読むべき本、見逃していない?

習近平の清華大が世界1位、東大は91位...何のランキング?

  • 書名 平成はなぜ失敗したのか
  • サブタイトル「失われた30年」の分析
  • 監修・編集・著者名野口悠紀雄 著
  • 出版社名幻冬舎
  • 出版年月日2019年2月 7日
  • 定価本体1500円+税
  • 判型・ページ数四六判・295ページ
  • ISBN9784344034259

 ひところ、「失われた10年」とか「20年」が話題になった。本書『平成はなぜ失敗したのか』(幻冬舎)はさらに手厳しい。「失われた30年」と副題に記している。つまり平成の時代は、ずっと「失われていた」というのだ。

 何が失われたかといえば、日本経済の国際的な地位だ。「世界経済の大きな変化に日本経済が取り残された」。つまり平成とは日本が、経済的に立ち遅れた時代だったと本書は総括する。

変化に気づかず

 著者の野口悠紀雄さんは1940年生まれ。東大工学部を出て大蔵省の官僚になり、その後、早期に学究に転じて一橋大や東大、早稲田大の教授を務めた。現在は早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問。多数の経済関連書を著しているエコノミストとして著名であり、『「超」整理法』の大ベストセラーでも知られる。

 野口さんは平成の時代に、人生の50代から70代を過ごした。したがって、社会の動向に影響を及ぼすことができる世代だった。そこで自分たちの世代は「前の世代が残してくれた遺産を引き継いで、それを発展させることができただろうか?」と自問する。答えはNOだ。「残念ながら、それに失敗したといわざるをえません」。

 その失敗の内実は、かなり悲惨なものだった。「努力したけど取り残された」ではなく「大きな変化が起きていることに気づかなかったために取り残された」と見る。

 というわけで本書は「なぜ失敗したのか」という報告書であり、反省の書だという。とにかく、失敗の原因を明らかにしない限り、立ち直ることもできないと、平成経済の問題点を振り返る。

月尾嘉男さんも指摘

 野口さんのような分析は最近、あちこちで見かける。BOOKウォッチで取り上げた『清々しき人々』(遊行社)では、総務省総務審議官や東大教授を務めた月尾嘉男さんが語っていた。

 「世界の上場企業の時価評価総額の上位二〇社のうち一五社が日本企業であった一九八〇年代の栄光の時代と比較すると、現在は跡形もなく、五〇位以内に一社しか登場しません。八〇年代から九〇年代には、スイスのシンクタンクの発表する国際競争力で毎年一位であった日本は最近では二五位前後を低迷しています」

 これとまったく同じ指摘は、2019年1月30日の朝日新聞「オピニオン面」で経済同友会代表幹事、小林喜光さんがロングインタビューで語っていた。

 小林さんによると、30年前、世界の企業の株価時価総額トップ10のうち8割を日本企業が占めていたが、現在はトヨタ自動車が40数位に顔を出す程度。米国のグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンという「GAFA」と、アリババ、テンセントなど米中のネット企業が上位を占めている。テクノロジーの世界はさらに悲惨で、半導体、光ディスクなど日本が手がけて高いシェアを誇ったものがいつの間にか中国や台湾、韓国などに席巻されており、「もはや日本を引っ張る技術がない状態」と嘆いていた。

「アベノミクス」には辛口

 野口さんは平成の時代を大きく9章に区分けし、敗因分析と、将来に向かってなすべきことを論じている。8章では「アベノミクス」について分析しているが、「アベノミクスは、経済成長を実現できなかった」「賃金は上昇せず、消費は増えず」「金利が上昇すると財政が破たんする」など辛口だ。

 各章でときおり顔を出すのが中国だ。様々なデータが紹介されている。すでにGDPは日本の2.7倍。2040年には10倍になるという。そのころ1人当たりのGDPは日本とほぼ同じになる。とてつもない強国の出現だ。

 全米科学財団が発表した16年の論文数世界ランキングでは中国がトップ。世界の大学ランキングでも200位までに日本は2大学だが、中国は7大学。世界のコンピューターサイエンス大学院のランキングでは1位が中国の最高指導者、習近平が卒業した清華大学で、東大は91位に過ぎない。今の季節、日本では高校別の東大合格者数が話題になるが、少なくともコンピューターサイエンスを専攻するなら、入学しても世界レベルとは差があるようだ。

 日本の劣化は、米国の上位大学への留学者数の減少ぶりに顕著だという。スタンフォード大大学院への留学者数は、80年代は日本、中国、韓国が100~150人で拮抗していた。それが2003年には中国が400人超、韓国は300人超に増えたのに日本は100人を割った。その数年後、中国や韓国勢はさらに増えたが、日本人の人数がはっきりしなくなった。なぜか。統計上、日本はなんと「その他」に分類され、正確な人数がわからなくなってしまったからだという。

「ユニコーン企業」も米中がリード

 このところ米中摩擦が激しくなり、中国の経済成長は鈍り気味。今後の推移は見通せないが、摩擦の原因は、単に貿易をめぐる関税などの問題だけではない。背後には米国の「GAFA」と、中国のIT業界を支配する「BAT」(バイドゥ、アリババ、テンセントの頭文字)とのガチンコ対立があるといわれている。どちらが世界の覇権を握るか。その激烈な戦いから日本は完全にカヤの外にあるのが現状だ。

 最終章で野口さんは、日本が立ち直るには「新しい産業の登場が鍵」と指摘する。それはアベノミクスでもうたわれていることだが、一向に萌芽が見えない。様々な構造改革が遅れ、産業界の政府依存体質が抜けないことを野口さんは嘆く。

 新たな事業を開拓し、成果を上げている企業のことを「ユニコーン企業」という。フォーチューン誌によると、アメリカ100社、中国36社、インド7社、イギリス7社、ドイツ5社などがリストアップされている。そのリストに日本企業の名前は見当たらない。この先、日本はどうなっていくのか。本書を読んで暗澹たる気持ちが深まるばかりだ。

 関連で本欄では『習近平と米中衝突』(NHK出版新書)、『習近平のデジタル文化大革命』(講談社+α文庫)、『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』(東洋経済新報社)、『日銀バブルが日本を蝕む』(文春新書)、『知立国家 イスラエル』(文春新書)なども紹介している。

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