読むべき本、見逃していない?

日本最大の「聖域」は?

  • 書名 触れてはいけない! 日本の「聖域」図鑑
  • 監修・編集・著者名別冊宝島編集部 編
  • 出版社名宝島社
  • 出版年月日2019年6月12日
  • 定価本体1200円+税
  • 判型・ページ数四六判・287ページ
  • ISBN9784800295859

 こういうタイトルの本を見つけると、つい手を伸ばしたくなる。『触れてはいけない! 日本の「聖域」図鑑』(宝島社)。帯には「山口組」「創価学会」「皇室」「公安警察」「広告代理店」「GAFA」「ジャニーズ」などの名前が並んでいる。「カネと暴力と利権の淫靡な地下水脈!」というキャッチが躍る。さらに「令和のタブー115」というワッペンが追い打ちをかける。

「ダークウェブ」が跋扈する

 世の中を裏側で操る「見えない手」があるのではないか。誰しも何となくそんなことを思ったことがあるに違いない。いや歴史そのものが、見えない手に操られているという見方もある。そうなると、一種の「陰謀論」に飛躍してしまうが、とにかく実像がイマイチ分かりにくい巨大組織・団体は少なくない。

 本書は上記のようないくつかの組織のほか、「官房機密費」「水道民営化」「LGBT」「カジノ解禁」「上級国民」などの多彩なトピックを含めて全部で115の「聖域」が登場する。「第1章 令和ニッポンの『聖域』」、「 第2章 『5大タブー』のいま」、「第3章 不滅の『巨大利権』」、「第4章 『巨大組織』の深い闇」、「第5章 言ってはいけない!」、「第6章 カネと生命の聖域」、「第7章 情報操作の大罪」に分かれている。

 1章では「ダークウェブ」が出て来る。通常のブラウザでは閲覧できず、グーグルなどの検査にも引っかからない、特殊なソフトなどでしか閲覧できないネット空間のことだ。要するに闇の取引サイト。複数の中継サーバーを経由しているのでログを残さず、発信源の特定が困難。仮装通貨の流出事件やカード情報の乗っ取りなどで注目されたが、捜査が追い付いていないらしい。いかにもネット時代らしい「聖域」だ。

本当に自殺は減っているのか

 このほか今日的な話題としては「新型出生前診断」「指導死」「抗がん剤」「ネット広告」「スマホ健康被害」「トクホ」「共謀罪」「アフターピル」「不法滞在外国人」「児童相談所」なども取り上げられている。

 変わったところでは「自殺者数」。かつては年間3万人と言われていたが、最近徐々に減り2万人に近づいている。地域自殺対策緊急強化基金として3年間100億円を投じて日本各地で自殺を防ぐ呼びかけなどが行われてきた成果と言われているが、本書では「大きなトリックがある」としている。死者数についての別なデータである警察の「死体取扱状況」によると、日本の警察が扱う死体数は年間16~17万体で推移していると指摘。このなかに変死が含まれ、さらにその一部が「自殺」だ。要するに全体数が変わらないのに、どうして自殺だけが減っているの? と疑問を投げかけている。

 本書は上述のようにありとあらゆる「聖域」が登場するが、同じようなタイトルで日本の「聖域」を扱った企画としては雑誌「選択」の「日本の聖域(サンクチュアリ)」が有名だ。こちらはすでに新潮社から単行本として刊行されている。文庫にもなってシリーズ化されている。

 本書が「図鑑」と銘打っているのは、先行書として「選択」があること、本書では一件についての解説がコンパクトになり、いわば「聖域カタログ」のようになっていることによるのだろう。

「日米地位協定」は?

 ところで本書は冒頭、「聖域」の事例として、首都圏上空に米軍管制の広大な「横田空域」があることを挙げている。大問題なのに、大手メディアが報道しないのは記者クラブ記者たちの忖度によるものとしている。そして「私たちが『何も知らないまま』なのは、大手メディアが国民に伝えるべき真実を報道しないからだ」と結論付けているが、本件については疑問を感じた。横田空域など米軍管制の空域問題については大手メディアでしばしば報じられているからだ。

 例えば毎日新聞は2019年2月18日の社説で「横田空域通過で日米合意 協定の改定をなぜ求めぬ」と主張している。「首都の空を米軍が握り、民間旅客機が自由に飛べない状態が続いているのは、異常と言わざるを得ない」という書き出しでこの問題に論及。これは「日米合同委員会」の合意に基づいているが、同委員会は「日米地位協定」に根拠規定があるので、日本政府は地位協定の改定の提起に踏み出すべきだと書いている。

 この「日米地位協定」は、米軍の犯罪などの時に時々話題になるが、日本が手を出せない最大級の聖域なので、ぜひ本書で取り上げてもらいたかった。

 本欄ではすでに『本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」』(創元社)を紹介済みだ。「日米合同委員会」についても『株式会社化する日本』(詩想社新書)で触れている。

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