読むべき本、見逃していない?

安倍政権のキーワードは「依怙贔屓」

  • 書名 悪だくみ
  • サブタイトル「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞
  • 監修・編集・著者名森功 著
  • 出版社名文藝春秋
  • 出版年月日2019年6月 6日
  • 定価本体750円+税
  • 判型・ページ数文庫判・303ページ
  • ISBN9784167913045

 最近マスコミ関係者が読んでおかなければならない本が増えているような気がする。本書『悪だくみ――「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』 (文春文庫)もその一冊と言える。ノンフィクション作家の森功さんが、森友、加計学園問題、なかんずく加計と安倍首相のただならぬ長年の関係を掘り下げ、2018年の大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞(大宅賞)を受賞した作品だ。さらに加筆して早くも文庫化されたのが本書である。

「親密すぎる関係」に迫る

 令和の華やかな行事やトランプ大統領の訪日、目の前の参議院選と解散風――いまや安倍首相は、2017年に日本を揺るがし、自らも激しい批判に晒された森友、加計問題などすっかり忘れたかに見えるが、本書は改めて事案の異様さを浮かび上がらせる。

 とくに本書が注視するのが、安倍首相と「加計」の加計孝太郎理事長との親密すぎる関係だ。二人は40年以上前のアメリカ留学時からの付き合いである。加計の獣医学部新設はまるで加計学園のためだけに規制緩和のレールが敷かれ、それに乗ってことが進んできたかのようだ、と「密着ぶり」を指摘する。世間に明るみに出た順番から、「加計」は「第二の森友」などと言われるが、話は逆で「森友」こそが「第二の加計」だと見る。

 発覚後の安倍首相の対応も違った。「安倍は加計孝太郎を決して批判することはない。加計は大切な友人である」。これに対して「森友」の籠池泰典理事長はあっさり切り捨てられた。安倍首相は当初、国会答弁で(森友については)「妻から『教育に対する熱意がすばらしい』と聞いている」と語っていたが、その後、「教育者の姿勢としてはいかがなものか」と突き放す。籠池理事長夫妻は逮捕され、長期の勾留を強いられることになった。

 森友と加計を一連の出来事としてひとくくりにされることが多いが、著者はその違いにこだわり、安倍首相と「加計」との特別の関係にメスを入れていく。

妻がばらした?「男たちの悪巧み」

 一般にテレビや新聞のニュースは、「事件化」されない場合は慎重な報道に徹することが多い。したがって、刑事事件になっていない「加計」については、何となく奥歯にものがはさまった感じが続いている。しかし、「週刊新潮」の編集部にもいて、雑誌媒体を軸に活躍している森さんは、テレビや新聞が躊躇しているその先に踏み込む。

 「第二章 悪友サークル」「第三章 加計の野望」「第四章 海外戦略の手助け」「第五章 政治とビジネス『商魂』」「第六章 国家戦略特区というレール」と順々に安倍・加計の癒着ぶりをあぶり出していく。つまり「安倍晋三」という人の半生と、今日の諸問題がどう関わっているのか、ライフ・ヒストリーをたどりながら解き明かす。まさしくノンフィクションの手法だ。

 安倍首相が気心を許すのは「加計」だけではない。何人かの「お友達」とは長年の付き合いがあり、双方の夫人も交えたサークルが形成されている。都心の会員制クラブで内々のクリスマスイブの会などが開かれ、そこに招かれる面々はそうした「お友達」や関係者たちだ。

 安倍夫人がそんなパーティの写真を軽い気持ちで、ついフェイスブックで公開してしまった。その時のタイトルが「男たちの悪巧み」。本書のタイトルにもつながっている。

『金環蝕』を思い出す

 安倍首相の「お友達」路線について、本書はよりシビアに「依怙贔屓(えこひいき)」という言葉で説明する。この方が実態に即しているとして、後年、安倍首相を論じる時のキーワードになるかもしれない。

 確かに「依怙贔屓」は、様々なところで見え隠れする。一番はっきりしているのはメディア対応だろう。マスコミ関係者の間では常識だが、安倍首相が単独インタビューで登場するメディアは決まっている。東京新聞の望月衣塑子記者の『新聞記者』によれば、首相会見でよく指名されるメディアも決まっているという。望月記者は最近、官房長官会見で質問しようとしても指名されないらしい。保守政治は懐の深さが持ち味だが、安倍政権には残念ながら「お友達以外」を「仲間はずれ」にする狭量な政権というイメージが付きまとう。

 かつての佐藤栄作首相は、なかなかコワモテだったが、のちに『佐藤栄作日記』は朝日新聞社から刊行された。中曽根康弘首相は読売新聞の渡邉恒雄主筆と親しいことで有名だが、著書の出版元は、文藝春秋、新潮、講談社、PHP、角川と幅広い。退任後は「サンデー毎日」で長期にわたって対談の連載を持ち、共産党の不破哲三氏と対談したこともあった。

 安倍首相からはちょっと想像しにくい。何はともあれ首相の挙措の影響は、政治の世界だけにとどまらない。首相が「依怙贔屓」をしているように見えては、社会全般で「差別」や「いじめ」なども助長されかねないのではないかと、本書を読みながら心配になった。

 本書の「あとがき」はノンフィクション作家の石井妙子さんが担当している。『原節子の真実』(新潮社)などで知られる人だが、「本書を読み私は、現役総理がかかわったとされるダム建設を巡る汚職事件をリアルタイムで描いた石川達三のモデル小説『金環蝕』を思い出した」と鋭い。

 関連して本欄では、文部科学省の事務次官だった前川喜平さんの『面従腹背』(毎日新聞出版)、森友事件の元理事長・籠池泰典さんの妻、籠池諄子さんの手記『許せないを許してみる――籠池のおかん「300日」本音獄中記』(双葉社)なども紹介している。

 

オンライン書店で詳しく見る(購入もできます)

デイリーBOOKウォッチの一覧

一覧をみる

アクセスランキング

DAILY
WEEKLY
もっと見る

当サイトご覧の皆様!

おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!

出版社の皆様!

御社の書籍も、
BOOKウォッチに
掲載してみませんか?

sub