読むべき本、見逃していない?

モンスト作ってミクシィ救った男の「理系脳」

  • 書名 自己破壊経営
  • サブタイトルミクシィはこうして進化する
  • 監修・編集・著者名木村弘毅 著
  • 出版社名日経BP社 発行、日経BPマーケティング 発売
  • 出版年月日2018年12月10日
  • 定価本体1600円+税
  • 判型・ページ数四六判・223ページ
  • ISBN9784822259723

 世界で4500万人が利用するスマホゲームアプリ「モンスターストライク」(以下、モンスト)を大ヒットさせ、右肩下がりで業績が低迷していたミクシィをV字回復させた男がいる。現・同社代表取締役社長執行役員の木村弘毅さんだ。本書『自己破壊経営』(日経BP社発行、日経BPマーケティング発売)は、木村さんが多くの失敗経験や着想の秘訣などを公開、途中入社から10年で社長にのぼりつめたその半生を綴ったユニークなビジネス書だ。

 スマホゲームをいっさいやらない評者でもモンストの名前は知っている。あふれるほど大量のテレビCMが流れ、その名を聞かない日はないほどだ。2013年10月のリリース以来、利用者と売上げは増え続け、ミクシィの売上高1891億円(18年3月期)の約9割をモンストが占めている。

 成功の要因は後述するとして、木村さんは自分の失敗から書き出している。08年にITサービス企業からミクシィに移ったが、SNS「mixi」は、FacebookやTwitterなど新しいSNSに押され、苦しい状況だった。そんな中、「mixiパーク」というスマホ向けアプリの企画・開発を担当した。友達や兄弟など親しい間柄でのコミュニケーションをめざすアプリだったが、まったく伸びなかった。別の会社との共同事業だったため、「同じ釜の飯」を食えなかった開発体制とゲーム内容に問題があった、と振り返る。

赤字で追い詰められアイデアひねり出す

 会社の業績は四半期ベースで赤字に転落。次のゲームがダメだったら会社とともに自分も沈むしかない、と腹をくくった。アイデア出しに使ったのが「ブレーンストーミング(ブレスト)」ではなく「ブレーンステアリング」という手法。20個ほどの問いを木村さんが作り、4人で解決策をステアリング(誘導)した。時間が足りなかった。画面をビリヤード台に見立てて遊ぶ案が浮かび採用した。

 次に「事業アイデアコミュニケーションシート」で顧客や類似事業、課題などを洗い出し、実現可能性を探った。「みんなでワイワイのために」というコンセプトを支える5つの柱を以下のように立てた。

1 誰でもできる
2 集まると最高!(顔合わせマルチは超お得)
3 多彩なパーティー
4 厨二魂を震わせるど派手な必殺技
5 ドキドキハラハラ激怖ボス!

コンセプトは「バーベキュー」

 さらに、モンストを作りだしていく組織の運営まで戦略を立てた。「みんなでワイワイ」をキャッチコピ―にして「B.B.Q」つまり「バーベキュー」というコンセプトを決めた。一人遊びや見ず知らずの人とのネットでの対戦でなく、顔を突き合わせて遊ぶという独自のサービスが誕生した。開発の着手から7か月という桁外れのスピードでのリリースだった。

 会社の売り上げも13年度の約121億円から翌14年度には約1129億円と、わずか1年で9倍以上に急伸した。

 だが、V字回復したミクシィを激震が襲った。15年にオンラインチケット売買サービス「チケットキャンプ」を運営するフンザ社を買収したが、17年冬、同社がサービス上の表示に関して当局の捜査を受けたのだ。フンザの代表が書類送検され、サービスを閉鎖した。体制を立て直すため、木村さんはプロデューサーから社長に就任した。7人からスタートしたプロジェクトは、ヒットとともに拡大し、18年には約1000人の巨大な組織に成長するまでになっていた。

 「一発屋」で終わりたくないという思いで、ゲームを担当する組織の名称も「モンストスタジオ」から「XFLAG」に変えた。次のホームランを狙うためだ。そこでは毎日、午前10時に約1000人が一堂に集まり、朝会を開いているという。社長になった木村さんは毎朝出席できなくなったが、定期的に顔を出している。ユーザーにコミュニケーションの場を提供するために、社員が実際に顔を合わせる重要性は何物にも代えがたい、と強調する。

 就任後、スポーツ事業を柱の一つにしようと17年にBリーグ所属のプロバスケットチーム「千葉ジェッツふなばし」とパートナー契約を結んだ。さらに18年からJリーグのチームFC東京ともスポンサー契約し、サッカーの領域にも参入した。もう一つの新規事業の柱、ウェルネス事業では健康寿命の延伸に取り組んでいる。

 1975年東京生まれの木村さんは、東京都立大学工学部を中退。銀行員だった父親が起業した電気設備会社を手伝ったのが社会人のスタートだった。その後、携帯コンテンツ会社を経て、ITサービス企業に転職。そこでミクシィの社員と出会ったのが転機となった。

 幼い頃からの「理系脳」だから常識に左右されず、モンストを作ることが出来たと成功の要因を語る。SNSの代表格だったミクシィが業種、業態を変えて生き残ったのは、木村さんが科学の実験のように原理原則を捉えて、試行錯誤を続けたからだろう。

 この種の本にありがちな自慢話や精神論はまったくない。冷静に語ったビジネス戦略は、多くの人の参考になるだろう。  

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