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ミニスカで胸が開いた服を着て取材先に... セクシー女優だった元新聞記者のネタの仕入れ方

  • 書名 おじさんメモリアル
  • 監修・編集・著者名鈴木 涼美
  • 出版社名扶桑社
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世の「おじさん」と言われる人たちは読まない方がいいかもしれない。
でも読むべきだろう。一つでも「これやっちゃってるなあ」と思う行動が見つかるはずだ。

東京大学大学院修了、日本経済新聞記者という"お堅い"経歴を持ちながら、一方でセクシー女優としても活躍、キャバクラや銀座のクラブでの水商売経験を語り、注目を集めている鈴木涼美さんの新刊『おじさんメモリアル』(扶桑社刊)は、様々な男性の欲望が詰まった「おじさんエピソード集」だ。

著者・鈴木涼美さんへのインタビュー前編では、「おじさん」とは一体何者かについてフォーカスをしたが、この後編では、鈴木さんの新聞記者時代のエピソードから、若い世代の欲望が向かっていく場所についてお話をうかがった。

(取材・文/金井元貴)

■ミニスカを履いて胸の開いた服を着た女性記者はお断り!?

――日経新聞記者時代の「おじさん」エピソードも面白かったです。記者クラブで一緒だった別の会社の記者さんとのエピソードですとか、取材先から「魔女」というレッテルを貼られ出入り禁止になったりとか。

鈴木:ありがとうございます(笑)。新聞記者って、それこそ総理大臣や政治家、大企業の社長のような、普段なら絶対会えないような方々の間近にいられるので、おじさんを観察する上ではとても良い環境でした。

――銀座で働いていたこともあるそうですが、そういった方々は銀座でも顔を合わせていたんじゃないですか?

鈴木:でも、銀座に来ないタイプの方も多いですよ。有名な政治家でいうとTさんとかはものすごく真面目で、新聞記者としてでないと接することができないです。

――若い女性の記者ということで口説かれることも多そうですが。

鈴木:その部分はちゃんとわきまえている人が多かったです。口説いてもいい場所と、口説いたらいけない場所を分けているのだと思います。だから、銀座で働いているときの方が口説かれました。

―それは意外です。

鈴木:むしろ女性の記者が来ると何も話さない人もいます。もちろん、逆もいますが、仕事の場面ではしっかりしている人も多いですね。

私は結婚をしたことがないので、家庭の中の男性は父親しか知らないのですが、社会の中にいる男性と、仕事から離れたお客としての男性の双方からおじさんたちを見られたのは良かったです。

銀座では滑稽なおじさんなのに、丸の内では雄々しいという人もいれば、銀座では偉そうに振る舞っているのに職場ではずっと頭を下げているという人もいました。

――取材相手から誘われるということはなかったんですか?

鈴木:お誘いはありましたね。それこそ一時期、記者クラブを出入り禁止になりかけたりして(笑)。「火の無い所に煙は立たぬ」で、ヤッてたわけではないけど、しつこく誘ってくる人はいました。

――印象に残っている相手はいますか?

鈴木:某省の役人(笑)。若いときに地方に行ってちやほやされて勘違いしちゃうんでしょうか。「キスしたらあのネタ教えてあげたのに」と言ってきた人もいました。リスクヘッジも何もないんだなと。

――それはすごいですね。それでネタを漏らしちゃう。

鈴木:でも、本当に様々ですよ。「ミニスカートを履いている女性記者は仕事人として信用できない」という人もいますし、逆に分かりやすく足を絡めれば何でも話してくれる人もいます。女性側も、女性としてのマイナスイメージを払拭して実力でカバーしようとする人もいますし、逆に女性の武器を使える人にだけがっちり食い込む人もいます。誰が正しいというのはなくて、その人が向いている戦略を取ればいいと思います。

私は「ミニスカートを履いて胸の谷間が見える人は信用できない」という人を捨てて、自分のことを気に入ってくれる人からネタを取ってこようと思っていました。

――そこまでいくと、男性を見ただけでどんな人なのか分かるのではないですか?

鈴木:それはさすがに分からないです(笑)。気に入っている女の子がいても、ネタを話すのは信頼している男性記者だけという人もいましたからね。私には食事を誘うけれど、ネタは絶対に話さない。それを私は分かっていなかったから、食事だけ行って成果は0みたいなことも多かったです。

――男性側もそれをプレイとして楽しんでいそうですね。

鈴木:私の欲望を上手く使われた感じがありますよね。でも、タダで美味しいものを食べられたからまあいいかって。

――なるほど。そこが鈴木さんの強さなんですね...。


■若者たちの欲望はどこに向かう...? これからの「おじさん」たちへ

『おじさんメモリアル』は鈴木さんが中学生の頃のエピソードからスタートする。1990年代後半という、ルーズソックスにコギャルが大ブレイクしていた時代から早20年。「おじさん」はどのように変化してきたのだろうか? そしてこれから「おじさん」像とは?

――「おじさん」の質は、この20年で変化してきたと思いますか?

鈴木:変化という意味では、リーマンショックあたりから自信を失ったおじさんが多くなりました。おじさんって経済力に裏打ちされているところがあって、それが武器になるから若い人と戦えていたわけですよね。

おじさん...というよりも男性は基本的に社会に翻弄されやすい生き物だと思います。景気にも増税にも左右されるし。時代を写しだす存在としての男性を見ると、変化は見られますね。

――巻末の高橋源一郎さんとの対談で、「今の若い男子がその年齢(今のおじさんたちの年齢)になるとどうなるんだろう」と鈴木さんがおっしゃっていますが、これは同感です。お金を使わず、恋愛に対してもガツガツしない。欲望はどこに向かっているのでしょうか。

鈴木:若い男の子と話をすると、「今は童貞でも良くて、愛する人が見つかったら結婚してセックスをしたい」という恋愛観はよく聞きます。

おじさんたちなんかを見ていると、「女に愛されたい」「いい女を抱きたい」という欲望に忠実な人が多いように思えるけど、そういうモチベーションがないとしたら何を目的にお金を儲けたり、髪の毛を解かしたりするのか分からないですよね。

おそらく、欲望が「モテる」とは違う別の場所に向かっているのかな。これから急速に日本人が豊かになることは考えられないし、自分を大きく見せるのも格好悪い。実際に「何がモチベーションなの?」って若い男の子に聞くと、回答がかなりぼんやりしています。でも、それに正解があるとも私は思っていません。彼らが見つけていくものですからね。

――それぞれのモチベーションをそれぞれが見つけ出すということですね。

鈴木:私は単純な欲望に突き動かされてきたので、アダルトビデオの撮影が2日間あっても「これで100万円もらえて、もっと良い女になれる」と思ってストレスなく生きてきました。そういう意味では、かなり今の若い子たちは複雑な道を行こうとしている気がしますね。

あとは、バブルおじさんたちを下から見てきて、「ああいう風にはなりたくない」と思っているかもしれませんね。

――確かにこの本を読むと、こんな「おじさん」になりたくないって思うかもしれません。

鈴木:私、これでキャバクラ離れが進んだら嫌だなと思いながら書いていました。夜の世界が盛り上がらなくなるのは嫌なので、楽しい世界として書いたつもりです。

――鈴木さんにとっての今のモチベーションはなんですか?

鈴木:変わらず、良い女でいること。ちやほやされることですね。でも古き良き時代の女でもないので、できれば尊敬もされたい(笑)。

――お金についてはどうですか?

鈴木:あれば良いですけど、基本的にお金は男がくれ!と思います。私があくせくして稼ぐんじゃなく、男性が稼いだお金をかすめ取って生きていくのが理想なんですが、30代になるとくれる人が少なくなるので(笑)頑張って働いています。

――最後に、本書をどのように読んでほしいですか?

鈴木:女性はぜひ楽しんで読んでほしいです。男性は自制しながら(笑)。でもここに載っているおじさんは、特別変な人たちではなくて、どこにでもいる普通のおじさんたちです。そこはぜひ頭に入れておいてほしいですね。

(了)

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