読むべき本、見逃していない?

全国の神様が悲しんでいるに違いない

  • 書名 ニュースが報じない神社の闇
  • サブタイトル神社本庁・神社をめぐる政治と権力、そして金
  • 監修・編集・著者名「リテラ」神社問題取材班 著
  • 出版社名花伝社
  • 出版年月日2019年4月 3日
  • 定価本体1500円+税
  • 判型・ページ数四六判・172ページ
  • ISBN9784763408747

 靖国神社や神社本庁について近年、ちょっと心配なニュースが続いている。ゴタゴタが多すぎるという感じ。本書『ニュースが報じない神社の闇――神社本庁・神社をめぐる政治と権力、そして金』(花伝社)はそれらを「リテラ神社問題取材班」が改めてまとめたものだ。

 「リテラ」は2014年にオープンしたニュースサイト。安倍政権や保守勢力に対する手厳しいサイトとして知られている。

殺人事件も起きた

 すぐに思い出すゴタゴタだけでもいくつかある。本書から簡単にフォローすると――。

 2017年には神社本庁の不動産取引に関する疑惑が明るみに出た。所有物件を関係者に安値で売って、それが転売されたのではないかというのだ。この取引については同年6月にウェブサイト「ダイヤモンド・オンライン」が最初に報じたという。その後、この問題がらみで神社本庁の中枢部にいた幹部職員が訴訟や告発、会見をするなど、本庁内部でも疑問と不満が鬱積していることがわかった。

 同年12月7日には東京の富岡八幡宮で、女性宮司が弟の元宮司に日本刀で惨殺されるという衝撃的な事件が起きた。初詣には30万人が訪れるという由緒ある神社だ。しかも、この女性宮司の就任については長年、富岡八幡宮と神社本庁の間でトラブルになっていたという。本書によれば、姉を殺した後に自殺した弟の元宮司は、保守団体「日本会議」の有力メンバーとして江東支部長をしていたこともある。

 そして極めつけは2018年の靖国神社宮司発言。「はっきり言えば、今上陛下は靖国神社を潰そうとしてるんだよ、わかるか!」。6月に社務所会議室で行われた第一回教学研究委員会で語っていた。「今の皇太子さんが新帝に就かれて参拝されるか? 新しく皇后になる彼女(皇太子妃雅子さま)は神社神道大嫌いだよ。来るか?」とも語っていたという。これは「週刊ポスト」10月12・19日号が報じた。録音テープも公開され、宮司は辞任した。

 このほか、奈良県の由緒ある神社では宮司がネットでヘイトスピーチ、それがサンデー毎日やJ-CASTニュースで取り上げられたこともあった。

「当神社職員の関与については判りかねます」

 本書で初めて知った事例もある。「靖国神社職員有志の主張」というサイトがあって、そこで以下のような主張が繰り返されているというのだ。

「正義の戦いである大東亜戦争について、日本国家には一切謝罪も反省も必要ないと考えています」
「『先の大戦は間違っていた』などという思想は、仮にそれが陛下のご意向だとしても、従うつもりはありません」

 語っているのは本当に「靖国職員有志」なのか。「リテラ」ではこの靖国有志サイトについて18年10月、靖国神社に質問状を出している。

 回答は、「当神社職員の関与については判りかねます」。さらに「靖国神社職員有志を名乗りウェブサイトを通じて世に訴えかけるという手段につきましては、多くの人の誤解を招く恐れがあり、誠に遺憾に存じます」「掲載されている内容は当神社の見解ではございません」などと補足されていた。「リテラ」では、同サイト運営者に対する抗議の有無とその予定についても尋ねていたが、それには回答がなかった。

 神社本庁の不動産疑惑などに関連して、実務上の責任者である総長が辞任する意向だという報道もあった。こちらは18年9月17日の朝日新聞。実際のところ、総長は直前の役員会で辞意を表明したが、報道後に撤回したらしい。しかしその姿勢については、神社界の最高権威である鷹司尚武統理が苦言を呈しているということが、そのあと「神社新報」で報じられた。さらに「週刊文春」の18年12月20日号が、「音声入手『本庁は歪んでいる』神社本庁トップ 天皇の甥が怒った」と追い打ちをかけた。

類書が同じ問題を指摘している

 本書を読む前は、「リテラ」なりのドライブがかかっている内容ではないかと想像していた。ところが、以上からもわかるように、リテラ独自取材もあるが、あちこちのメディアですでに再三取り上げられていることを改めて確認する結果となった。

 実際、類書もこのところ目に付く。『神社崩壊』(新潮新書、18年8月刊)は宗教学者の島田裕巳さんによるもの。「神社本庁の正体と続発する離脱騒動、その政治化や『日本会議』との関係など、御簾の裏に隠された〝暗部〟を、宗教学者が炙り出す」とうたっている。

 『徹底検証 神社本庁』(ちくま新書、18年10月刊)の著者は朝日新聞の藤生明記者。こちらも「富岡八幡宮惨殺事件、『不正取引』疑惑、有名神社離脱など、神社本庁をめぐるトラブルの背景には何があるのか?改憲運動を進める神政連、日本会議との関係とは?神社本庁の起源から現在まで、徹底した取材により、その深層に迫る!」と基調は同じだ。

 『神社本庁とは何か-「安倍政権の黒幕」と呼ばれて』(ケイアンドケイプレス刊、18年12月刊)は季刊『宗教問題』編集長の小川寛大さんの著。「参拝者の幸せよりも政治的活動にご熱心。それは、多様な内紛の原因ともなっている」とシビアだ。

 それぞれの本が同じような問題点を指摘している。「リテラ」の本書が何か突出したものではないことが、かえって怖いぐらいだ。全国に8万もあるという神社。神様たちの心中も穏やかではないだろう。悲しんでいるに違いない。本書では神社本庁に批判的な現役宮司の声も紹介されている。

 本欄では関連で『靖国神社が消える日』(小学館)、『天皇陛下の味方です』(バジリコ)、『「右翼」の戦後史』(講談社現代新書)なども紹介している。

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