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<ビジネス敬語15>「あいにく」は相手の意を汲める便利な言葉

   ビジネスでは、さまざまな要因で思い通りに進まないことがあります。自分にとって都合の悪いことは、誰もが進んで言いたくありません。しかし、ビジネス上の問題を隠していると、被害が拡大して取り返しがつかなくなることも。

>>上司も知らない「ビジネス敬語」の使い方・記事一覧

悪いニュースはあえて前に持ってくる

   都合の悪いことは、勇気をもって先に言ってしまうように心がけましょう。実際、上司へ悪いニュースを知らせるときには、あえて都合の悪いこと(問題)を先に説明し、その後で解決策を提案する方が、話の後味がよくなるものです。

   例えば、同じ状況を説明しても、よいことだけを先に言おうとすると、

上司「あの商品はもう完成したのか?」
部下「いえ、すでに予約は1000件を上回っているのですが」
上司「いいじゃないか。それで?」
部下「実は作業に時間がかかっていて、まだ完成していないのです」
上司「なに!?1000件も予約が入っているのに、まだ完成していないのか!」

と、悪い現状だけが印象に残り、その後のコミュニケーションもネガティブな方向に行ってしまいます。

   しかし、

「いえ、あいにく作業に時間がかかっていて、まだ完成していません。しかし、すでに予約は1000件を上回っていますので、○日に間に合わせるよう鋭意努力しているところです」

という言い方にすると、プラスの状態で締めくくることになり、

「そうか、あとは完成を待つだけだな。頑張ってくれよ」

と、コミュニケーションがポジティブな方向に進みます。最悪の事態をシミュレーションさせた後に解決策を示すと、相手はホッとするもの。「あとは何が足りないんだ。すぐに手配するぞ」と、支援を持ちかけてもらえるかもしれません。

最初に「あいにく」と切り出すと流れができる

   実は先ほどの例には、悪いことを先に説明することのほかに、もうひとつポイントがありました。それは「あいにく」という言葉の使い方です。相手に聞かれたことだけを答えるのではなく、相手の意を汲んで対応するときに使います。

お客様「田中部長はいますか」
受付「田中はただいま外出中です」
お客様「・・・で、何時に戻ってくるの?」

   これでは「気の利かない受付」と言われてしまっても、しかたがありません。お客様は田中部長に会いたいと思っているので、どうしたら会えるかを答えなければ用をなさないからです。こんなときは、

受付「あいにく田中は外出中でして、午後4時ころには戻る予定です。お急ぎであれば携帯電話に連絡を取りますが、いかがでしょうか?」

と先手を打って代替案を示せば、

お客様「そうですか。では、お戻りになってからでいいので、折り返しお電話をいただけますか」

と好感度がアップし、コミュニケーションがうまくいきます。最初に「あいにく」を使うことで相手の意向がスムーズに理解でき、次に言うべきことが自然と出てくるようになるのです。ぜひ試してみてくださいね。


西出博子

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