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突然「がん、ステージ4」と宣告されたら・・・

がんと向き合い生きていく

 全国紙に横五段抜きの大きな広告が出ていた。出版元も「売れる」と踏んでいるからだろう。『がんと向き合い生きていく』(セブン&アイ出版)。

 著者の佐々木常雄さんは腫瘍内科医で東京都立駒込病院名誉院長。がんの専門家だ。「2万人の患者さんと一緒に悩んだ」「がんと診断されても、あきらめないでください」と、帯にうたわれている。

日本人の半数が患者に

 最近、有名人のがん報道が多いような気がする。堀ちえみさんのようにまだまだ若い人も少なくない。本書によれば、日本人の2人に1人はがんになる。年間約100万人。相変わらず少しずつ増えている。死亡原因のトップでもある。

 ただし、75歳未満では、がんの死者は減っている。治療法が急速に進歩しているからだ。がん患者が増えている理由としては、高齢化で75歳以上の人口が膨らんでいることもある。

 本書は「日刊ゲンダイ」に著者が連載してきた記事をもとに加筆したり、書き下ろしたりしたものを含めてまとめたものだ。それだけに読みやすい。

 著者が医師になって49年、抗がん剤治療に関わった患者は約2万人、実際に自分で最期を看取った患者は約2000人。そうした豊富な専門医としての経験をもとに、かなり具体的に様々な事例について書いている。もちろん、登場人物や病院などの固有名詞や、個人的なエピソードは修正されているが、それぞれの話が、最新の医療事情とも関連して語られているので、がん患者や家族、がん年齢に近づいている人にとっては非常に参考になる。

「ステージ4」と言われたらどうするか

 全体は第1章「今、『がん』と診断されて......」、第2章「みんな、もっともっと生きたい」、第3章「治療、緩和ケア......患者さんが戸惑っていること」、第4章「最後まで希望を持って生きる」、第5章「がんと闘うために知っておいてほしいこと」、第6章「がん治療の今」、終章「『死の恐怖を乗り越える術』への模索」に分かれている。

 第1章では、がん宣告を受けたときの対処法が出てくる。「転移しているので、手術できません」「今後の治療法はA案とB案しかない。自分で選択してください」。いきなり医師に、こんなふうに言われたら動転してしまう人がほとんどだろう。さらに看護師から「ベッドが混んでいるので、早く決めてください」と追い打ちをかけられる。

 著者のアドバイスは、「もう一度、時間を取ってもらって、家族や友人と一緒に説明を受けましょう。聞きたいことは、事前にメモしておきましょう」。

 がんに4段階あることはよく知られている。「ステージ4」と言われたらどうするか。本書は「『ステージ4』で転移があっても、長く生きられる患者はたくさんいます」。具体例でジャーナリスト鳥越俊太郎さんのことが出て来る。「大腸がんステージ4」を克服後に、都知事選に出馬した。

遠慮なく担当医に聞く

 それでは「ステージ1」の場合はどうか。全国がんセンターが2018年に公表した部位別の5年相対生存率は、「1期(早期がん)」の場合、胃がんでは97.4%、結腸がんで98.5%、直腸がんで96.5%だという。ほとんど助かるといえる。

 治療で心配なことは、遠慮なく担当医に聞くことをすすめている。

「この病院では、私のがんのステージでは5年生存率は何%ですか」
「ここ5年間で、手術で重篤な状態になった方は何%ですか? 亡くなった方はいらっしゃるのでしょうか?」

 最近は「クリニカルインディケーター」(臨床指標)と言って、その病院の最近の治療成績をホームページで公表している病院もあるそうだ。

「『がん=死』ではありません。たくさんの方が、がんを克服しています」
「セカンドオピニオンは患者さんの権利。遠慮はいりません」

 よく言われていることだが、本書のように、超有名な専門医の言葉だと励まされる。とにかく非常に多くの実例や質問をもとに、がんになった時のことが分かりやすく説明されている。がんに関する本は多いが、本書は業界最高権威の本なので、信頼感、安心感がある。自分はまだ、がん年齢ではなくても、急に身内の誰かが罹患するかもしれない。早めに読んでおくと良い本だと思う。

 関連で本欄では『病気自慢 からだの履歴書』(世界文化社)、『身近な野菜の奇妙な話』(SBクリエイティブ)、『不死身のひと』(講談社)なども紹介している。

  • 書名 がんと向き合い生きていく
  • 監修・編集・著者名佐々木常雄 著
  • 出版社名セブン&アイ出版
  • 出版年月日2019年2月22日
  • 定価本体1600円+税
  • 判型・ページ数四六判・308ページ
  • ISBN9784860087999

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