2024年 4月 23日 (火)

氷河期に内定をもらえなかった「フリーター」が正社員採用されないわけ

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   第二就職氷河期があちこちで話題になりつつある。10月の時点で内定率6割というのは結構凄い数字なので、みんな危機感を持っているのだろう。このままでは、新卒時に椅子が無いまま、いまだに負の影響を引きずる元祖・氷河期世代の二の舞になりかねない。

   その絡みだろうか、記者や政策担当者からこんな質問をしょっちゅうされる。

「企業に新卒至上主義をやめさせるにはどうすればいいんですか?」

新卒至上主義を支えている「年功序列」

   要するに、内定がないまま卒業し、数年間フリーターをせざるをえなかった若者も、新卒と同じように選考して採用しない企業が悪いということらしい。

   いや、言いたいことはよくわかるし、僕も新卒至上主義は改めるべきだと思うのだが、やめろといってやめさせられるものなら、戦争も犯罪もとっくにこの世からなくなっている。問題は、なぜそういう問題が起きてしまうのかだ。

   少なくとも労組があって春闘をやっているような企業であれば、年齢によってだいたいの賃金の相場は決まっている。大手の電機クラスだと、今のところはだいたい以下のような感じになる。

・22歳新人   320万
・26歳         450万
・30歳         650万±50万
・45歳         850万±150万

   初任給から毎年、少しずつ上がっていく様子が見えるだろう。これが年齢給であり、年功序列と言われるものだ。

   さて、ここで4年間フリーターをやって、景気が良くなったので面接を受けに来た26歳の青年がいたとする。「チャンスをください!」と頼まれても、普通の会社なら採用はしない。26歳とはいえ実質的に新人からスタートする彼の給料は450万と決まっており、“割に合わない”からだ。30歳ならもう絶望的だろう。

「働きに応じて報酬を設定する制度」に変えよ

   同じことは中高年についても言えることで、転職市場の上限が35歳と言われるのは、それ以上だと賃金水準が高くなりすぎてペイしないと判断されるからに過ぎない。

   年功序列というのは、レールに乗って進んでいる人にとっては楽チンきわまりないのだが、一度でも落ちてしまうと、徹底的に疎外されるシステムである。いや、僕みたいに自分の意志で降りたヤツはどうでもいいんだけど、たまたま氷河期にぶつかった人にはご愁傷様というしかない。

   解決策は単純明快だ。「年齢や学歴、性別によらず、誰でも働きに応じて報酬を設定できるシステム」に移行すればいい。そう、それは職務給であり、そのためにはいつも言っているように、雇用の流動化が必要となる。

   ところで、上記のような話をしてあげると、冒頭の質問をしてきた人たちは、なぜだか急に黙ってしまう。そして、話題を変える。解決のハードルが高すぎてめまいがしたか、それとも、自分自身が損をするかもしれないから「聞かなかったこと」にしたのか。

   これを読んだあなた自身は、どっちだろう。「どちらでもない、流動化が必要だ」という人が多数派になるまで、新卒至上主義は決して終わらない。

城 繁幸

人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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