子どものいない夫婦の2組に1組は「自分たちは不妊じゃないか」と心配しているというデータがあります(国立社会保障・人口問題研究所調べ)。
ですが、その中で不妊症を自覚し、治療などの行動に移している人はどのくらいいるのでしょうか?
コミックエッセイ『コウノトリのかくれんぼ』(セブン&アイ出版刊)の著者・ポチ子さんは不妊という言葉は知っていたものの、まさか自分は該当しないだろうという根拠のない自信から「妊活をすれば当たり前に子どもは授かるものだと思っていた」と言います。
■妊活をはじめた夫婦が直面した現実
ポチ子さんが手探りで妊活を始めたのは結婚3年目。多くの夫婦がするように、基礎体温をつけて、「ルナルナ」(女性の体調管理アプリ)で排卵日を予測、自己流でタイミングをとるようになりました。だけど、毎月律儀に生理がくる。生理がくるたびになんともいえない敗北感に襲われたそうです。
生理がきてやさぐれているポチ子さんに旦那さんは「しんどい思いをさせてごめんね」と何度も謝ります。そこで初めて「わたしだけがつらいんじゃないんだ」ということに気づき「旦那の子どもがほしいという気持ちを早くかなえてあげたい」と病院に行くことを決意。
とは言っても、不妊治療のやり方はよくわかりません。口コミサイトや体験ブログを読み漁り、通いやすい病院に行ってみることにしました。妊活をはじめて1年がたった頃のことです。
■不妊治療をしたからって「できる」とはかぎらない
いったん通院を開始すると、ベルトコンベアにのっているかのように治療は進んでいきます。初めて見聞きする治療用語、怖くて痛い検査や施術。寝ても覚めても頭の中は不妊治療でいっぱいの状態です。
一方で「不妊治療専門のクリニックに通っているのだからきっと」という期待が常に気持ちのどこかにあったそうです。
ポチ子さんはタイミング法4回→体外受精とあっという間にステップアップ。
ただ、治療のスピードに心が追いつかず、陰性判定をつきつけられるたびに「わたしはなんで不妊症なの? わたしは前世でなにか悪いことしたの? なんでわたしが?」そんな意味もない、答えもないことばかり考えて落ち込んで凹んで、ゴールの見えない不妊治療の渦にのみこまれているかのような、負の思考に陥るようになってしまったそう。
■いつか治療は終わりを迎える日がくる
無情にも7回目の体外受精も陰性判定。
さすがに帰り道は二人とも口数少な。その途中、旦那さんがふと「僕が死ぬときポチ子がそばにいてくれたらいいから」とつぶやきます。その言葉には"夫婦二人で歩んでいく"気持ちの準備が見えるようでした。
結果はどうあれ、いつか治療を終える日を迎えます。ポチ子さん夫婦は「今はまだ続けられる環境なので気持ちの準備はしながら、もう少しがんばろう」と決め、治療を続ける道を選びました。
ポチ子さんの心のタンクが空っぽになるたび、気力を注入してくれたのは旦那さんでした。不妊治療を一緒に戦うことで、夫婦の絆は深まったそう。壮絶な不妊治療のなかに、夫婦の温かさを感じ、人生を考えるきっかけをもらえる1冊です。
(新刊JP編集部)
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