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「ユーザー課金」が熱い!ネットで金を儲ける7つの方法(下)

   ひと口に「ユーザー課金」といっても、ネットサービスの形態やその会社の個性によって取り組み方はさまざまだ。CGM(消費者生成メディア)の代表とされるブログやSNS、ブックマークサービスの現場では、どのような課金ビジネスが展開されているのだろうか。

>>「ユーザー課金」が熱い!ネットで金を儲ける7つの方法(上)

その5「ライブドアブログの売上の30%はユーザー課金」
――ライブドアWebディレクター・坪田朋氏

ライブドアWebディレクター・坪田朋氏
ライブドアWebディレクター・坪田朋氏

   「ライブドアブログは2003年11月に始まった、日本でもっとも古いブログサービス。ブログ開設数は09年6月で290万人を超えている。2007年9月に単月で黒字化を達成し、それ以降は通期での黒字化を達成し続けている。売り上げ比率は、30%がユーザー課金で、広告売り上げが60%。これまでは広告の最適化に注目しがちだったが、CGMサービスでもユーザー課金のマネタイズをしっかりやると収益になるといえる。

   にほんブログ村のアンケートによれば、もし無料のブログサービスがなくなって、月300円の費用がかかるようになった場合でも、ライブドアブログの半数以上のユーザーが「ブログを続ける」と答えている。ライブドアでの実際の有料課金ユーザーの割合は、アクティブユーザーの17%となっている。

   決済手段でみると、ライブドアブログの有料プランの売上額の80%がクレジットカード決済で占められている。10%がコンビニ決済で、あとは銀行振込や電子決済。年代別にみると、20代から50代はクレジット決済が多いが、10代と60代はコンビニ決済が多いという傾向がある。

   今後は20代~50代にはクレジット決済向けの月額課金プランをアピールしていきたい。ユーザーアンケートによれば、アクセスアップに貢献する機能のほか、デザイン・カスタマイズや高度のアクセス解析機能、スパム対策・SEO対策などの要望が多い。コンビニ決済が多い10代には、デザインテンプレートの販売など低単価の課金プランを普及させたい。60代以上には、ブログ本の出版の提供などを考えている。

   いまや課金ビジネスはCGMサービスの収益化に切り離せない存在といえるが、PCサイトではユーザー課金の文化はまだ定着していない。もっとお金を払いたくなるようなサービスを作り上げていき、ユーザー課金の文化を盛り上げていきたい」

その6「ミクシィでやる意味があるか徹底的に考える」
――ミクシィ企画部長・岨中(そわなか)健太氏

ミクシィ企画部長・岨中(そわなか)健太氏
ミクシィ企画部長・岨中(そわなか)健太氏

   「ミクシィのミッションは、コミュニケーションを進化させて、人々の生活を豊かにすること。ウェブサービスを作るというよりも、コミュニケーションを非常に大事にしている。新しい機能を追加するとき、機能的な側面だけ見るのではなく、コミュニケーションがいかに発生するか、いかに楽しいかということを重視している。

   今回は『ミクシィ年賀状』を例にして、ミクシィにおけるコミュニケーション課金の話をしたい。コミュニケーション課金とは、コミュニケーションのなかでどのようにお金をはらってもらうか、どのようにマネタイズしていくかということ。

   サービスを検討するうえで重視しているのは、一言でいえば、『ミクシィでやる意味があるか』ということ。すなわち、(1)ユーザーが楽しいか、便利と感じるか(2)強みを生かせているかどうか(3)事業者目線になりすぎていないかどうかの3つが重要と考えている。基本的にユーザー中心に考えるようにしている。

   『ミクシィ年賀状』でいうと、ミクシィのソーシャルグラフ(人と人との関係をしめす相関図)を生かすことで、住所を知らなくても年賀状を送れるようになり、いままでにないコミュニケーションサービスを提供できる。つまり、強みを生かせる。

   また、最近は年賀のあいさつを電話やメールですます人が多くなっているが、調べてみると、80%の人がハガキでもらいたいと思っていることがわかった。また、ユーザーの動向をみると、1年で一番多く日記の投稿があるのは年末年始。ユーザーにも年賀状サービスは喜ばれると考えられた。

   つまり『ミクシィ年賀状』は、コミュニケーションを進化させ、いままでにない体験を提供でき、強み(ソーシャルグラフ)を生かすことができる。市場のニーズとサービスの本質が合っており、多くの点でミクシィの方向性と合致していた。

   だが、先進性や便利さだけではマスをつかめないので、使ってもらうきっかけを作るための仕掛けを考えた。たとえば、400種類以上のテンプレートを用意し、新聞や雑誌での露出が増えるようにして認知度を上げる工夫をした。価格面も48円からという買いやすい設定にしたり、年賀状2枚につき1本の植樹につながるというエコの要素を取り入れて、きっかけをあたえた。便利さだけでなく、面白さや買いやすさ、エンタメ性も加えた。

   ミクシィは基本的にコミュニケーションをデザインしていこうというスタンス。まずユーザーに楽しんでもらい、そのなかで売れるサービスを作っていくという考えだ」

その7「グッズが売れるのは、はてなに愛着を持ってくれる人のおかげ」
――はてな副社長・川崎裕一氏

はてな副社長・川崎裕一氏
はてな副社長・川崎裕一氏

   「ネットサービスを『だれが』『なにを』受け取っているのかという観点で考えると、4つのタイプに分けられる。(1)『自分が、モノを』受け取るタイプ(2)『自分が、サービスを』受け取るタイプ(3)『他人が、モノを』受け取るタイプ(4)『他人が、サービスを』受け取るタイプ。

   『自分が、モノを』受け取るというのは、グッズ販売みたいなもの。ユーザーがコミュニティに対して愛着を持っている場合、モノとしてお金を払ってもいいという人がいる。はてなでいうと、はてなTシャツやはてなダイアリーブック、はてなブックマークストラップなど。これは、はてなに愛着を持っているから、買ってもらえる。

   『自分が、サービスを』受け取るというのは、サービスの有料オプションを払う場合。こういうサービスにお金を払う人は先進的利用者で、新しい機能や容量の拡大を好む。はてなでは「はてなプラス」で、かつての有料オプション。ブログサービスやブックマークサービスや機能拡張が提供されている。

   『他人が、モノを』受け取るものの代表は、アバターやアイテムへの課金。アバターを純粋に自分のために買っている人はほとんどいなくて、服みたいに他人にアピールしている。アバターやアイテムを買って、他人との差別化をしたいということ。はてなでいえば「はてなスター」。これで感謝や感動、尊敬を提供することができる。

   『他人が、サービスを』受け取るというのは、例が思い浮かばないが、人に対してサービスをあげてしまうというタイプ。自分はいいから人を育てたいということで、コミュニティをいかによくするかを考えている人なので、教育者と考えられるが、はてなではまだ、あてはまるサービスがない。

   この中では、最初のグッズ販売がはてなでは好評で、自分のブログを本にする『はてなダイアリーブック』はすごく受け入れられているし、『はてなブックマークストラップ』も800円するのに2日で完売した(ただし、50個だけの販売だったが)。はてなに愛着を持ってくれている人がいるので、こういうビジネスも成り立つ。

   3番目のタイプにあたる『はてなスター』は、任天堂のDSi用に開発した『うごメモ』でよく使われていて、子供とその親が主なお客さま。『うごメモ』で面白いのがあったらスターをつけるという文化が広がっていて、自分の子供や周りの子供にスター寄付をつけるというのも増えている。

   グッズは自分のためだけだが、スターは他人のためなので、自分と他人という双方向の関係が生まれ、影響力が大きい。人が人を呼ぶ仕掛けになっていて、大きな発明だと考えている」

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