読むべき本、見逃していない?

山歩きで「下り」がキツイのはなぜ?

  • 書名 階段を「下りる」人はなぜ寝たきりにならないのか?
  • 監修・編集・著者名白澤卓二 著
  • 出版社名小学館集英社プロダクション
  • 定価本体1200円+税
  • 判型・ページ数A5判・112ページ
  • ISBN9784796877756

 わかりやすい健康本だ。『階段を「下りる」人はなぜ寝たきりにならないのか?』(小学館集英社プロダクション)。 老人になると、寝たきりになりやすい。そうなる前に筋肉を鍛えよう。それもごく簡単な日々の動作で。著者のお茶の水健康長寿クリニック院長・白澤卓二さんが推奨するのは「階段を下りる」ことだ。

高齢者は転倒しやすい

 最初にデータが示されている。東京消防庁の調べによると、2017年に救急車で搬送された高齢者は7万6889人。このうち約8割は転倒が原因だった。仮にそのまま1週間入院して寝たきりでいると、筋力は約2割落ちる。5週間だと96%も落ちてしまう。つまりそのまま完全に寝たきりになる。

 したがって、寝たきりにならないためには、転ばないことが大事だということがわかる。では、転ばないようにするにはどうすればいいか。

 転ぶということは、足の踏ん張る力が弱るということ。つまり足の筋力が弱るということ。したがって筋力をつける必要がある。とはいえ、70すぎてジムに行くのも面倒だ。どうすればいいか。

 白澤さんは、ここで「筋肉」について解説する。筋肉は、実は「速筋」と「遅筋」に分かれるそうだ。それぞれ性質が異なる。「速筋」は瞬発力、「遅筋」は長時間の持続的な運動を担当している。足の筋肉の中には両方が混在しており、一般に短距離選手は速筋、長距離選手は遅筋が発達している。速筋は遅筋に比べ、2倍のスピード、1.4倍のパワーを発揮できる。

速筋を鍛える

 ここまでの説明で、カンのいい人はもうお分かりだろう。転びそうになってぐっと足を踏ん張ったときに使われるのは速筋だということが。逆に言えば、速筋を鍛えれば、転びにくくなるだろうということも。

 ところがひとつ、問題が潜んでいる。遅筋は、加齢の影響が少ない。年をとってもスタスタ歩ける人は多い。ところが速筋は加齢とともに減少していくのだ。放っておくと、どんどん弱っていく。

 ここからいよいよ本題に入る。速筋を鍛えるにはどうすればいいか。速筋は、基本的に体にブレーキをかけるような動作によって育まれることがわかっている。それが、日常の動作で最も顕著に表れるのが「階段を下りる」ときなのだ。山歩きでは、上りよりも下りのほうが「足に来る」といわれる。それは、速筋がフルに働いたから。つまり日常生活で「下り」の動作を意識的に取り入れると、速筋が維持され、ひいては転びにくくなるというわけだ。

 以上のように本書は、科学的に「階段を下りる」ということが、いかに足の筋力維持に役立つか、わかりやすく説明してくれている。

 一般に健康本の指南は、実際にやろうとすると面倒なケースが少なくないが、「階段を下りる」くらいなら、実に簡単だ。明日から早速トライしてみようという気になった。

箱根の山下りも参考に

 ところで、本書を読みながら、マラソンの瀬古利彦さんのことを思い出した。瀬古さんといえば、アフリカ選手にピッタリついて、競技場まで並走、最後の直線コースでするすると抜け出して優勝、というパターンが多かった。おそらく長距離走に耐える遅筋だけでなく、速筋も発達していたのだろう。

 また、箱根駅伝の「山下り」のことも思い浮かべた。あれだけ下りを走り続けるということは、かなり速筋を使うに違いない。平地の長距離走のタイムが良くても、速筋が弱いと足が参ってしまう。逆にタイムはイマイチでも速筋が強い選手を走らせると、有利なのではないかと想像した。

 よく大企業の社長さんなどで、健康のため上りのエレベーターを使わない人がいる。秘書も付いていくから大変だ。本書を参考に、歩いて階段を上るのは止めて、下るほうが効果的ということを教えるといいかもしれない。

 関連で本欄では『長生きしたければ股関節を鍛えなさい』(幻冬舎)、『健康長寿は靴で決まる』(文藝春秋)、『定年筋トレ』(ワニブックス)なども紹介している。

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