読むべき本、見逃していない?

政治記者の必読書はコレだ!

  • 書名 なぜ人は騙されるのか
  • サブタイトル詭弁から詐欺までの心理学
  • 監修・編集・著者名岡本真一郎 著
  • 出版社名中央公論新社
  • 出版年月日2019年5月21日
  • 定価本体820円+税
  • 判型・ページ数新書判・228ページ
  • ISBN9784121025449

 「なぜ人は・・・」で始まるタイトルの本は多数ある。「生きるのか」「存在するのか」「笑うのか」・・・。本書『なぜ人は騙されるのか』(中公新書)は、その中ではきわめて現実的なテーマを、メンタル面から分析しているところがユニークだ。「詭弁から詐欺までの心理学」という副題が付いている。著者の岡本真一郎さんは1952年生まれ。京都大学の大学院博士課程(心理学専攻)を満期退学、現在は愛知学院大で心理学の教授をしている。『悪意の心理学』などの著書がある。

広告規制を突破

 「説得のテクニック 信じ込むプロセス」とキャッチにある。もちろん著者は騙す側ではなく、「騙されないためには、いかに注意すべきか」という観点から論考している。

「第1章 説得する――そのメカニズムを探る」「第2章 宣伝する――広告に惑わされる」「第3章 騙す――日常生活に潜む危険」「第4章 言い逃れる――詭弁を弄する政治家たち」「第5章 信じ込む――フェイクニュースが跋扈する」の5章立てになっている。

 「騙す」「騙される」ということが世間ではびこっていることもあり、扱っているネタは幅広い。心理学者の本だが、オレオレ詐欺など「特殊詐欺の落とし穴」「悪徳商法のテクニック」などについても説明している。

 こうした特定の個人をターゲットに金を巻き上げようとするインチキについては、それなりの警戒感がある人でも、自分が直接の被害者にならないケースでは案外騙されやすい。2章で書かれているように、宣伝文句に乗せられて何かを購入してしまうということは、誰しも心当たりがあるのでは。「景品表示法」や「医薬品等適正広告基準」などで様々な規制があるものの、売る側は知恵を絞って消費者の「トクするかも」という心理に付けこむ。そしてつい判断が甘くなり、引っかかる。

「安倍話法」の特徴についてたっぷり

 4章では政治的な「騙し」について説明している。こちらも今日的な話題に即しているので頭に入りやすい。「大臣、官僚の言いくるめ術」では、「働き方改革関連法案」における加藤勝信厚労相、森友問題の佐川宣寿財務省理財局長らの答弁、加計学園問題での菅義偉官房長官の「怪文書みたいな文書」発言などを取り上げている。続く「首相の言い逃れ」では、「安倍話法」の特徴についてたっぷり書かれている。

 こうした答弁の特徴として「語意のすりかえ」「質問の焦点ずらし」「答弁の改変」「応答の冗長化」「批判による対抗」「常套句の頻用」を挙げている。

 言い逃れ答弁によって、いつまでも真相が明らかにならないと、野党のふがいなさが露呈、野党への嫌気を誘う効果もある、と著者は指摘する。

 「諸政策の是非についてはいろいろな見解がありうる。ただ、事実関係についてまともな答弁をせずに、ごまかしたり言い逃れをしようとする姿勢は、話し合って物事を決めていく原則に反していることは明らかであり、政策以前の問題である。こうした現状の打開にはいろいろな面での改善があってしかるべきである」

 著者は「言い逃れ答弁への対抗策」についても言及している。本書は野党議員や、国会担当の政治記者にとっても参考になるかもしれない。

正体不明の冊子を配布

 最終の5章ではネット業界について書いている。最近のフェイクニュースや、先行研究をもとに多数の事例が出て来るので復習にはちょうどいいかもしれない。2019年4月にインターネットメディア協会がJ-CASTなど28社の参加で発足したが、ネットでとかく問題になるのは、こうした団体に所属していないメディアだ。

 つい最近も、ジャニーズ事務所のジャニー喜多川社長が「死去」したという情報を流したサイトが謝罪に追い込まれた。BuzzFeed Japan によると、100個を超えるまとめサイトなどがそうした情報を伝えていたという。一般に、外国人への排斥感情を強く持つ人は、こうしたまとめサイトを読む頻度が高いこともこれまでの調べで分かっている。つまり騙されやすい人たちというわけだ。

 そういえば先日の朝日新聞に興味深い記事が出ていた。「野党・メディアは政権の揚げ足取り」という小冊子を自民党が所属議員に配っていたという話だ(7月3日朝刊)。他メディアでも取り上げられている。同紙はこの冊子について党本部名の添付文書には「インターネットメディア『テラスプレス』から発行されました」とあったが、ニュースサイトの情報が検索できるサービスで探しても「テラスプレス」の記事は表示されないという。実態不明のニュースメディアらしい。

 言い逃れ答弁によって、「野党・メディアは政権の揚げ足取り」という空気をつくり、謎のネットメディアをもとにした小冊子で宣伝戦――本書に書いてあることから推測するに、そのようなことが現在進行形で行われているということになろう。さすがに、朝日の記事では自民党の中堅議員が「出所不明の冊子を、自民党のお墨付き冊子として配布するのは政権党としてマイナス」という主旨のコメントをしていた。

 本欄では関連で、『安倍政治 100のファクトチェック』(集英社新書)、『その情報はどこから? 』(ちくまプリマー新書)なども紹介している。

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