クレームの矢面に立っているのは、本当は「非正規スタッフ」なんです!
ふと、私がオペレーターブースの一角を通りかかった時でした。区切られたブースに座る1人のオペレーターの女性が、はらはらと涙を流しながら電話をしていました。
どうやらクレームを受けて、お客さまに怒鳴られている様子。お客さまの罵声は、オペレーターのヘッドフォン越しでも聞こえてくるほど大きなものでした。
理不尽なクレームに疲れ「もう会社に行けない…」

「もうムリです、ごめんなさい…」「もう辞めさせていただけますか?」(イラスト:N本)
(うわっ、大変!! だっ、誰か!)
私があわてて手を叩くと(コールセンターではヘルプを呼ぶとき、手を叩いたり振ったりして合図します)、すぐに男性社員が飛んできて、オペレーターからヘッドフォンとマイクを取り上げて電話を代わりました。
泣いているオペレーターは、別の女性社員が付き添ってコールセンターの外に連れて行きます。でも、彼女の周りにいるオペレーターは、ちらりと彼女を目で追った後、何事もなかったように電話を続けています。
なぜなら、コールセンターではこういった出来事は日常茶飯事だからです。(また、一人ダメになったなぁ――。)ひとつ空いてしまったブースに注がれるのは、そんな冷やかな視線でした。
「もうムリです、ごめんなさい…。会社に行けません」
「○○というオペレーターの夫なんですが、妻がうつ病と診断されて…。仕事、辞めさせていただけますか?」
出社して朝イチで取った電話で、オペレーターやご家族から退職の申し出を受けることも珍しいことではありませんでした。
私の所属するコールセンターでは、300人以上のオペレーターが働いています。男性もいますが、ほとんどが女性。全員がパートタイマー、アルバイト、派遣会社社員といった「非正規雇用」のスタッフです。
コールセンターの離職率は高く、オペレーターは定期的に募集され採用されます。けれど最初の応募で30人集まっても、研修を終える段階で20人になり、配属されて2か月で約10人前後に減ります。
彼女たちは、個人差はありますが1日に200件から300件の督促の電話をかけて、折り返しでかかってくる電話を取っています。中には当然クレームもあって、電話を取った瞬間にいきなり「馬鹿野郎!!」と怒鳴りつけられることもあります。