読むべき本、見逃していない?

「剰男」「空巣青年」...どこの国の話か?

  • 書名 未来の中国年表
  • サブタイトル超高齢大国で起こること
  • 監修・編集・著者名近藤 大介 著
  • 出版社名講談社
  • 出版年月日2018年6月21日
  • 定価本体800円+税
  • 判型・ページ数新書・224ページ
  • ISBN9784065120484

 中国では古代から国内で戦争が絶えず、人口増加策がずっと国是とされてきた。ところが20世紀に入り戦乱が止んで人口は激増に転じ、そのハイペースに指導者の間で懸念が強まり、ついには1982年「一人っ子政策」が国策に。中国は「憲法で家庭の出生数に制限を設けるという、世界でも稀有な国家となった」ものだ。

 指導部では罰金を科すなど政策の実施を徹底。しかし、その副作用で人口ピラミッドが逆三角形化し高齢化が進んでしまった。こんどはこの事態に危機感が強まって2015年に同政策を廃止、あらたに「二人っ子政策」が導入されたのだが出生数の増加にはつながる気配がない。本書『未来の中国年表』(講談社)によれば、中国は、目指す「超大国」となる前に「超高齢大国」に備える手当が必要のようだ。

世界で最も人口に敏感だったが...

 中国の人口は約14億人。本書では冒頭に「2018年5月26日午後2時31分時点」での推定人口が示されており、その数は13億9216万2603人。政府系の人口調査機関のウェブサイトには刻一刻と変わるカウンターがあるそうで同国の人口に対する関心の高さがうかがわれる。

 本書によると「中国民族ほど人口調査に熱心だった人々はいない」そうで、それは、年貢の徴収や戦争のための徴兵という必要性のほか「人口の詳細を分析すると国家の行く末が予見できたからではなかろうか」と著者は述べる。

 著者の近藤大介さんは、1965年生まれ。東京大学卒業後に講談社に入社し、中国、朝鮮半島を中心とする東アジア取材をライフワークにしている。同社文化有限公司副社長を経て、本書出版時は同社出版の「週刊現代」編集次長。これまで中国関連の著書は多数あり、明治大学で「東アジア論」の講師を務めている。

「二人っ子政策」に転換

 1982年からの「一人っ子施策」により、いまの30代から下の年代は一人っ子世代。同政策で4億人が減ったとされる。建国60周年を迎えた2009年、当時の胡錦濤政権は「世界人口が60億人突破する日を4年間遅らせる貢献をした」などと誇ったものだが、国内では少子高齢化時代の到来を早める弊害を呼び込んでしまった。当時からもなんらかの手当てが必要だったが、独特の政治体制などの事情が絡んで、政策転換は遅ればせながらの2015年に持ちこされてしまった。

 これで高齢化のトレンドが止むかとみられたものだが、政策転換の効果が分かる今年になって、予想を裏切り「人口減少時代」が始まったことが示された。1月に明らかにされた前年2017年の出生数が前年比63万人減の1723万人だったものだが、17年は「『二人っ子政策』元年」といえ、スタートでつまずいた格好。暗雲が一気に広がっていく。

 政策は転換したものの、そのための環境が不備なことが主な原因のよう。それは、子育てコストや物価の増加、子育て支援の公共サービスの欠如であり、また、政府が出産観念の変化を考えていなかったことが挙げられるという。日本でも同じような状況があるけれど、われわれなどの目から「低い」イメージのある物価は、その上昇の勢いがすさまじく、とくにファストフードなどの外食は日本をとうに追い越しているという。家賃の高騰も同じく急で、都市部の若者らは「汲々と暮らしている」状態だ。

アフリカ人女性との結婚増か

 さらには「一人っ子政策」の影響で、出産・子育てどころか結婚相手がみつからない社会状況も。一人っ子が、いわば強制されたため国民の間では「どうせなら男の子」という傾向が強まり、その結果、男女比がいびつになってしまったためだ。2020年には20~45歳の層では男性が女性より3000万人多くなり、マッチングの点で深刻な影を落としている。

 中国では、男性の結婚できる条件の一つに「マイホームが買える」ということがあるのだが、昨今の不動産相場ではなかなかこの条件を満たせる若い男性は多くはない。このため、ますます結婚できない男性が続出しているそうで、その存在が目立つようになり「剰男」(余った男性の意)と呼ばれ社会問題化している。

 数が多いから問題というのではなく、これら「剰男」が「貧しい国の女性と結婚するケース」が増えたり、親元を離れて一人で暮らしスマホばかりをいじっている「空巣青年」となってしまうことが、社会に前例がなく対処が困難な影響をもたらすのではないかとみられるからだ。多民族国家の中国では元々、国際結婚に抵抗はなく、今後は「剰男」とアフリカ人女性との結婚が増えると予想されている。

年金制度、老人ホーム、介護保険なし

 「二人っ子政策」に転じた中国だが、長年の「一人っ子政策」で急速に進む人口高齢化には効果がみられていない。少子高齢化の大波は日本を上回る規模で押し寄せ、中国国内ではさらにさまざまな社会問題が生じると著者は予測する。

 男女比率のアンバランスから「剰男」約3000万人が結婚難民化するなどのほか、2025年には若者が減り労働力不足が顕在化するという。その一方で、ホワイトカラー予備軍の大学卒業生はその数が増えすぎ職につけず900万人が失業する可能性があるという。また、35年にはインドが若い活力を保ったまま成長、その脅威にさらされることに。49年の「建国100周年」を祝うのは「5億人の老人」だという。

 今年4月、日本を視察に訪れた中国政府の経済ミッションのメンバーがこう述べたという。「中国は今後、人類が未体験の規模の、巨大な少子高齢化社会に突入する。それなのに、いまだ充実した年金制度や老人ホームなどのセーフティネットが敷かれておらず、介護保険法すらない。次の第14次5か年計画(2021~25年)は、少子高齢化時代への対応という『人間の安全保障問題』がメインテーマになるだろう」。日本など周辺国の安全保障に大きな影響があることは間違いなさそうで、今後の中国についての「入門書」ともなる一冊。

 ベストセラー『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』や、続編の『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』(いずれも講談社現代新書)で使われた「『人口』の観点から未来を予測」する手法を、中国にあてはめて未来を見越したもの。J-CAST BOOK ウォッチでは、両書とも紹介している。

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