読むべき本、見逃していない?

日本が「失われた20年」をボヤいているうちに...

  • 書名 10代に語る平成史
  • 監修・編集・著者名後藤 謙次 著
  • 出版社名岩波書店
  • 出版年月日2018年7月31日
  • 定価本体900円+税
  • 判型・ページ数新書・256ページ
  • ISBN9784005008780

 まもなく終わる平成とはどんな時代だったのか。本書『10代に語る平成史』(岩波ジュニア新書)は報道ステーションのコメンテーターとしておなじみのジャーナリスト、後藤謙次さんが分かりやすくまとめたものだ。教えている白鴎大学の「特講・平成政治史」の講義内容をベースにしている。

硬派記者の視点から見た平成の姿

 全体は10章に分かれている。イントロは「平成政治の主役は消費税」や「政治を激変させた選挙制度」など政治から始まる。これは大学の講義の内容や、後藤さんが共同通信で長く政治記者を務めたことによるものだが、同時に、世の中が基本的には政治で動いていることを示すものでもある。つづいて「バブル経済の終焉と失われた20年」と経済に入り、そのあと、「9.11が変えた日本外交」を説明する。

 全体として、「近くて遥かな北方領土」「中国の台頭と日中関係」「振幅激しい日韓関係」「ゴールの見えない日朝関係」など近隣国との関係が目立つ。それだけ平成の時代に「軋み」が続いたということだろう。

 背景には近隣国のパワーアップがある。中国などはとくに近年、経済的に力を付けた。先日、朝日新聞のオピニオン面で福田康夫元首相が日中関係について振り返り、「40年前の中国は、経済規模が日本の100分の1にも満たなかったのですが、いまや日本経済の3倍、実に日本国三つ分の経済規模にまで成長しました」と語っているのを読んで、改めて驚いた。今やアメリカを抜いて、日本の最大の貿易相手国にもなっている。平成とは、日本と中国が、経済的に切っても切れない関係になった時代ともいえるかもしれない。後藤さんは、「就任当初は中国への対抗意識をあらわにしていた安倍首相が、当初の強硬路線を大幅に軌道修正しつつあるのは明らかです」と書いている。

 日本が「失われた20年」などとぼやいているうちに、韓国や台湾も発展した。スマホの世界トップメーカーはサムスンだし、台湾製のパソコンを使っている人も増えている。評者の知る範囲では、上位クラスの大学生が英語を話せる割合は、日本に比べて、中国、韓国、台湾の方がはるかに高いはずだ。10代の若者には、そういうことも知ってもらいたいと思う。・・・と書いていたら、昨年末の日経新聞一面トップに「先端技術 中国が先行」という記事が出ていた。注目すべき30の先端技術研究のうち、8割で中国がトップに立っているというのだ。

同時代を手軽に復習するには便利な一冊

 本書では、さまざまな問題発生の淵源、なお残る難問、今後の課題などについても手短に解説されているので、頭に入りやすい。さらに「平成は自然災害の時代」という一章も加えられている。巻末に略年表も付いている。

 後藤さんは共同通信の編集局長でもあったので、本書は大手マスコミ幹部らしい硬派の視点から見た平成の姿を著したものと言える。「時事用語の基礎知識」のような手堅いまとめ方だ。おさらいをするには適している。ただし、こうした方面に疎い10代からすると、ちょっと退屈かもしれない。

 そのあたりは後藤さんも承知しているようで「あとがき」で補足している。ここでは朝日新聞の世論調査を引用しながら、「平成とは動揺した時代」であり、「明るい時代」だったと考えている人が少ないことを指摘、東日本大震災などの自然災害や、身近なところでは「シャッター街」の増加、65歳以上の人口が4人に1人という高齢化社会になっていることなどにも触れられている。そして自身の記者経験も振り返りながら、あっというまにネット社会になった驚きなどもつづられている。

 世の中を幅広くウォッチしている新聞社のセクションで言うと、編集局では政治、経済、国際(外報)、社会、スポーツ(運動)、文化・芸能、暮らし・生活、科学という分け方が普通だ。最近では特報部や、デジタル部というのもある。政治・経済・国際中心の本書では、割愛されている分野もあるが、大きな流れは押さえられているので、10代のみならず、就活生や、企業の管理職でも、同時代を手軽に復習するには便利な一冊といえる。

 J-CASTは、平成については『平成精神史』(幻冬舎新書)、昭和については「復刻アサヒグラフ昭和二十年」、『私の昭和史』(岩波新書)などを紹介済みだ。

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