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駅ラーメンは無人駅から始まった!?

  • 書名 全国「駅ラーメン」探訪
  • サブタイトル地域に人を呼ぶ、ご当地の味
  • 監修・編集・著者名鈴木 弘毅 著
  • 出版社名交通新聞社
  • 出版年月日2018年10月15日
  • 定価本体800円+税
  • 判型・ページ数新書・239ページ
  • ISBN9784330919188

 街のなかでラーメン店とそば屋をさがしてみると、ラーメン店の方が目立つものだが、鉄道駅では、そのコントラストは逆になり、そば屋の方が圧倒的に多くなる。ところが近年では「駅ラーメン」が存在感を増しており、場所によっては、ご当地の味として、地域の名物になっているという。

ホームの店舗でスープ作り

 本書『全国「駅ラーメン」探訪』(交通新聞社)は、その駅ナカの新トレンドを求めて国内各地をめぐったもの。著者は、これまで3000軒の駅そば店(駅周辺のものを含む)を訪れ、1万杯以上の駅そばを食べ歩いた「駅そば研究家」で、その経験があってこそルポできるグルメ紀行に仕上がっている。

 「駅ラーメン」のタイトルを最初に目にしたときには、駅の立ち食いそば屋が「余技」でやっているラーメンのことかと思ったが、それは早とちりであり、いずれもメーンのアイテムになっているものだ。ホーム上の立ち食いで、ラーメンだけを出している店もある。

 著者が「駅ラーメンの基本形」と呼ぶ、ホーム上のラーメン専門店があるのは東武鉄道の春日部駅(埼玉県春日部市)。同社の2路線が交差する乗り換え駅で乗降客が多く、元茶店の店主が客だった同社社員の誘いをきっかけに1978年に開店した。チェーンの飲食店のようにセントラルキッチンからの配達に頼ったものではない。スープは毎朝6時から仕込む本格的なもので、メンマは自家製というこだわりだ。夏は冷やしも提供するなど客本位。近年はこうした隠れた名店をさがして訪ね歩くマニアも多いという。

 JRをはじめ鉄道各社はビジネスの多角化をすすめ大きなターミナル以外でも「駅ナカ」が進化を続けている。衰えることがないラーメンブームも追い風になって、新しい施設やスペースを利用して、ホーム上ばかりか、改札内外の駅舎、駅ビルで「駅ラーメン」が増えているのだ。

あの「臭気」も気にならなくなる

 駅ラーメンを調べていくと、早い段階から地方の無人駅への出店が多くみられたという。国鉄が分割民営化(1987年4月)したのをきっかけに無人駅が急増した時代に、駅舎の空いたスペースを利用してラーメン店の開業が続いた。そばに比べてラーメンは客単価が高く、薄利多売に依存しなくても経営を続けられるのがその理由という。

 また、90年代にかけては、鉄道会社との委託契約により切符販売を請け負い、手数料収入を得られるようになりダブルインカムとなって安定したラーメン店の経営ができるようになった。

 一方、都市部ではかつては、駅での食事といえばファストフードに限定され、しかも安価なものほどいいわけで、駅そばが簡易飲食店として親しまれるようになった。店が増えたのは、国鉄末期の余剰人員の受け皿になったという側面もある。

 都市部で駅ラーメンが、駅そばより後発になった理由の一つとして、著者はにおいをあげる。駅そばでは、ホームや駅舎内に漂うカツオなどの出汁の香りでつい食べたくなることがあるけれど、ラーメンの場合は、動物性の出汁が使われることが多く、麺がゆでられて発するにおいは「臭気」とも表現されることもあり、客足を遠ざけるものと考えられることもあったに違いない。

 「駅そば研究家」である著者も当初は、この「臭気」が気になり取材がうまくいくか不安もあったというが、車を運転すれば乗り物酔いが解消されることを引き合いに出し、ラーメンにのめり込むことによって気にならなくなったという。ラーメンブームのなかで、多くの人にとっても、かつては「臭気」だったものが、そうではなくなったに違いない。

 J-CAST BOOKウォッチではこれまで、ラーメンに関する書籍として『ラーメンを科学する』(カンゼン)『ラーメンの歴史学』(明石書店)『チキンラーメンの女房 実録 安藤仁子』(中央公論新社)などを紹介している。

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