読むべき本、見逃していない?

単なるレイシストと片付けてはいけない――トランプとブレグジットを生んだ〈彼ら〉の正体とは?

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  • 書名 新たなマイノリティの誕生
  • サブタイトル声を奪われた白人労働者たち
  • 監修・編集・著者名ジャスティン・ゲスト(著)/吉田徹・西山隆行・石神圭子・河村真実(訳)
  • 出版社名弘文堂
  • 出版年月日2019年5月30日
  • 定価本体2,900円+税
  • 判型・ページ数四六判・並製・406ページ
  • ISBN9784335460388
  • Cコード3031
 北米と西欧で今、ポピュリズムと極右への支持が吹き荒れている。しばしば排外主義を伴うこの現象をもたらしているものは、一体何なのだろうか。その鍵を握るのが、「トランプ現象」とともにクローズアップされるようになった、「白人労働者」たちの存在だ。だが、彼らはそもそも各国のマジョリティとして、移民や民族的、文化的、宗教的マイノリティに対して優位に立っていたはずだ。むしろ特権階級、既得権者である彼らがなぜ、今さら排外主義を唱える必要があるのだろうか――。

 その答えは、彼らの置かれた状況をつぶさに観察することで得られるかもしれない。気鋭の政治学者ジャスティン・ゲストによる本書『新たなマイノリティの誕生:声を奪われた白人労働者たち』(訳:吉田徹・西山隆行・石神圭子・河村真実)の分析によれば、彼らは「新たなマイノリティ」なのだ。彼らを「マイノリティ」と理解することで、その政治行動――ポピュリズム政治を駆動させるもの――について、新たな視点を得られるのではないか。

 本書に収められた膨大なインタビューの中から、彼らの「言い分」を聞いてみよう。
「私たちがマイノリティだというのが現実です。......自治区の中で80%以上が移民でない学校はありません。イギリス人でこの自治区に引っ越してくる人なんていませんよ。もはや、出ていくだけなんです。トイレに並んでいるときだって、話しかけた相手がイギリス人であることはまれなんですから」
「白人はいまやマイノリティですよ。......〔黒人に〕より大きな力が与えられることだってあるんですよ。なぜなら、彼らはより高い位置にいるから。だから彼らは、好きなようにやれるんです。僕の叔父は工場で働いているけど、そこでは報復を恐れて、誰も黒人に指示しようとはしません。経営者は数で圧倒されていて、勇気がないんです。......白人とは基準が違うんです。歴史の本では、白人はいつも黒人より上にいました。でも、僕らは世界を変えるために人種差別をやめました。それから100年も経つのに、彼らはもっと多くを要求するんです」
「この地区はロンドンのイーストエンド出身者ばかりだったんだ。......みんな愛想が良くてね。だから馴染むのも簡単だった。戦争が終わってから人々が大勢やってきて、隣近所の関係もよかった。今以上に共同体の意識があったんだ。それが2004年か2005年ごろから、違う文化が地域になだれ込んできた。ゴアズブルック地区の外国人はせいぜい5%くらいだった。それが今じゃ5、6割が外国人だ。そこまでの速い変化に住人はついていけない。たくさんのムスリムがやってきたし、アフリカ人も大挙してなだれ込んできた。彼らは地元コミュニティと交わろうともしない。彼らを迎え入れる環境も整っていないし、だから何もかもばらばらになってしまったんだ」
 例外的な経済成長を経験した戦後の「黄金時代」も束の間、オイルショックを挟んで工場の閉鎖が相次ぎ、「白人労働者」たちの多くはミドルクラスとしての力をすっかり失った。そこにグローバル化が追い打ちをかける。大量の移民が来て、地域が多様化する。政治腐敗と組合の形骸化も深刻だ。本書の膨大なインタビューとサーヴェイデータで明らかになるのは、そうした「ポスト・トラウマ都市」で彼らが、政治的、社会的、経済的な剥奪感に苛まれ、ノスタルジアに身をやつす姿だ。だが、ビジネス・ロビーや移民たちの顔色をうかがうばかりの左右既存政党は、彼らの「声」に耳を傾けることはなかった。

 そして、そこにつけ込んだのが、ポピュリズム的手法をとる政治家や極右政党だ。左右の既存政党が「白人労働者」たちをどのように取り込むか、そもそも取り込むべきかを決めかねて右往左往しているうちに、国や政治家から見棄てられたと考える彼らは、自分たちの「声」を拾い上げてくれる存在をようやく見出したというわけだ。トランプ大統領の誕生やブレグジットは、グローバル化に対する各国有権者たちのごく合理的な反応なのだ。
「お願いです、ここ最近なかったことですが、私たちの国と国民を第一にしてください。」(デーヴィッド・キャメロン首相(当時)への手紙で)
「僕はレイシストではないけれども、解決策は〔移民を〕追い出すことさ。」
 「アンダークラス」という言葉が囁かれ、〈分断〉がいよいよ社会に影を落としつつあるグローバル化時代の日本にとっても、本書の見立ては決して他人事ではないだろう。

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株式会社弘文堂

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