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倒産寸前のカフェレストラン 経営者が下した驚きの決断とは

  • 書名 『余計なことはやめなさい!: ガトーショコラだけで年商3億円を実現するシェフのスゴイやり方』
  • 監修・編集・著者名氏家健治
  • 出版社名集英社

飲食店や美容室、食品店などなど、個人経営の商店の中には、上がらぬ売上とかさむコストに苦しむ店が多い。

なぜ儲からないのか?

幾度も自問したであろう問いかけへのヒントとなるのは「勝負する場の見極め」である。

『余計なことはやめなさい!: ガトーショコラだけで年商3億円を実現するシェフのスゴイやり方』(集英社刊)の著者、氏家健治さんが経営する「ケンズカフェ東京」は、倒産寸前だったというどん底の状態から、今では年商3億円を売り上げるガトーショコラの名店として知られるまでになった。

急上昇の決め手となったのは「余計なこと」をやめたこと。この真意はどのようなものか。氏家さんご本人の言葉を聞いてみよう。

■倒産寸前のカフェレストラン 経営者が下した驚きの決断

――『余計なことはやめなさい!: ガトーショコラだけで年商3億円を実現するシェフのスゴイやり方』には、氏家さんの経営する「ケンズカフェ東京」が以前は思うように利益が出ずに苦しんでいたと書かれていますが、当時の取り組みで今振り返ると間違っていたと思うものがありましたら教えていただきたいです。

氏家:それはもう全てと言っていいでしょうね。当時の状況は、ランチはそこそこお客さんが来ているんだけど夜は閑古鳥、というものでした。入っても1組、2組という状態だったんですけど、こちらとしては、美味しいものを作っていればそのうちもっと来てくれるんじゃないかと思ってやっていたんです。

――「美味しいものを作っていればいつかお客さんもわかってくれる」という思考のままどんどん状況が悪くなるのは、飲食店にありがちな失敗だと聞きます。

氏家:そうですね。実際それをやっていてもお客さんは一向に入るようになりませんでした。今思うとそんな意味のないディナー営業はすぐやめるべきだったんでしょうけど、当時はそれがなかなかできなかったんです。なぜかというと、昼にランチをやったら夜はディナーをやるというのは、飲食店としてはごく当たり前のことだからです。

――確かにそうです。

氏家:だから「儲からないならディナーはやめてしまおう」という考えを持てませんでした。しばらくして本当に経営が苦しくなってからディナーを宴会だけに特化して、徐々に持ち直していくんですけど、本来ならもっと早くやめるべきでした。

――ランチもディナーもやっているお店としては「ランチは薄利なので回転で稼ぎ、利益はディナーで出す」というのがスタンダードなのでしょうか。

氏家:今でこそ少しずつ値上がりしていますが、日本の飲食店のランチはもともと破格に安いんです。その分そこで利益を出すのは難しい。周りのお店がみんな安いから、値上げをしにくいですしね。

だからこそお酒などの注文が増える夜でどうしても利益が欲しいわけです。ここで稼げないと本当に苦しい...。私の店が昔そうだったように、ギリギリでやりくりするような状態になってしまいます。

――そのギリギリの状況を脱出しようと、思い切ってディナーをやめて夜は宴会に特化したことで活路が開けた。

氏家:時期も良かったんだと思います。ちょうど「ぐるなび」のようなサイトが出始めの頃で、インターネットで飲食店を探す時代が来つつあったんです。そこに早めに気づくことができたので、早速登録して販促ツールとして使ったのがうまくいきました。

――ディナー営業を宴会に特化して以降、お店の営業スタイルはどのような変遷をしていったのでしょうか。

氏家:ディナーを宴会だけにした後は、ランチをやめて、カフェもやめて、完全に夜の宴会だけにしました。その過程で徐々にガトーショコラの人気が出てきたのですが、今のようにガトーショコラ一本でやるにはまだ厳しいかなという感じでした。世の中そんなに甘くないだろうと。

――なぜ最終的にガトーショコラ一本に絞る形になったのでしょうか。

氏家:「ケンズカフェ東京」のオープン時からチーズケーキだとかプリンとか、カフェ的なスイーツを出してはいました。ガトーショコラはそのうちの一つだったのですが、宴会で出すようになった時に「すごく美味しい」「売って欲しい」という声をいただいたんです。

でも断っていたんですよ。うちはレストランであってケーキ屋さんじゃないから、ということでやりたくなかったんです。でもあまり言われるものだから仕方なくラップに包んで、適当な紙袋に入れて売るようになった。それが最初ですね。自分もまさか最終的に「ガトーショコラ屋さん」になるとは思っていなかったです。

――ガトーショコラに特別な思い入れがあったから「ガトーショコラ専門店」になったわけではないんですね。

氏家:売るのを嫌がっていたくらいですからね(笑)。ガトーショコラって材料を混ぜて焼くだけで、誰でも作れるものです。それもあって、確かに美味しいんだけど取り立てて売り物にするほどのものでもないと思っていました。

売るようになったから、ということで店のメニューに書いたらまた注文が増えて、口コミで広がって、そのうちに取材がたくさん来るようになって、という感じですね。

――今ではガトーショコラ専門店になっている「ケンズカフェ東京」ですが、別の商品や味・サイズの異なる商品を売らずにガトーショコラ一本にこだわる理由はどんな点にあるのでしょうか。

氏家:うちのガトーショコラは一本3000円なのですが、仮にハーフサイズを作って1500円で売ったとすると、倍売れてようやく売り上げは同じですよね。倍売れたらその分手間暇、コストがかかるわけですから、それならば今のサイズだけでやっていた方がいいという考えです。

違う味を出すケースも同じで、たとえ売り上げが上がってもその分コストがかかりますし、ロスも出やすいんです。ミスだって起こりやすくなりますしね。そういう理由があってガトーショコラ一本でやっています。その方が原材料にお金をかけられますし。

ただ、ビジネスを大きくしていくなら商品が一種類というわけにはいかないでしょうね。うちのような年商3億円ほどのスモールビジネスだからできることだと言えます。

――ビジネスを拡大する計画は今のところないということでしょうか。

氏家:そうですね。これ以上大きくすると人件費や場所代など、いろいろなコストがかかってきます。現状スタッフ4人で今の年商を稼ぎ出しているという意味では、究極的に生産効率が高い状態ですし、一つの理想の形なんだと思います。

(後編につづく)

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