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会社を30年続けた女性経営者が明かす"女性が起業したときに起こること"

  • 書名 私を幸せにする起業
  • サブタイトル会社を30年続けた女性経営者があなたに贈る起業家人生を軌道に乗せるための経験則
  • 監修・編集・著者名芳子ビューエル
  • 出版社名同友館

2018年に帝国データバンクが発表した「女性社長比率調査(2018)」によれば、2018年4月末時点の企業における女性社長の比率は7.8%だったといいます(*1)。

この数字についてどう受け取るべきか。
確かに、2008年のデータは6.3%だったため「女性の社長が増加している」と言えますが、やはり比率が低いと考えざるを得ないでしょう。実際、管理職のレベルにおいても日本は女性管理職の比率は少ないと指摘されており、2019年3月に国際労働機関が発表した報告書では、日本の女性管理職の割合は12%と、世界平均の27%を大幅に下回っています(*2)。

実際、女性が会社を起業し、経営することは、男性が起業することとは異なる様々な壁が立ちはだかります。
2社で代表を務める芳子ビューエルさんは、著書『私を幸せにする起業』(同友館刊)で、起業と経営の生々しい現実とともに、「働く女性」「働くお母さん」として経験したことをアドバイスを含めて書きつづっています。

ここではビューエルさんが女性起業家としての経験したこと、そしてビューエルさん自身が「働くママ」だからこそ成し遂げられたエピソードを3つ、ご紹介しましょう。

■起業するなら周囲からあれこれ言われてもブレない心を

もし、起業をしようと思ったとき、それを周囲に言うと「やめときなよ」「失敗したらどうするの?」と言われるかもしれません。特に結婚をしていると、夫や夫の親、自分の親、子どもの友だちの親などいろいろな人が勝手なことを言ってくるでしょう。

ただ、ビューエルさんは「失敗する理由は、もちろんやり方がうまくなかったこともありますが、精神的な部分も非常に大きいと思います。そのため、続けることを諦めてしまうのです」と言います。起業を決めたからには、人には頼ってはいけない。それがビューエルさんの先輩女性経営者としての言葉。

「起業って楽しそう」「自分にもできそう」と思うなら起業しないほうがいい。ビューエルさんは自分の経営者としての経験を通して、あえて厳しい言葉を送っているのです。

■女性経営者同士のつき合い方は難しい

経営者にとって付きものの「社長同士のつき合い」。ですが、女性経営者同士のつき合いはなかなか難しいと言わざるを得ないとビューエルさん。嫉妬やねたみといった感情は男性の経営者にもありますが、女性同士だとさらに難しい問題が...。
実際、ビューエルさんは女性経営者同士のつき合いの嫌な面を多く見てきたそう。「あの人はこれがダメ、あれがダメ」と批判ばかりで、その場にいない人の悪口を言うこともあり、自身も批判に晒されたこともあると告白します。

ビューエルさんが起業をした頃は女性経営者もまだ少なく、経営や人間関係に関するアドバイスをしてくれる人もいなかったそうです。ただ、今では女性経営者も増え、そうした陰湿なやりとりも少なくなってきたとした上で、自分自身がされて嫌だったことを書くことで、自分のような思いをする人が一人でも減るように願っていると述べています。

■「働くお母さん」だからこそ達成できた育休からの復帰率100%

3人の子どもがいるビューエルさん。自身も「働くお母さん」であり、子育てについてもおおいに悩んだといい、そうした体験を踏まえて、女性が出産後も復帰し、子育てをしながら活躍できる会社を目指し、なんと産後の復帰率100%を実現しています。

例えば、産育休中も自分の業務に関連するメールを自由に確認できるため、産休明けにスムーズに仕事復帰できるほか、「子供と二人きりで家にいると落ち込みそうになったこともあるけど、仕事のやりとりを見ると、会社と自分のつながりを感じることができてうれしかった」(p.173より)という声も上がっているといいます。また、社内には子育てと仕事を両立している先輩が多く、いろいろなアドバイスをもらえる環境が整っていることも、復帰率100%を後押ししています。

他にも働く時間の融通をきかせるための様々な工夫が凝らされているといい、こうした環境が子育ての理解の共有を促し、育休明けの女性や子育て中の女性でもモチベーションを高く保てる会社の土台となっているのです。

 ◇

本書のサブタイトルは「会社を30年続けた女性経営者があなたに贈る起業家人生を軌道に乗せるための経験則」。その名の通り、起業家としてビジネスを軌道に乗せるためにはどうすればいいのかが書きつづられています。

しかし、本書にテクニックやノウハウといったものはほとんどありません。あるものは、泥臭い経営の現実と心得です。起業に対して家族から反対にあったり、前述のように銀行から信頼されにくかったり、子どものことで悩んだり...公私さまざまな問題が襲い掛かります。
それでも経営者はビジネスを成功させるために「逃げ道をつくってはいけない」とビューエルさんは強く訴えます。そして、起業を通して「かけがえのない喜び」を味わうことができると述べます。

その「喜び」とは一体なんなのか。それはぜひ本書を読んで確かめてみてください。

(新刊JP編集部)

*1...帝国データバンク/女性社長比率調査(2018年)より
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p180504.html
*2...世界の女性管理職比率は27%、ILO 日本はG7最低(日本経済新聞ウェブサイト)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42179640X00C19A3EAF000/

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