読むべき本、見逃していない?

脳と体を元気にする「ガソリンのような物質」がある!

  • 書名 定年不調
  • 監修・編集・著者名石蔵文信 著
  • 出版社名集英社
  • 出版年月日2019年8月 9日
  • 定価本体820円+税
  • 判型・ページ数新書判・224ページ
  • ISBN9784087210866

 本書のタイトル『定年不調』 (集英社新書)を見て、自分もそうだと身を乗り出す人は少なくないだろう。仕事中心に生きてきた50代~60代の男性にみられる心身の不調――この年齢になると、会社人間としての人生が煮詰まってくるだけではない。親の介護、妻の更年期なども重なってくる。やがて訪れる「定年後」への漠然とした不安も募る。ところが見栄や立場もあって悩みを誰かに相談することもできない。そういう人に役立ちそうな一冊だ。

妻の不調を「夫源病」と名付けた

 著者の石蔵文信さんは1955年生まれ。内科・循環器・性機能専門医で、大阪大学大学院医学系研究科保健学准教授などを経て2001年に全国でも先駆けとなる「男性更年期外来」を開設。日本自殺予防学会理事なども務める。夫の言動がストレスとなって妻の心身に生じる不調を「夫源病」と名付けたことでも知られる。『夫源病』『男もつらいよ!男性更年期』など著書多数。今回の『定年不調』も、石蔵さんの造語だという。

 女性の更年期障害は、女性ホルモンとの関係が濃厚だが、男性の場合はどうなのか。女性の閉経時のように、男性ホルモンが激減するわけではない。身体的な症状よりも、精神的な症状、すなわち「抑うつ状態」が強まることが特徴だ。

 男性ホルモンの中心となるのはテストステロン。このホルモンが「うつ」になると減少することは分かっている。では、やはり、男性ホルモンの減少がうつを招くのかと思いがちだが、著者は逆の見解を示す。ストレスから抑うつ状態になった結果、脳の視床下部の働きに乱れが生じ、男性でも更年期障害の諸症状とともに男性ホルモンの分泌量が低下するというのだ。

 こうした男性のメンタルトラブルは、女性よりも深刻と言えるかもしれない。日本では男性の自殺率は女性の2.3倍。とりわけ40~60代の男性が目立ち、全体の約34%を占めている。「定年不調」世代とも重なる。

仕事でも家庭でもストレスが増す

 ではなぜ、この年齢の男性は抑うつ状態になりやすいのか。医学的にはまだ特定されていないという。厄介なことに次々と起きる年代であることだけは間違いない。病気・老化、親や近親者の死、配置換えや定年など、仕事でも家庭でもストレスが増す。

 本書は「セロトニン」に注目している。脳内で働く神経伝達物質。年齢とともに生産量が減るといわれ、ストレスで大量消費されるという。自律神経の中枢である視床下部の情報伝達にも関与し、交感神経と副交感神経のバランスを調整する役割も果たす。著者によれば、「セロトニンは、いわば脳と体を元気にするガソリンのようなもの」であり、不足すると脳がガス欠状態になる。

 現在のところ、セロトニンを増やすような薬や、セロトニンを直接補充するような方法はないそうだが、抗うつ剤の助けを借りてセロトニンを効率よく使い、セロトニンが徐々に溜まってくるのを待つことはできるようだ。著者はそうした治療法に取り組んでいるという。

 以上のように本書は、「定年不調」の原因を医学的に掘り下げ、「セロトニン」にたどり着いて説明する。メカニズムとしてはよく理解できる。

 世の中には「定年後」の資産・生活設計などについて様々な指南書があるが、ようするに「ストレス」を減らすための環境作りと考えれば分かりやすい。

 本書は男性を対象にしているが、女性も働く時代。「定年不調」は女性にも身近になっている。また主婦の場合は、夫の不安をいかにして減らすかということにも関わってくるので、一読しておくとよいかもしれない。

 本欄では関連して『定年前後の「やってはいけない」』(青春新書)、『ビンボーでも楽しい定年後』(中央新書ラクレ)など定年関連書を多数紹介している。

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