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口コミサイトに見る大王製紙 「創業家」への辛らつな批判

「明日までに○億円を自分の口座に振り込んでくれ。このことは口外しないように」

   井川意高元会長による巨額借り入れ問題について、大王製紙は特別調査委員会による報告書を公表した。「創業家一族による絶対的支配」が垣間見られる内容だが、ネット上には以前から、この会社の閉鎖的な体質に対する告発が書き込まれていた。

まるで裸の王様「オーナーに悪い報告はしない」

「社会・環境報告書2009」で「コンプライアンスを第一とする企業風土」を掲げる井川意高氏(当時社長)
「社会・環境報告書2009」で「コンプライアンスを第一とする企業風土」を掲げる井川意高氏(当時社長)

   就職・転職サイトのヴォーカーズの「内部リサーチ」には、大王製紙の現役社員および退職者による書き込みが116件見られる。会社に対する総合評価は、5点満点で2.5点。特に低いのは「人材の長期育成環境」で1.9点だ。

   中途入社後、3年足らずで総務部門を退職した人の評価は、「待遇面の満足度」「風通しのよさ」「社員の士気」など、ほとんどの項目で最低点。上場企業という点に魅力を感じたものの、閉鎖的な社風にモチベーションが上がらなかったようだ。

   社員の年収・口コミ情報を集める会員制サイトのキャリコネにも、社員・退職者からの42件の書き込みが見られる。いずれも問題発覚前のものだが、目に付くのは、やはり創業家メンバーと思われる「上の人」に対する辛らつな批判。まるで「裸の王様」状態だ。

「基本的にトップダウンなので、やりがいはない。完全にみんながオーナーにびびっていて、悪いことの報告をしたがらない」(28歳男性・経理)
「同族ワンマン経営を象徴する企業。一族にソッポ向かれたら明日はない。役員クラスは皆顔色をうかがいながら仕事をしている」(28歳男性・営業)
「(出世できる人には)パターンは2つあります。(1)耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍べる人。上の人間(時には年下の場合もある)から何を言われても受け流せる人。(2)要領が良い人。会社の方針がコロコロ変わるので、いちいち真に受けず、その時々でカメレオンのように従える人」(30代前半男性・営業)
「上の人にかなりガキ大将のような派閥があったりする。その中に入れれば理不尽な環境には置かれないと思う」(28歳男性・営業)

   書き込みには、「関連会社が多く、たらいまわしにされている上層部も多かった」という指摘も見られる。元会長は子会社トップに直接電話をしていたというが、「これで評価されれば本社に戻れるかも」と期待を抱いてカネを振り込んだ人もいたのだろうか。

「能力ある人の意見を聞けば伸びる」という指摘も

   社風をよく表すエピソードとして、30代前半の代理店営業経験者が紹介するのは、ある「イベント」のこと。

「社長や顧問が営業所や支店へ訪れる前の日は、みんなで大掃除をしていました。また、(訪問のある当日は)社長や顧問に話しかけられないように、外出しろと上司に言われていました」

   他にも「説得、根回しがすんでいた内容であっても、トップ判断でそれまでの努力が無に帰すことも少なくない」「上司もさらに上から指示が降りてくるため、断りきれずに部下に降りてくる。しかも、意味のない・無茶苦茶な内容が多い」など、批判が尽きない。

   ただ、中には、強権的な創業家にこびへつらうしかない社風を批判し、「せっかくの数少ない優秀な社員を失う原因になっていることは間違いない」としながらも、

「やる気、能力のある人間の意見も正面から聞き、そして評価できる制度があれば、この会社はもっと伸びると思います」

と将来に望みをつなぐ営業経験者の声もあった。

   別の就職関連掲示板にも、学生の意見として、社員から「会社に対する愛情」が伝わってきたという書き込みも見られる。まじめな現場社員の声を吸い上げ、トップに直言できる肝の据わった管理職や役員がいれば、こんな惨状にはならなかったのではないか、という思いがしてならない。