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会社の忘年会なんか絶対出たくない! 残業代も出ないのに

   忘年会シーズンがやってきた。合コンや親しい友人同士ならともかく、上司や先輩、取引先なども参加する会社の忘年会は、いまひとつ出る気がしないという人もいるかもしれない。

   ある会社では、中堅社員が「会社の忘年会に出たくない」と愚痴を言っている。

知らない人も多いし楽しみもない。家に帰りたい

――33歳のSEです。2年前に中途入社した中堅IT企業で働いているのですが、年末になるとユウウツになることがあります。それは毎年、仕事納めの日に忘年会をすることです。

   忘年会は事務所内で開かれ、ケータリングの料理などが振る舞われます。全国の支店をネット中継で結び、お互いの会場から支店長があいさつをしたりします。

   クライアントは除きますが、発注先などの主要取引先には声をかけるので、社員の倍近くの人数が集まります。他部署の人を含め、普段話したこともない人に囲まれることになり、居心地がすごく悪いです。

   部長が「ズル休みするなよ」と釘を刺すので、あからさまにサボることもできません。でも、出たからといって何か楽しいイベントがあるわけでもなく、こんなことなら家に帰ってゲームでもしていた方がいいと、毎年つくづく感じます。

   自由参加とされていますが、強制参加みたいなものです。比較的若い社員が多い会社なのに、そういう空気を作って参加させるようなところが、いかにもムラ的な古い日本企業っぽくて大嫌いです。

   ほとんど仕事みたいなものなのに、なぜか残業代も出ません。

   費用は会社負担ですが、こんなことにお金を使うなら、ボーナスとして現金を出してくれたほうがずっとマシだとしか思えません。いよいよ「絶対出たくない」という気持ちが高まっています――

臨床心理士・尾崎健一の視点
オトナなら社交の場に出る意味を考えてみるべきだ

   忘年会には、仕事を通じてお世話になった方々にお礼を述べ、日々の労をねぎらい、これからの関係をお願いする目的があります。残業代が払われないとか自分の好きなイベントがないとかを理由に、出る出ないを決めるものではありません。パーティなどの社交の場は、日本だけのものではないですよ。もう30歳を過ぎた立派な社会人なのですから、そのあたりをよく考えてみるべきです。

   出ることによる「心理面」でのメリットもあります。対面によるアナログなコミュニケーションにより、相手への信頼感や親近感が湧きやすくなります。こういった感情を共有することで、メールなどのデジタルな情報交換が補完されます。例えばこのコラムの編集者とのやりとりは、ほとんどメールで行っていますが、ときに原稿に対して厳しいダメ出しメールが来ることもあります。そのとき、あらかじめ会って信頼関係を作っておけば、要求にも迅速に応えられるし、「あの人のことだから悪気があるわけではないな」と冷静に対処できるわけです。よく知らない人に同じことをやられていたら、私も腹を立てて連載を降りていたかもしれません(笑)。

   社交の場では「愛想笑い」でも良い効果があります。あまり好きではない人でも、こちらに向かって微笑んでくれていると、自然と好感が生まれてくるものです。相性が悪いと思う人ほど、リアルな対面の場では自分から先制して話しかけ、微笑みかけて苦手意識をクリアしておくと、後々の仕事が円滑に進みやすくなることもあるでしょう。

社会保険労務士・野崎大輔の視点
どうせ参加するなら進んで役割を担ってみては

   個人的には「面倒だ」という気持ちも分かりますが、尾崎さんのいうようなメリットも確かにあります。どうせ出るなら率先して役割を担ってみてはどうでしょうか。意外と得るものがあったりします。私は会社員時代に忘年会の幹事をよく引き受けましたが、そのことで社内人脈が広がり、仕事で困ったときに他の人に助けを求めやすくなる経験をしたことがあります。みんなが嫌がることを進んでやると、周囲の評価も良くなりますよ。

   いつか会を運営する立場になったときのために、押さえておくべき注意点を説明しておきます。まず、忘年会を就業時間外にする場合には、自由参加にした方が無難です。強制参加であれば会社からの業務命令となり、残業代も発生します。1人あたり2時間として全社員分の残業代はかなりの金額になるのではないでしょうか。全員参加を促すのであれば、仕事を少し早めに切り上げて、就業時間中に始めるということも考えられます。そうすれば最初の乾杯やあいさつだけは、全員が必ず揃うことにもなり、職場の秩序も保たれ、残業代未払いだという反発を減らすことができるのではないでしょうか。

   また、強制参加の場合、忘年会の最中に怪我をしたら労災になりますし、帰り道で怪我をしたら通勤災害になるおそれもあるので注意が必要です。


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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。