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<ビジネス敬語10>取引先に電話でクレームを言いたいときには?

   前回の「クレーム電話の受け方」に続き、今回は逆の立場から「クレームの言い方」を解説します。普段から自分がミスをしないように気を配っていたり、お客様や取引先からの厳しいクレームに対応していたりすると、つい相手を勢いよく言い負かしたい気持ちが高まってしまいますが・・・。

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感情ではなく「要望のポイント」を絞って伝える

   ヒロシ君のもとに関係会社から、製品の見本が期日を遅れて到着しました。前日に納品予定だったのですが、遅延の連絡すら取れなかったのです。そのせいで他の関係各所のスケジュールを引き直す羽目になり、ヒロシ君は大迷惑。今後はこのようなことがないよう相手にクレームを言いたいのですが、どのように伝えるとよいでしょうか?

A.勝手に遅れられると困りますよ。これからは気をつけてくださいね。
B.今回は終わってしまったことなので仕方ありませんが、今後は期限を過ぎてしまうようでしたら事前に連絡いただけますか。
C.大変恐れ入りますが、どのような理由で遅れたのでしょうか?

   答えはBです。クレームを出す際でも、自分の感情を抑えつつ、相手の感情への気遣いも忘れないようにしましょう。そして、こちらの要望をしっかり伝え、それが重要であることを認識してもらうことが大切です。


ポイント1:要望を明確に伝える

   クレームは相手をやりこめるために言うのではなく、今後のお互いの仕事を円滑に進めるためのものです。どこが問題なのか、どう改善して欲しいのか、要望のポイントを絞って伝えるのが肝要です。今回の場合は、Cのように遅れた理由を尋ねるよりも、「あらかじめ連絡を入れるよう指示する」方が有効でしょう。

ポイント2:相手の立場を一度認める

   クレームは、出す方も出される方も気持ちのよいものではありません。だからといって、相手のミスをそのままにしておくと、同じ過ちが繰り返されます。言うべきことはハッキリと示すべきです。

   ただし、明らかに相手に非があるような場合にこそ、礼儀を失わない対応を意識すべきです。Bのように「仕方ない」と受け止めてから要望を出すと角が立ちません。さらに、最後に「よろしくお願いします」と言い切ることで、相手に対して念を押す効果が出ます。お願い事やお詫びでは「お願いできますでしょうか?」というクッション語が好ましいのですが、クレームにおいては必要ありません。

自分の勘違いに後から気付くこともある

   次のような言い回しは、ありがちですが、ビジネスマナーとしてはNGです。


NG1:「御社のスケジュール管理は、いったいどうなっているんですか?」

   納期が遅れた相手に対して、つい責めるようなことをしてしまいがちです。高圧的な態度を取ることは、今後の関係を良好に保つためにも避けたいものです。

NG2:「あれからいろいろ大変だったんですよ!」

   どのような影響があったのか、相手に伝える必要がある場合には、具体的な内容を述べた方がより相手の心に伝わり、同じトラブルを繰り返さずにすみます。「いろいろ大変」というあいまいな言い方はしないほうがよいでしょう。

NG3:「遅れたので値引きしてくれませんか?」

   遅延によって明らかな損害が出た場合は、その根拠を示して相談することはあるかもしれません。しかし、そうでない場合に、相手の落ち度につけこんで、こちらの利益を安易に増やそうとする行為はあさましいものです。ペナルティを目的にする値引きは、再発防止に効果が上がらない場合も。まずはトラブルが今後起きないようにするためにはどうすればよいのかを考えましょう。


   以上、相手に非がある場合には、つい感情をあらわにしてしまいがちですが、ビジネスにおいては慎むべきです。相手に不可避の事情があるかもしれず、また自分の勘違いや不備もどこかにあったかもしれません。一方的に怒鳴り散らしたりすると、取り返しのつかないことになり、社内外で信用を失うこともあるので注意が必要です。


西出博子

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