2024年 4月 20日 (土)

自分のアイデアを横取りして出世した課長が許せない

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   新しいビジネスの創造には、新しい発想が求められる。若手社員に期待されるところも大きいが、頑張りに応じた評価を受けていないと感じる人もいるようだ。ある会社の人事部には「上司が自分のアイデアを横取りしている」と若手社員からクレームが寄せられている。

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「なぜ自分だけ報われないのか」

――企画会社の人事担当です。広告宣伝部のA君から「上司に不満があるので会社を辞めたい」と相談がありました。彼は学生時代から熱心にマーケティングの勉強をして、最新の知識と柔軟な発想力で評価されている入社3年目の若手社員です。
   これまでもいくつかのプロジェクトで、新鮮なアイデアを打ち出して成功に貢献してきました。年度初めの企画会議でも大きなキャンペーン企画を提案して注目を集めていましたが、その手柄をすべて上司に持っていかれたと不満を抱いています。
   聞くところによると、実際の企画を動かす段になって、クライアントとの打ち合わせや重要なプレゼンにA君は出させてもらえず、すべて上司のB課長が行っているとのこと。先日の報告会もB課長が発表し、重役からおほめの言葉が出たそうです。
   事情を知る部内のメンバーは、A君のアイデアがあってのことだと知っているのですが、他の部署やクライアントには知られていません。昨年、B課長が社長賞をもらったのも、実質的にはA君のアイデアを実行したことが評価されたといいます。
   A君としては、部下のアイデアを利用して自分だけ出世していく課長が許せないとのこと。最近は課長と距離を置き、どうせ手柄を横取りされるのなら新しい提案を出さない方がマシだとまで言っています。
   このままではA君がモチベーションを下げ、能力を発揮してもらえない状況になってしまします。また、もしも退職することになれば人材とノウハウの流出です。会社として、どういう手の打ち方があるでしょうか――

社会保険労務士・野崎大輔の視点
「会社は何を重視するか」によって判断が変わる

   ある程度の規模の会社にとって、仕事は組織で行うものです。一方で、一人ひとりの社員個人が動かなければ、どんな物事も実現できません。御社の経営としてどちらを重視するかによって、判断は分かれるところです。「仕事は組織」を優先するならば、いくらA君が有能でも勝手な行動は許されず、不満があれば退職してもらってもやむを得ません。しかし「うちの会社は個人の優れたアイデアがあってのこと」と考えるならば、B課長だけでなくA君の仕事を積極的に評価するしくみを作るべきです。社長賞も、アイデアを出したA君にあげるようにして、昇給・昇格にも反映しましょう。

   組織の秩序と個人の創造性の両面で対策を打つのが理想ですが、対応のブレを起こさないためにも、最終的に会社が何を重視するのか、原則を決めておくべきです。これは突き詰めていえば、自分の会社が何を競争力の源泉と考えるかという、根本的な戦略方針にもかかわることです。

臨床心理士・尾崎健一の視点
「上司と部下の信頼関係」で考え方が変わる

   A君はアイデアマンとして優れているようですが、さらに大きく成長してもらうためにも、実行段階でいろいろな仕事がかかわっていることを理解してもらったほうがよさそうです。アイデアの評価、社内の意思決定の取り付け、予算への組み込み、クライアントや発注先との交渉、進行管理など、さまざまな仕事があるはずです。アイデアだけでは仕事が回らないことを理解してもらい、実行推進の力をつけてもらうためにも、A君には実行段階でのサブリーダーなど新しい仕事を担ってもらうことも必要です。視野が広がることで、会社や上司に対する不満の形も変わってくるかもしれません。

   また、日頃からB課長が「君のアイデアのおかげでいい提案になった」「おかげで助かっているよ」という言葉をかけるだけでも、A君の心証は違ったのではないでしょうか。上司と部下の信頼関係が出来れば、A君もB課長を「僕のアイデアを実現に結び付けてくれる人」と評価し、「この人に出世してもらって、僕も引き上げてもらおう」と考えが変わるかもしれません。

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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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