読むべき本、見逃していない?

縄文時代の始まりは1万年前? それとも1万6000年前?

  • 書名 ここが変わる! 日本の考古学
  • サブタイトル先史・古代史研究の最前線
  • 監修・編集・著者名藤尾 慎一郎、松木 武彦 編
  • 出版社名吉川弘文館
  • 出版年月日2019年2月18日
  • 定価本体2000円+税
  • 判型・ページ数A5判・193ページ
  • ISBN9784642083423

 日本人はどこから来たのか。いつごろからこの列島に住み始めたのか。どんな暮らしをしていたのか。本書『ここが変わる! 日本の考古学』(吉川弘文館)は専門の研究者たちが最新の研究成果をもとに、そうした疑問に答えている。遺跡と言えば、大森貝塚や登呂遺跡ぐらいしか頭に思い浮かばない旧世代にとっては、目からウロコの話だらけで大いに参考になる。

約3万7000年前から住み始めた

 まずどこからきたのか。これは「ホモ・サピエンスの拡散」という項目に書かれている。約20万年前にアフリカで誕生したホモ・サピエンスが約6万年前に西アジアに向かい、4万年前ごろに東アジアへ。そして約3万7000年前に日本列島に到達したとみられている。このころから日本列島に確実な人類活動を示す遺跡が急増するからだ。

 本書では、日本列島に人が住み始めたのは、ホモ・サピエンスの拡散活動の一部、というグローバルな人類学的な見方が示されている。このあたりは『世界史を「移民」で読み解く』(NHK出版新書)などの内容と重なる。

 「最初の日本列島人」の有力候補は「古琉球人の旧石器時代人」らしい。那覇市山下町の洞穴から見つかった6歳ぐらいの子どもの大腿骨と脛骨片が注目されている。周辺から出土した炭化物の炭素14年代測定によって約3万7000年前のものだと推定されている。形態的にもホモ・サピエンスなのだという。ほかにも石垣島では旧石器時代の人骨多数が回収されているそうだ。DNA分析によると、現在の東南アジアの人たちに近いことがわかった。

 九州・四国・本州で最も古い人骨は、静岡県で発掘された約1万8000年前の脛骨一点のみだ。これから新たに見つかる可能性もあるが、現在のところ「原日本列島人」は琉球グループがリードしているようだ。

歴博展示もリニューアル

 縄文時代の始まりについても研究が進んでいる。本書29ページに「土器の出現」についての興味深い表が掲載されていた。1960年代までは、約1万年前とされていた。その後、90年代後半までは約1万2000年前まで遡るのが通説に。さらに90年代の終わりごろからは、約1万6000年前と言われるようになった。放射性炭素年代測定が進んだことが大きい。つまり土器の使用開始時期が急ピッチで古くなっている。

 旧石器時代と縄文時代との違いはどこにあるのか。新しい道具類の登場がポイントになるそうだ。なかでも日本考古学では「土器の出現」を重要視している。ゆえに研究が進んで年代が遡れば遡るほど、縄文時代のスタートも古くなっている。

 本書はさらに弥生時代、古墳時代、古代とさらに時代をたどっていく。それぞれ「これまでの常識」に「最新の研究成果」が上書きされている。

 本書は国立歴史民俗博物館(以下、歴博:千葉県佐倉市)の研究者13人が分担執筆している。今の小中学校の教科書には載っていないことや異なる意見も掲載されている。教科書には学界の多くの研究者が同意している見解しか載らないからだ。しかし未来の教科書には載るかもしれない。あるいは結果的に載らなくてもそれが間違いではなく、今の歴博の研究者が考えている見解だと書いている。

 歴博は2019年3月19日、総合展示第1展示室「先史・古代」をリニューアルした。 1983年の開館以来はじめての大幅な展示替えだという。本書はそれに連動して刊行された。親子で訪れて見学すると、いちだんと理解が深まるかもしれない。

 本欄では、『我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち』(講談社)、『考古学のための法律』(日本評論社)、『文化財分析』(共立出版)、『天皇陵古墳を歩く』(朝日選書)、『古代韓半島と倭国』 (中公叢書)なども紹介している。

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