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「10時開店」のデパートが時間通り客を迎えるのは「過剰品質」か

   労働政策研究・研修機構が発行する「Business Labor Trend」2011年5月号に、「ホワイトカラーの労働時間を考える―効率的な働き方を求めて―」と題されたシンポジウムの様子が収められている。

   企業の人事担当者や大学の研究者、行政担当者6人が、「労働時間の適正化」や「ホワイトカラーの効率的な働き方」などについてディスカッションを行っている。

ドイツでは「店員に怒られてしまう」

   シンポジウムでは、大手メーカーから「長時間残業してもピンピンしている者もいれば、そうでない者もいる」という理由で、適正な労働時間の水準を一律に決めにくいという意見が出された。

   一方、武陽ガス(東京・福生)の総務課長、小澤修氏によると、同社では

「業務は所定労働時間内に終わらせるのが原則」

という方針を決めており、これを社員に守らせる取り組みを行っているという。

   以前の残業時間は、平均月28時間程度。これを20時間まで減らす目標を立てた。部下の業務量が平準化されているかチェックし、社員の適正配置や教育支援が足りているかなども確認を進めた。

   その結果、平均残業時間は5年連続で減少し続け、昨年は平均14.1時間まで下がった。小澤氏は、「経営トップが本気になって業務の効率化を進める姿勢を見せる」ことの必要性を強調する。

   小倉一哉・早大准教授は、欧米と比較すると、日本のサービス業は「消費者の要求水準の高さ」が長時間労働につながっている面もあり、社会的コンセンサスを得た上で要求水準を徐々に下げていくしかないと指摘する。

「(たとえば日本の)デパートでは10時開店であっても、店員はそれより前に並んで挨拶の準備をしています。…(しかし)ヨーロッパでは一番時間に正確なドイツでさえ、10時開店のところに10時に行くと店員に怒られてしまいます。10時はあくまで店員が出勤する時間だからです」

   コーディネーターの佐藤厚・法政大教授も、「過剰品質」という言葉を使い、社内においても「無駄な会議や何ページにも及ぶ分厚い会議資料」が労働時間を延ばす要因になっており、労働時間の適正化には「過剰品質を抑えていく取り組みが必要」とまとめている。

   なるほどと思われる点は多いが、「10時開店」を掲げたデパートが10時に客を迎える体制を作ることを、日本人が「過剰品質」と言えるようになるまでには、相当の時間がかかるのではないだろうか。