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メガバンク支店長時代に見た、富裕層がひそかに受け継ぐ「マネー教育」とは

  • 書名 『あなたと子どものお金が増える大金持ちの知恵袋30』
  • 監修・編集・著者名菅井敏之
  • 出版社名集英社

子育てをする親であれば、子どもにはお金で苦労する人生は送ってほしくないもの。

だからこそ我が子を熱心に教育し、いい高校、いい大学、そしていい会社に入れようと親は奮闘する。しかし、そうした親の取り組みにはどの程度の効果があるだろうか?

子どもにお金で苦労してほしくないのなら、学歴をつけさせることよりも子どものうちからきちんと「お金教育」をする方が大事、と語るのは『あなたと子どものお金が増える大金持ちの知恵袋30』(集英社刊)の著者、菅井敏之さん。

今回はその菅井さんに、子育てに組み入れるべき「お金教育」についてお話をうかがった。お金の本質に迫るインタビュー前編をお届けする。

■お金に困る人、困らない人の差は、家庭での教育にある

――菅井さんの本はマネー・リテラシーについて非常にわかりやすい言葉で伝えることが特徴的です。最新刊の『あなたと子どものお金が増える大金持ちの知恵袋30』で「子どもへのお金教育」をテーマにされたのにはどんな理由があったのでしょうか。

菅井:2014年に『お金が貯まるのは、どっち!?』という本を出したのですが、それが40万部くらい売れて、たくさんの方に読んでいただくことができました。その後、あちこちの講演でお話をさせていただくなかで、「この本を自分の子どもに読ませたい」という声をいただいたんです。

子どもにお金についてどう教えたものか悩んでいる方がすごく多いことに気がついたことが今回の本を書いたきっかけになりました。『お金が貯まるのは、どっち!?』の内容を子どもに対してどう教育していくかについて深堀りしつつ、私が銀行員時代に垣間見た、いわゆる資産家たちがお子さんにどのようなお金教育をしているのかについても書いています。

――メガバンクで支店長も経験された元銀行員ということで、富裕層の方々と接する機会は多かったかと思います。彼らの家では子育ての過程でお金のリテラシーを授けているそうですね。

菅井:代々続いている富裕層の方をはじめとして、子どもがきちんと自立している家庭の多くは、家の方針としてお金の教育に並々ならぬ情熱を傾けています。お金はいくら稼いでも使えばなくなるものなので、「資産を守る」「増やす」といったことを教えておかないと、子どもが将来、お金で苦労する人生を送ることになるかもしれないからです。

今の日本では「お金の話は外に出すべきではない」という風潮ですし、特に資産家の方ほどそんなことはよそで話しません。けれど、私は銀行員でしたからそういった方々とのお付き合いのなかで彼らが受け継いでいる教育に触れる機会が多々ありました。これは資産家のみならず、どんな家庭でも取り入れるべきものだと思ったので、健全に豊かになる方法としてシェアしようと思ったんです。

――翻ってお金に苦労している家の親はそういうお金のノウハウをあまり知らないのかもしれません。

菅井:そう思います。お金は天から降ってくるものではなくて、能動的に動かないと稼げないものです。しかし、日本では終身雇用制度の影響か、いまだにお金は会社に所属すればもらえて、年を重ねれば自然に増えていくものだという感覚を持っている人が多いように思います。そのせいかお金を稼ぐことに対して能動的ではありませんし、働いてお金をもらうとはどういうことか、お金とは何かの本質も知らないまま。それでは子どもにも教えられないですよね。

一方でアジアの新興国では、誰も彼もがどうにか稼いでやろうというハングリー精神に富んでいるわけです。この意識の違いが10年後20年後にどんな結果を生むのかと思うと恐ろしい気がします。

――まして今はAIやブロックチェーンといった新しい技術が金融と強く結びつき、より高いマネー・リテラシーが求められている時代です。

菅井:そうですね。中国での仮想通貨やキャッシュレス社会の爆発的な広がり方を見てもわかると思いますが、それだけに今の日本の子どもたちがお金についての教育を受けずに大人になったらどうなってしまうんだろうという危機感があります。

まずはお金とは何か。働いてお金を稼ぐとはどういうことか。手にしたお金を管理するとはどういうことかというところを、子どものうちから教え込んでいくことが大切です。ジムに通って体重管理をするように、お金を稼ぎ、貯め、増やして管理するというお金に関する"筋肉"を小さいうちからつけておかないと、大人になってから周囲に太刀打ちできなくなってしまう。そこは親子で一緒に勉強していくべきです。

――「お金の教育」は何歳くらいから始めればいいのでしょうか。

菅井:お金の教育で一番大事なことは「お金というものは誰かの困り事を発見して解決したご褒美としてもらえるものなんだ」という、お金の意味づけです。

これは小さいうちから教えておいた方がいいと思っています。たとえば3歳の孫がおじいさんの背中に乗って足踏みしたら、おじいさんにはちょうどいい重さでマッサージになった。気持ちよかったからと、そのご褒美で100円渡してあげる。あるいは親が忙しそうだからと、言われる前にお風呂を掃除したことでお駄賃が発生する。こんなふうに暮らしの中で「困り事を解決した対価としてお金がもらえる」ということを教えていけばいい。

こういうことを繰り返すことで、子どもはお金の意味を理解して、どうやったら稼げるのかを考えるようになるんです。

――今のお話は日本で良しとされている子育てとは対照的です。子育ての本を読むと「家の手伝いの対価としてお小遣いをあげることが習慣になると、お金が介在しないと何もしない子になってしまう」という意見をよく目にします。

菅井:大切なのは、子どもが自発的に「家の中に困りごとがないか」と考え、実際に解決できたらその対価としてお小遣いをあげること。家族の一員として手伝いをするのは当たり前です。玄関掃除は必ずやるなどの自分の分担をこなすことに対価は発生しない、というのは私も賛成です。ただ、与えられた役割以上の仕事を自ら担ったり誰かの代わりにやったりした時に「報酬」が発生するのは問題ないはずです。

個人的には、日本では「お金を稼ぐことに意欲的なのは品のないことだ」「お金のことには鷹揚に、上品に」という意識が強すぎるのではないかと思っています。先ほどもお話ししましたが、世界には必死にお金を稼ごうとしてやっている人がたくさんいるわけですから、そういう子育てをしていたら彼らに勝てなくなってしまう。

もう日本の中だけで人生を完結できる時代ではありません。もっと子育ての中で「自立すること」=「稼ぐこと」を意識させるべきでしょう。親の役目は子どもを自立させることなのですから。

(後編につづく)

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