう。しかし世の中、もはやそれだけでは不十分。マスコミ各社の記者にも、より専門的なIT知識が必要のようだ。そのあたりは、ジャーナリスト福田直子さんの『デジタル・ポピュリズム』(集英社新書)にも書かれていた。また、『権力と新聞の大問題』(集英社新書)では米国の記者たちと権力との緊張関係も伝わる。サイバーセキュリティ関連記事で知られ、雑誌「ジャーナリズム」(朝日新聞社)で「ネット取材の極意」を連載している朝日新聞の須藤龍也記者は、もともとシステムの開発者として入社し、記者に転じたという。これからはそういう記者も増えるのかもしれない。

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