2024年 4月 24日 (水)

スマホの「ライフログ」プログラム 気味悪さの理由

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   スマートフォンに内蔵され、ユーザーの行動履歴をそうとは持ち主に知らせぬまま通信キャリアに送ってしまう機能、「Carrier IQ」「LifeLogService」が問題になっています。

「ユーザーに対し、きちんとした理解が得られるように、明示的に通知していなかったわけですから、スパイウエアではないかと邪推されてしまうのもしょうがないですよ」

   こう憤慨するのは、あるメーカーで輸出関連の仕事をしている40代のサラリーマンAさん。

私生活と密着しているスマホ

   「アメリカなんかだったら、即訴訟ものでしょう」。実際、すでに通信キャリア、端末メーカー、ソフトウエアメーカーを相手取った訴訟が準備されているそうです。許可を得ていない情報収集を勝手にやった、という部分が法律に抵触するのだとか。

   筆者自慢の使われていないiPhone4Sは、節電のため、バックグラウンドで動くものは真っ先にできるだけ切っていますし、報道によると日本の各キャリアからは、あらかじめCarrier IQをインストールした機器を販売していないと回答があったそうです。

   しかし、LifeLogServiceは「デフォルトでオフ」にはなっているものの、何に使われるかはっきりしないまま、スマホにインストールされているようです。

   それにしても、スマホのアクセス履歴などを勝手に取得される(おそれがある)ことの、この違和感は何なんでしょう?パソコン経由のネットだと、Cookieをはじめ、似たような仕組みは違和感なく使っているようにも思えます。

「そりゃ、要するに個人の行動を無関係な第三者によって監視されているってことですからね、気分が良いわけがない。それに、Cookieだって、全履歴を特定の第三者に送るわけじゃないでしょう」

   それはそうですが…。ひとつ思い当たるのは、ケータイ以降、電話は個人向けのものというイメージになっていることです。

   昭和の頃には一家に1台でしたが、それも昔。いまや、一人1台は当たり前、複数持ちだって珍しくなくなりつつあります。

   パソコンは、どちらかといえば仕事で使うもの、でもケータイやスマホは個人の生活で使うもの。仕事場まではまだなんとか譲れる部分もあるけれど、私生活のこととなると、土足で部屋に上がり込んで見張られているように、強引にプライバシーを侵害されている感じが強くなり気分が悪い。

   こうした、ケータイやスマホの位置づけを、通信キャリアやメーカーが見誤っているのではないか、と。

マーケティング的な「便利さ」もあるけれど

「スマホがパソコンの延長線上にあると、そういうふうに認識しているのであれば、それもそうかもしれませんね。電話の盗聴はあからさまに問題がありそうだけど、ネットの閲覧履歴を自動送信させるだけなら、今までも似たようなことはやってきたじゃん、ってことですか」

   そうなると、子どもに迂闊にスマホは持たせられないってことにもなる、とAさん。

「だって、中学、高校の頃から、文字どおりライフログを取られ、『故障してるんじゃないですか』とか連絡が来るのは便利かもしれないけど。所有者の情報と行動履歴とを突き合わしてマーケティングに使うこともできるでしょ、極端な話。就職サイトにアクセスしてたら『就活してるな』ってわかるし、それから1年、2年経ったら社会人になってるな、ってわかるじゃない。それでボーナスの時期になると、クルマや不動産や婚活なんかの販促メールがジャンジャン送られてくるなんて世の中、ちょっと怖いよ…」

   昨今の子どもたちは、そんなことには慣れてしまっているのかもしれませんが、親としてはやはり気持ちの良いものではないでしょうね。

   もはや使わざるを得ない、生活上必須のツールとなっているからこそ、気持ちの悪いことはしてほしくないというのが、多くの人の本音なのではないでしょうか。


井上トシユキ

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井上トシユキ
1964年、京都市出身。同志社大学文学部卒業(1989)。会社員を経て、1998年よりジャーナリスト、ライター。東海テレビ「ぴーかんテレビ」金曜日コメンテーター。著書は「カネと野望のインターネット10年史 IT革命の裏を紐解く」(扶桑社新書)、「2ちゃんねる宣言 挑発するメディア」(文藝春秋)など。
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