読むべき本、見逃していない?

外国人比率が日本一になった北海道の村

  • 書名 領土消失
  • サブタイトル規制なき外国人の土地買収
  • 監修・編集・著者名宮本雅史、平野秀樹 著
  • 出版社名株式会社KADOKAWA
  • 出版年月日2018年12月 8日
  • 定価本体840円+税
  • 判型・ページ数新書判・256ページ
  • ISBN9784040822624
BOOKウォッチ編集部コメント

 北海道などで日本の土地が中国資本に買い占められているという話を以前から耳にする。本書『領土消失――規制なき外国人の土地買収『 (角川新書)はこの問題を長年追いかけている宮本雅史さんと、平野秀樹さんの共著だ。全国あちこちの最新の話が出ている。二人は事態の推移に危機感を持っているが、規制は進んでいないようだ。

買収目的は「不明」「未定」

 宮本さんは1953年生まれ。産経新聞記者として93年にはゼネコン汚職事件のスクープで新聞協会賞を受賞している。本書刊行時は編集委員。2017年に『爆買いされる日本の領土』(角川新書)を出版している。平野さんは1954年生まれ。農水省の中部森林管理局長、東京財団上席研究委員を経て国土資源総研所長、青森大学教授。『森林理想郷を求めて』(中公新書)『森の巨人たち・巨木100選』(講談社)などの専門書のほか、『日本、買います―消えていく日本の国土』(新潮社)など、本書と類似タイトルの本も出している。

 どのくらいの土地が買われているのか。本書によると、北海道では平成29年に外国資本に39件52ヘクタールが買収され、うち17件が中国企業によるものだという。買収目的は「不明」「未定」が多い。海外からの買収は、北海道では道庁が統計を取り始めた平成18年から同29年までに累計2495ヘクタール、東京ドーム531個分になるという。中国資本の買収方法を見ると、リゾート地のニセコとその周辺から放射状に広がっている。買収の規模がだんだん大きくなり、「全道を視野に入れて買い進んでいるように感じられる」と宮本さん。

 トレーラーや大型車などは入ってこられないような不便で利用価値が乏しそうな土地がなぜ買われるのか。宮本さんは現地を訪ねて、地元の人に話を聞く。「いい値段で売れた」と顔をほころばせる農民たちも首をひねる。デリケートなテーマということで取材協力者は匿名で登場する。

 北海道で買われているのは過疎地だけではない。占冠村の有名な星野リゾートトマムは2015年に中国の商業施設運営会社に買収されている。18年の同村の外国人人口比率は22.69%。大阪の生野区をわずかに上回り、全国トップになっている。

 気になったのでネットでもう少し詳しく調べると、北海道のリゾート地では、観光シーズンにインターンシップなどで短期滞在する外国人従業員が増える。元々の村民が少ないこともあって、人口調査で外国人比率が跳ね上がる一因となっているようだ。

クローズアップ現代で取り上げられた

 本書は「第一部 止まらない国土の買収」を宮本さん、「第二部 領土保護、戦いの10年史」を平野さんが執筆している。

 平野さんは大学で林学を学び、長く林野庁に勤めた元役人。この問題に深入りするようになったのは2008年、東京財団内の「外国資本による土地取得研究会」にかかわってからのようだ。当時、会合に集まったメンバーの一人、元大手住宅メーカーのOBからはこう言われたという。

「日本の企業も海外で土地を買って農林業や住宅産業をやっているわけだし、これは言ってはいけないことですよ。そんな排除論なんて通用するわけないでしょう。そもそもバブルのとき、三菱地所がマンハッタンのビルを買ったのと同じです」

 というわけで、当初は議論が盛り上がらなかったが、2010年になってNHKがクローズアップ現代で「日本の森林が買われていく」を放映、社会的に認知されるようになった。この番組には同財団プロジェクトチームが協力していたという。

 だが、その後の展開は足踏みしているようだ。平野さんによると、「昨今、外資による国土買収を取り上げる報道はほぼなくなっている。産経以外の四大紙面(朝日、毎日、読売、日経)では扱わない」状態なのだという。日本維新の会や自民党で規制強化の法案作りなどの動きがあったが、進まなかった。世界の国々は、国境沿いや安全保障上の要衝は購入できないなど、外国資本の土地買収に一定の規制を設けているにもかかわらず、日本は「オールフリー」状態が続いている、と歯ぎしりする。

「この10年(2008年から18年)に及ぶ本テーマの世論戦を振り返り、自分なりに総括してみたとき、完敗であったと思う」

 平野さんはそう悔しがるが、これからも「愚直にこの仕事を続けたい」と記している。

 どうして著者たちの「領土」への思いが政権党などを動かせないのか。本書でも書かれているが、過疎地の所有者(社)にとっては、売れないと思っていた土地に思いがけず買い手が付くという一面がある。そもそも買う側は何を狙っているのか。中国資本や駐日中国大使館の本音を知りたかったが、ざっと読んだ限りでは印象に残らなかった。

 一方、都心に目をやると、林立するタワーマンションは、中国人富裕層の需要に支えられているらしい。そのことが最近メディアでしばしば報じられている。不動産業界としては、規制には及び腰になるだろう。しかも国は外国人観光客の呼び込みや外国人労働者枠の拡大に力を入れている。規制が進まない背景にはそうした複雑な事情もあるのではないかと感じた。

 本欄では関連して『中国人のこころ』(集英社新書)、『未来の中国年表』(講談社現代新書)、『マンションは日本人を幸せにするか』(集英社新書)なども紹介している。

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