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日本の技術力、落ちているのか 「システムづくりはモノづくり」

   先日、仕事終わりで知人と飲んでいた時のこと。そういえば、という感じで知人が訊ねてきました。

「井上さんの“ご自慢の、ほとんど使っていない”iPhone4Sって、通話中にブチって切れたりしません?」

   いや、だからほとんど使ってないから…。せっかく下4ケタを覚えやすい番号で取ってもらったのに、通話したことがまだないんだよね。それにしても、通話中に予告や警告なしにブチ切れるとは、聞き捨てならん話ですなあ。

電源が落ちる国産メーカーのスマホ

「うーん、僕もそんなに通話するわけじゃないんですけど、10月ぐらいから通話中にいきなり切れちゃうようになって。一番最初は回線が混んでるのかなって思ったんだけど、スマホ自体の電源が落ちてるし、何なんだ、これって」

   その場にいたほかのiPhone3G、iPhone4Sユーザーも、通話途中で電源落ちなんてない、と言います。ちなみに、知人はドコモの国産メーカーのスマホを使っています。

「思えば、嫌な兆候が先にあってね。SDカードをスロットに入れると、やっぱり電源が勝手に落ちて再起動してたんですよ」

   今年の夏、ある仕事でSDに記録された動画をその場で視ることになったのが、事の始まりだったとか。SDをスロットに挿し、読み込みに1分ぐらいはかかるだろうと机上に置いていたところ、一緒にいた人が「なんか、エラーしてるみたいよ」と指摘して気づいたそうです。

「あれ?って思って手に取ったら、『読み込めません』みたいな警告が出ていて、どうすりゃいいのと思ってるうちに電源が落ちちゃって。ところが、再起動してる最中にまたエラーが出て、また電源落ちから再起動。これを繰り返しちゃうんです」

   最後は、無理矢理SDを引っ張り出して、手動で再起動。当該スマートフォンは、何事も無かったかのように動き出したのだそうです。それ以降、通話中にも電源落ちが現れるようになったのですが…。

「よくよく考えてみたら、それまでにも通話している最中に落ちてたかもしれない。その時は回線が混んでるんだろうって、勝手に納得していただけで」

パソコン黎明期にもフリーズあったけど

   そんなケースが他にもあるのか、“自慢のiPhone4S”でネットを調べてみると、似たような例についてクロサカタツヤ氏がダイヤモンドのウェブ版に書いていました(「119番中に異常終了、再起動」)。

   この記事をみても原因はよくわからないみたいなのですが、どうもスマートフォン自体のマシンとしての設計に無理があるようです。

「パソコンでも、ちょっと昔にはよくあったじゃない。理由はわかんないんだけど、“不正な入力がありました”みたいな警告が出てフリーズしちゃうのって。それと同じなんじゃない?」

   その場にいた別の知人が言いました。回線ではなくマシン、あるいはOSの不具合だとすると、ユーザーにとっては、単なる迷惑な話でしかありません。

   スマートフォンをビジネスに、などと商売気を出すのが悪いとは言いません。しかし、インフラやツール(マシン)にプロユースとしての信頼性がないというのは、これはいただけない。本末転倒との誹りを受けても致し方ないところです。

「まあ、スマホが普及し出したのも、ここ1、2年のことだし、あんまりキツいこと言うのも、ね」

言い訳に使われる?「β版カルチャー」

   そうでしょうか。このところ気になっていることがあります。とりあえず大まかに仕上げてリリースし、足りない部分や不具合を使い込む中で修正していく「β版カルチャー」は、ITやネットでは昔から当たり前にあることです。

   筆者ももちろん、それは理解していますし、長年馴染んできたことでもあり、特に違和感を抱いたこともありませんでした。

   でも、最近「大まかな仕上げ」そのものの達成度が低い、あるいはβ版でのリリースを品質が低いことのエクスキューズに使っている、そういったケースが目立って増えてきているように思えるのです。

   激化する一方の競争のなかで、先手を打ちたい、先鞭を付けたいと焦る気持ちもあるでしょう。筆者とて中間管理職を含めて営業マンを8年やりましたから、よくわかります。

   その営業マン時代に、金融機関や大手メーカーのシステム構築、保守・メンテナンスをしていたクライアントが異口同音に口にしていたのが、

「目に見えなくてもシステムづくりとは、すなわちモノづくりなんだ」

ということ。

   モノづくりの上手さ、信頼性は、日本の産業にとっての最大のコア・コンピタンスだったはず。焦るだけでは道を誤ります。信頼を損なうことは、とても大きなリスクなのだと心して、がんばっていただきたいと願う次第であります。


井上トシユキ

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