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第二、第三の「ザッケローニ」を日本に迎え入れよう

   国民の気概の喪失と、内向きの姿勢。技術力の優位性の喪失。イノベーションの欠落――。日本経済の問題の根は深い。これについて、本質的な解決を図る有力な手段がある。それは、能力の高い外国人を積極的に受け入れることだ。

   現在、サッカー日本代表は、イタリア人監督ザッケローニの下で好成績を挙げている。選手は国籍の上ではみな日本人だが、出自は韓国やブラジルなどさまざまだ。だからといって、「弱くてもよいから純粋日本人だけのチームにしろ」とか「監督を日本人にしろ」などと言う人はいない。実力主義とはそういうものであり、それにより日本国民にとって最善の結果が得られる。

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アインシュタインを受け入れたアメリカ

   これはスポーツに限った話ではない。たとえば患者にとって医師の国籍は問題でなく、病気をちゃんと治してくれるかどうかがすべてだ。なので、世界中の優秀な医師が日本に来て治療をしてくれるのが理想となる。

   日本人医師は外国人医師の受け入れには反対するかもしれないが、外国人への門戸を閉ざすことによって助かるべき命が失われるようでは本末転倒だ。

   ビジネスについても同様だ。日本人の起業が非常に少ないと指摘されて久しいが、こういう分野にこそ優秀な外国からの助けが必要だ。日本の若者の多くはチャレンジ精神を失っていると言われており、外からの刺激が求められる。

   これについても「日本人の雇用が大事」という声があるだろうが、雇用創出のためにこそイノベーション、起業が必要だろう。第二次大戦後の混乱期に松下、ホンダなどの新興企業が生まれて、それらが日本経済を牽引してきた歴史をもう一度思い出そう。

   世界で移民の受け入れによって成功した国と言えば、アメリカにとどめを刺す。2007年の米経済諮問委員会の調査によると、移民はアメリカのGDPを370億ドル押し上げたという。

   雇用への影響をみると、高校を卒業していないアメリカ生まれの労働者については、移民によって年収が平均1.1%下がったようだが、高校卒業以上のアメリカ生まれの労働者の9割は移民によって収入が増えており、その増加の割合は教育水準によって0.7%から3.4%程度だという。

   戦後のアメリカの発展の一翼を担ったのが、移民してきた科学者の一群だ。たとえば「相対性理論」によって科学史に永遠に名前を刻む、大科学者のアインシュタイン。ユダヤ人であった彼は、ナチス・ドイツを逃れてアメリカに移住した。

   第二次大戦当時、多くの学者・研究者がアメリカに本拠地を移し、それが戦後のアメリカの科学技術の発展に大きく寄与した。わが国でも「現代のアインシュタイン」に住んでもらって科学技術の発展に寄与してもらう、というのを目標にしたらどうだろうか。

優秀な人をどうやって日本に呼び込むか

   アメリカで、移民が科学技術で活躍している例は数知れない。

   セルゲイ・ブリンは6歳の時に、数学者の父と宇宙科学者の母に連れられて祖国ロシアからアメリカに渡ってきた。彼は、スタンフォード大在学中にラリー・ペイジと知り合いになり、検索エンジンのグーグル社を共同で設立した。その後のグーグルの活躍は誰しもが知るところだ。

   セルゲイ・ブリンのような俊英の多くはアメリカの大学で教育を受けている。日本人でもノーベル賞級の学者のかなりの割合がアメリカの大学に籍を置いている。これは「頭脳流出」ということで一時問題になったが、最高の研究環境がそこにあるのならば仕方のないことだ。

   逆に日本としては、優秀な外国人が日本の企業や大学で研究して、それでノーベル賞がとれるようになる、というのが理想だ。「頭脳流入」である。

   なお、移民の受け入れは欧米諸国で大きな社会問題になっている。

   しかし今回は、単純労働に従事するような労働者の自由な受け入れではなく、優れた技能や能力を持つ人材のみ限定的に門戸を開放することを主張しているので、マイナス面は最小に抑えられると思う。

   優秀な外国人の受け入れ、というと日本人から抵抗も大きいだろう。しかし、実はそれ以上に難しいのは、そういう優秀な人をどうやって日本に呼び込めるか、というところにある。

   言葉や文化の問題もあるが、それと同時に、実務面で彼らが満足できるような環境を整備する、というところのハードルが高いと思う。

   でも、何としてもそれを実現するように頑張らないと、日本の停滞はさらに続いていくであろう。日本人同士でつまらない既得権争いをしている場合ではないのだ。

小田切 尚登

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