読むべき本、見逃していない?

この中からゴッホやムンクが生まれるかも

  • 書名 日本財団 DIVERSITY IN THE ARTS 公募展 2018 図録
  • 監修・編集・著者名日本財団 DIVERSITY IN THE ARTS
  • 出版社名日本財団 DIVERSITY IN THE ARTS 発行
  • 出版年月日2019年5月 1日
  • 判型・ページ数A4変形判・108ページ
  • 備考図録の入手については、「日本財団 DIVERSITY IN THE ARTS」まで問い合わせ。

 特殊な展覧会だ。しかし、よほど注意しない限り、普通の現代アート展だと思うだろう。2019年5月26日まで東京・渋谷の東急文化村(Bunkamura Gallery/Wall Gallery)で開かれている「日本財団DIVERSITY IN THE ARTS 公募展 2018」。絵画やイラスト、グラフィックデザイン、書、写真、立体などの作品85点が並んでいる。

 実はこの展覧会、障害がある人たちが制作したアート作品展なのだ。応募2256点の中から、プロの審査員が選んだ優秀作品が展示されている。作品の質からは「障害」というハンディを全く感じさせない。

並々ならぬ力量

 本書『日本財団DIVERSITY IN THE ARTS 公募展 2018 図録』(日本財団)はその図録。大判100ページ余りにわたって多彩な作品が所狭しとひしめいている。

 トップに登場するのは内海雅充さんの「野良の生き様」。画用紙に水性や油性ペン、色鉛筆で猛々しい野生の犬が克明に描かれている。今にもかみつかれそうだ。内海さんのもう一つの作品、「満足な御婆」も迫力十分。奇想画家アルチンボルドの怖い絵のようで、思わずギョッとさせられる。審査員の秋元雄史・東京藝術大学大学美術館館長は「細部の書き込みは、この作家の並々ならぬ力量を伝えています」と絶賛している。

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「野良の生き様」内海雅充さん 作

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「満足な御婆」内海雅充さん 作

 本展は秋元さんら8人の審査員が作品を選んでいる。その評がなかなか興味深い。アートジャーナリストで、ロンドンに拠点を置くアウトサイダー・アートマガジン「RAW VISION」の編集長、エドワード M. ゴメズさんは、7歳の永岡直朗さんの「まる」を入選作の一つに選んだ。

「大判の紙からはみ出んばかりの大きく大胆な形が見る者を圧倒します。小さな少年が一体どうやって大きな筆を操ってこの力強い線を描いたというのでしょうか」
 「年若い永岡さんは知る由もないことですが、彼の描いた円は近現代美術の多数の有名作品と興味深い美術史上の類似点があります。例えば・・・吉原治良(1905~1972)による円を描いた大型絵画を思い起こさせます」

 このほかにもゴメズさんは、他の入選作品から、パウル・クレー、ジャン・コクトー、リチャード・セラなどを想起したことを記している。

あの草間彌生さんも・・・

 本展は過去7年間続いてきた「ビッグ・アイアートプロジェクト作品募集事業」を継承し、新たな視点から日本財団の事業としてスタートしたものだ。近年、ダイバーシティ理念の広がりを受けて、世界各地でこうした展覧会が増えているようだ。今回は海外からも15か国422作品の応募があったという。

 美術史を振り返ると、ロートレックは足の発達が不十分だった。ゴッホやムンクは精神病院の入院歴があった。日本の画家では山下清が知的障害の後遺症を抱えていた。今や日本人では世界で最も有名な画家となった草間彌生さんは長年、幻覚や幻聴に苦しんできたことで知られる。NHKの番組で、精神病院に暮らす様子が放映されたこともある。

 本展のカタログを見た限りでは、出品者がどのような障害を持っているのかはわからない。巻末には入選者の顔写真も多数掲載されている。

 そういえば思い出したことがある。もうずいぶん昔の話だが、「芸術療法(アートセラピー)」をやっている精神病院の入所者たちの展覧会を見たことがあった。手が込んでいる作品が並んでいて驚いた記憶がある。そのとき、もう一つ驚いたのは、もう亡くなった人だが、非常に有名な美術記者が見に来ていたことだった。

 今回の展覧会は、東急文化村という立派な会場で開かれている。文化村としても芸術的な開催価値あり、と判断したということだろう。現役の美術記者にはぜひ見てもらいたいと思った。このあと、5月29日から6月4日まで、横浜の「障害者スポーツ文化センター横浜ラポール」でも開かれる。

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