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「予備情報」がなければアマゾンに負ける――勝ち残るリアル営業(1)

   ここ何回か「ネット通販全盛時代に勝ち残るリアル営業のあり方」について考えてきましたが、今回から、より具体的なポイントについて取り上げていきます。営業という仕事は一般的に、

(1)予備情報の収集、(2)カットイン(切り込み)、(3)ヒアリング、(4)提案、(5)クロージング、(6)継続アプローチ

という6つのステップに分けることができます。この各ステップにおいて、ネット通販に存在する限界点を乗り越える工夫と努力を怠らないことこそ、リアル営業が「勝ち残る」道なのです。

取引履歴に基づく「レコメンド」に対抗できるか

   今回は(1)の「予備情報の収集」について整理します。営業活動において、このステップを怠っているために、うまく先に進めないケースは非常に多く存在します。

   以前紹介したカレーショップに飛び込み営業をしてきた担当者たちも、大半は「うちの会社はこんなサービスやっているのですが、いかがですか?」一辺倒で、こちらの情報を持ち合わせない「押し売り営業」になっていました。

   一方、ネットを見てみれば、アマゾンに代表されるネット通販は、来訪者の購入履歴や、同じような商品に関心を持っている人の購買動向などを「予備情報」として活用し、

「あなたと同じような方はこんなものを購入しています」
「こんなものはいかがですか?」

等の「レコメンド」(おすすめ)のアプローチをしています。

   こうした工夫によって、カタログ的な商品のみ羅列するページに比べて格段の実績をあげているのです。生身のリアル営業が丸腰で「うちの商品いかがですか?」などと言っていたのでは、ネットに到底及びません。

   では、具体的に集めるべき予備情報はどのようなものでしょうか。営業活動には、マーケティングの3Cに沿った「顧客(Custome)」「自社(Company)」「競合(Competitor)」に関する情報が有効ですが、最初のステップで必要な情報は、何より「顧客」に関するものです。

   新規営業でいきなり「自社」製品の話をまくしたてたり、「競合」大手の悪口を並べ立てたり。これでは次のステップにつながるはずがありません。まずは「顧客」情報を集め、いかにそれを活用するかが大切なのです。

   最低でも確認すべきなのは、アプローチ先との「取引履歴」の有無です。取引履歴が「あり」の場合には「いつ、何を、どれだけ購入しているのか」、「なし」の場合には可能な限りターゲットの周辺情報を収集します。

「ネット通販なら何をするか」を想像する

   相手の情報が得にくい初期段階では、まずは周辺情報の入手に力を入れることになります。

   ターゲットが法人の場合は「業界情報」が重要です。経済動向の業界への影響や、業界全体が抱える課題やトピックスは、可能な範囲でチェックしましょう。今は、ネットでいくらでも情報が取れる時代です。外出先でもスマホなどで入手できるはずなのに、便利なツールを十分活用できている営業は本当に少ないと感じます。

   ターゲットが個人の場合には、表札や車のサイズから想定できる家族構成、家の大きさや老朽度合い、近隣住環境などはインプットしておくべきでしょう。ターゲットが店舗の場合も同様です。どんなメニュー構成なのか、どんなスタッフ構成なのか、店づくりのこだわりは何か、店舗は古いか新しいか等々。

   個人宅や店舗を訪問するのに、周りに転がっている山のような情報源を全く視界に捉えずに、いきなりインターホンを押したり店のドアを開けたりするのは、愚の骨頂と言っていいでしょう。

   情報は収集して終わりではなく、いかに次のステップにつなげるかが大切です。「事前情報」を入手したならば、「もしアマゾンのようなネット通販だったら、これを基にどんな問いかけをするだろうか」と考えてみることです。

   さらに、ネットに勝つためには、その弱点の上をいかなくてはなりません。利用した方はお分かりと思いますが、ネット通販は「事前情報収集」から即「提案」に行ってしまう弱点があります。「○○がお好きなようですね」→「ではこれはいかがですか?」と直線的なセールスにならざるを得ないということです。

   リアル営業マンが勝ち残るためには、いきなり商品の提案をするのではなく、相手の懐により深く入り込む「カットイン」や「ヒアリング」というステップにつなげ、より有効な提案に結びつけることが必要です。「カットイン」以降のステップは次週整理します。

大関 暁夫

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