2024年 4月 19日 (金)

休職明けの「リハビリ勤務」 現場のイライラ募ってます

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うつ病の休職者が職場復帰できる期間は、人によって大きく異なる。辛い病状にできるだけ寄り添ってあげたいと思う一方で、仕事との兼ね合いも考えざるを得ない。ある会社の人事部には、職場復帰を試みる人の周辺から問い合わせが相次いでいるという。

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復帰の見通しが立たず同僚の残業が増加

――中堅メーカーの人事部です。不況を理由にリストラをした後、メンタルヘルス不全の休職者が増えました。その後、復職を試みる人も出始めましたので、産業医と相談して業務内容や就業時間を徐々に元に戻していく「リハビリ勤務」の制度を設けました。
   病気の再発防止を目指して始めたのですが、運用が進むにつれて、さまざまな問い合わせが入るようになりました。
休職明け間近の部下を持つA課長
「出社の練習と復職の打ち合わせを兼ねて、何度か会社に呼び出しているんだけど、『通勤中に事故とか起きたら会社が保障してくださいよ』といわれた。正式に職場復帰してないから通勤災害にならないはずだけど。勝手なものだ」
リハビリ勤務を始めた部下を持つB課長
「この2週間、午後勤務にしているのだが、本人は、終日勤務の見通しがまったくつかないという。医師と相談して状況を見つつ、と言われていますが、いつまでこの状態が続くんだろう」
リハビリ勤務が続く部下を持つC課長
「時短勤務が半年経つが、いまだに疲れやすいらしく、朝は遅刻をし、昼食をとって少し勤務したら夕方早退してしまう。やりきれない仕事は他の社員が分担している。早く完全復帰してもらうか、退職か異動してもらって代わりの人員を補充してほしい」
   リハビリ勤務者だけがマイペースで出勤する一方で、他の社員の残業が増加。社員の幸せを考えて作った制度が、現場の論理と食い違いを起こしており、周囲のイライラを募らせる結果になっているようです。このままでは、まともに働いている社員が疲弊しそうで内心不安です――

社会保険労務士 野崎大輔の視点
休職者と管理職の双方へ「事前説明」が不可欠

   休職者のスムーズな職場復帰には、一定のルールが必要です。「休業の開始」から「通常業務への復帰」までの流れをあらかじめ明確にしておきましょう。厚生労働省の「職場復帰支援の手引き」が参考になります。トラブルは事前の取り決めや説明が不十分なために起こることが多いです。休職者と現場管理職の双方に、次のような説明をして了解を得ることが欠かせません。

・休職中は給与が支払われず、労災や通勤災害の対象にもならないこと
・復職前の打ち合わせの出社は、休職と同じ扱いとなること
・リハビリ勤務中の給与は、勤務時間分しか支払われないこと
・リハビリ期間を経過して通常勤務ができなければ再休職になること
・休職期間(通算)が満了しても復帰できる状態になければ、自己都合退職となること

   何か起きてから勘違いが発覚すると、休職者は「そんな話は聞いていない。なぜ最初に言わなかったのか」と会社に不信感を抱きます。事前の説明の後には休職者からは「説明確認書」に捺印をもらっておくとよいでしょう。

臨床心理士 尾崎健一の視点
職場復帰は「午前出勤」から始めたほうがよい

   「リハビリ出勤(試し出勤)制度」のような段階的復職の期間は、一定の期限(1か月から3か月程度)を設けておくべきです。期限内に通常勤務に戻れなければ、再び休職するなどを主治医や産業医と検討するべきです。期間は復職時に休職者や主治医と相談し、あらかじめ合意しておいた方がよいでしょう。期限を区切ることが本人の回復意識にプラスに作用することもありますし、中途半端な状況が長引くと「周囲の社員の健康」に悪影響を与えることもあり得ます。

   なお、メンタル不調者は、概して朝が辛いと訴える傾向にあります。以前はこれに配慮して「午後出社」に慣れさせてから、出勤を徐々に早めるやり方を採っていました。しかし、この方法はなかなか成功しにくく、いまでは「午前出社」から始める復職プログラムが多くなっています。最初に頑張ってもらい、徐々に夕方の勤務まで伸ばしていくと生活サイクルができやすいようです。

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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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