読むべき本、見逃していない?

ビートルズはビーチ・ボーイズにどう対抗したか?

  • 書名 なぜビートルズは60年経っても売れ続けるのか
  • サブタイトルフレームワークを駆使し、持続可能なKFS(成功の鍵)を究明する
  • 監修・編集・著者名田沢貴 著
  • 出版社名幻冬舎メディアコンサルティング 発行、幻冬舎 発売
  • 出版年月日2018年12月18日
  • 定価本体1200円+税
  • 判型・ページ数四六判・224ページ
  • ISBN9784344920286

 ビートルズの元メンバー、ポール・マッカートニーが2018年10月に来日、4公演ともに満員の客であふれた。ビートルズ人気は結成60年、解散後50年たとうとしているが、依然衰えない。本書『なぜビートルズは60年経っても売れ続けるのか』(幻冬舎)は、マーケティング戦略を分析する手法を使って、その人気の理由を探った異色の本だ。ビートルズのファンはもちろん、マーケティングの基礎知識を学びたいという人にもうってつけの内容になっている。

 著者の田沢貴さんは1958年生まれ。長く朝日新聞社の販売の一線に立ってきた。中小企業診断士などの資格を持ち、現在は公益財団法人森林文化協会事務局長を務める。中学以来のビートルズファンで、ポール・マッカートニーの来日公演にも欠かさず行っている。

 本書の構成は、マーケティング戦略の立案、実行のプロセスを5つのステップに分け、解説とともにビートルズに落とし込んで、仮説検証するというスタイルになっている。

 最初のステップでは、企業を強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)の4つ括りで分類して考えるSWOT分析という手法を使う。

 ビートルズにあてはめると、①強みとして、マネジャーのブライアン・エプスタインのプロモーション力、プロデューサーのジョージ・マーティンの調整力、メンバーの作曲・作詞力、演奏・歌唱力などを挙げている。

 ②弱みとしては、行き過ぎたパフォーマンス、ファンの絶叫でライブ演奏に限界、金額交渉力の弱さ、知的財産権関連の知識不足、経営、財務・会計の知識不足などがある。楽曲の著作権への意識が薄く、ビートルズの楽曲の版権は最終的に彼らの元を離れてしまった。

 ③機会としては、戦後の音楽市場の拡大と若者の台頭、音楽の輸出入が盛んなリバプール、ハンブルクでの修業があり、④脅威としては、大人が受け入れないロック、多くのライバルの出現、収入の90%を超える高所得税率が挙げられる。

 以上の4つの要素を列挙しただけでは現状分析に終わってしまう。田沢さんはこれらを組み合わせたクロス分析を行い、いくつか戦略を立てる。

ライブを中止しスタジオ録音で「脅威」を回避

 たとえば、美しいバラードの「イエスタデイ」。音楽の多様性という「強み」で、大人層に受け入れられ、大人からの拒否反応という「脅威」を回避した。また、ファンの過剰反応によってコンサート活動が困難になったという「弱み」に対し、スタジオ録音で音楽の多様性を実現するとともに、大人層の拒否という「脅威」、ライバル出現という「脅威」を回避したという。

 田沢さんは、ビートルズの成功がマーケティングの「勝つための定石」を踏まえていたとしたら、今を生きる私たちの示唆やヒントになりえるのでは、という問題意識で執筆した。

 次に、セグメンテーションとターゲティング、ポジショニングのステップに進む。ここでは、ボブ・ディランやローリング・ストーンズ、ビーチ・ボーイズと対比した説明が面白い。たとえば芸術性の高いビーチ・ボーイズへの対抗策として、『リボルバー』を出したのは「同質化戦略」と見る。あえて模倣ないし追随することによって、チャレンジャー=ビーチ・ボーイズの差別化を帳消しにしてしまう戦略だったと。

 さらに、4P分析(マーケティング・ミックス)、マーケティング・マネジメントと新たなフレームワークに進むが、田沢さんはフレームワークの限界にも言及する。そして、フレームワークは解答まで教えてくれず、「ヒットの秘訣」はいつまでも続かない、と。しかし、ビートルズのヒットの「永続性・普遍性」には、「ビジネスとしての普遍的な秘訣」があるとして、最終章「ビートルズの時代超越性は、どこから来るのか」に突入する。

 ここでは、他の多くのミュージシャンの音楽を取り入れていった「吸収力」、強みを複数持ち、組み合わせていった「差別化力」、1966年にライブ活動を中止し、スタジオレコーディング活動にシフトした「環境変化対応力」の3つについてふれている。

 田沢さんは、ビートルズのイメージとして「専門店を集めたデパート」と記している。音楽業界のイノベーションを起こしたからこそ、ビートルズは今も売れ続けている、というのが結論だ。

 もちろん、彼らはマーケティング理論に基づいて音楽活動をした訳ではないが、後付けで分析しても「成功の鍵」を実践していた、というのは参考になるだろう。  

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