2024年 4月 18日 (木)

片目を失ってもパイロットになれる 米国の空を舞う日本人の挑戦

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「シンジ、なぜおまえはパイロットにならないんだ」

   ――大学を卒業後、米国に渡った理由を教えてください。

前田 大学在学中、先述の高校の恩師から「一度、米国にでも行って世界を感じてこい」とアドバイスされたのがきっかけで、2年生の春休みにシカゴの友人をたずねました。そこで障害者が生き生きと暮らしている様子を目にしました。
   一方で在学中、日本国内での障害者の就職について自分なりに調べました。多くの大人に意見を求めましたが、「障害者はパイロットになれない」「就職できない」との答えが返ってきました。それなら日本にいても仕方がない、米国に行くしかないと考え、大学卒業後に日本を飛び出し、航空業関連のインターンシップを募集していたシアトルに向かいました。この時は、将来米国でパイロットへの道が開けるとは知りませんでした。
   1年後、インターンを終えるとエンブリー・リドル航空大学大学院の修士課程に進学し、アリゾナ州のキャンパスで航空の安全について学びました。クラスメートや教授陣の多くはパイロット経験者です。ある日、教授の1人が空港に私を連れ出して、彼の飛行機に乗せてくれた際にこう言いました。
   「シンジ、なぜおまえはパイロットにならないんだ。まさか片目が理由で飛べないとでも言うんじゃないだろうね。おまえの挑戦は何も始まっていない。なぜなら、おまえは飛べるのだから」
   米国航空法では、身体に障害を持つパイロット候補生に対して米航空局が飛行試験を実施し、問題ないと判断されるとSODA(Statement of demonstrate abirity)が発行されます。2004年にSODAを取得した私は翌05年、単発・双発計器飛行付自家用操縦士免許、また単発水上とハイパフォーマンスの操縦士免許をそれぞれ手にしました。渡米から3年で、ついにパイロットになったのです。

   ――日本ではパイロットを目指すのは不可能と言われたのに、米国では夢がかなった。日米で差があるのはなぜだとお考えですか。

前田   これは私個人の意見になりますが、まず日本人のゼネラルアビエーション(民間航空)に対する認知度や関心度が欧米に比べて低いと思います。米国では移動でも航空機がとても身近です。私が(小型機を)操縦する場合、行き先を決め、カウンターでキーを受け取って機体を点検し、「行ってきます」と離陸して空の上に達するまで20分ほどです。民間航空を扱った全国紙、専門誌も多く発行されています。日本では、航空機は別世界ととらえられている気がします。(自家用機などは)「お金持ちの道楽」と考えられているのではないでしょうか。
   また日本では規制が多く、航空機は危ないという固定観念があるとも思います。そのため、障害者が空を飛ぶなんて「想像しただけでも危険」となるのでしょう。米国では多様性(ダイバーシティー)という文化が明確にあり、外国人である私が(パイロットとして)活動できるのも、そのおかげだと思います。
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