2024年 4月 20日 (土)

職場で眠ってしまう社員に困っています!

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   昼休みに昼寝をすることは、食後の眠気を軽くし、仕事の集中力を高める上でよいといわれています。ただ、1日に何度も昼寝をしてしまうようでは、仕事に差支えが出てくるでしょう。ある会社では、そんな眠ってばかりの社員に手を焼いています。

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「復職可能」と書かれた診断書を盾に休職を拒否

――システム開発会社の人事です。現在、扱いに困っている男性社員がいます。仕事中に机にうつ伏せになって眠ってしまうのです。1回5~10分くらい、1日に5~6回は休んでおり、ときには30分以上そうしていることもあります。

   起きているときも、頭がボーっとしているようで、表情に乏しい顔をしており、トイレの個室に入ったまま、しばらく出てこないときもあります。たぶん、中で寝ているのだと思います。

   この社員は、以前うつ病で休職していましたが、休職期間の満了直前になって「復職は可能。ただし残業は不可」と書かれた診断書を持ってきたのでした。

   社内の手続きを経て元の職場への復職が許されたのですが、1ヶ月ほど経ったころから遅刻や欠勤が増え、そのうち職場で眠るようになってしまいました。

   上司が心配して「まだ無理なんじゃないの?」と声をかけましたが、本人は、

「医者からは診断書も出ているし、少し休めば仕事はできます」

といって聞きません。診断書を盾にされると、上司も何も言えません。

   ただ、ほとんど仕事になっていないのは事実で、このままにしておくべきではないのは明らかです。

   とはいっても、再び休職となれば期間が通算されて退職とならざるをえず、気の毒な感じもします。どういう点に注意して対処すればよいのでしょうか――

臨床心理士・尾崎健一の視点
専門の医師に「正確な情報」を伝える手助けをすべき

   うつ病が復職1ヶ月で再発することはありえます。強い眠気が、うつ病の症状なのか、抗うつ剤の副作用なのか、またはナルコレプシー(過眠症)などの睡眠障害によるものなのかは、専門家の判断が必要です。休職期間満了で退職となることをおそれ、社員から正しい情報が主治医に伝わっていない可能性があります。本人のために主治医と連絡を取るか、産業医によるセカンドオピニオンを取るなどして、現在の病状について正確に把握しなおした方がよいでしょう。

   服薬の量を調整することで眠気が減るようであれば、引き続き「リハビリ勤務」を認める会社もあります。しかし、本人にとっても会社にとっても、完治していないのに働き続けることのみが選択肢とは言えないでしょう。この雇用難に何が正解とは言えませんが、無理をして病状を悪化させるも、療養に専念してから新たな人生を始めることを選ぶ人も少なくありません。

社会保険労務士・野崎大輔の視点
病状が緩和してから「再雇用」する会社もある

   復職が可能かどうかは、医師の診断書は参考にするものの、最終的には会社が勤務状況を見ながら判断できます。残業を含め、十分に仕事ができないようであれば、再び休職させ、期間満了であれば退職もやむなしと考えます。余裕のある大手企業では、処遇はそのままで業務を軽減する「リハビリ勤務」が行われていますが、中小企業ではその余裕がないところがあっても仕方がありません。リハビリ勤務が必ず認められるとは限らないことを、会社も社員も知っておく必要があるかもしれません。

   なお、いったん期間満了で退職した後に、パートタイマーや契約社員として、短時間勤務をしながら病気の療養を続けたり、病状が緩和してから再び正社員として再雇用されたりする人もいます。業務経験のある人が勤務してくれるなら、会社としても歓迎でしょう。いずれにしても、ある程度仕事ができる状態まで回復してもらうことが前提です。

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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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