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電話の用件によって「声のテンション」を変えるとうまくいく

   コールセンターには、録音された自分の電話応対を聴き返す「モニタリング」という仕事があります。クレームになった案件を確認し、改善点を見つけるのが目的ですが、

「うるせえ!」「馬鹿野郎!」「どーなってんだよ!」

などと罵倒され、「も、申し訳ございません…」「ひいっ、すみません~」と答える自分の声を聴きながら、そのヘタレさに絶望するわけです。そんなとき、自分の声をもう少しうまくコントロールできれば、相手に与える印象も変わるのになあ、と思うことが多々あります。

クレーム処理も「声が美人」「声がイケメン」なら有利

K先輩は声の使い分けがとても上手(イラスト:N本)
K先輩は声の使い分けがとても上手(イラスト:N本)

   私たちコールセンターで働くオペレーターにとって、「声」だけがお客さまとの接点になります。督促で結果を出している人やクレーム対応が巧みな人は、言葉遣いとともに、声の使い分けがとても上手なのです。

   以前もコラムに登場した先輩のKさんは、遅れが発生してまだ日が浅い「初期延滞」のお客さまには、ものすごく高い声で督促しています。口調も若干砕けていて、

「お支払い日のお知らせでご連絡しましたぁ~」

と、こんな感じです。

   でも、延滞日数が伸びるにつれて、声のテンションが落ちていきます。締め日まで間もない「後期延滞」のお客さまとの交渉は、完全に落ち着いた低めのトーンになります。

「お支払い日のお知らせで、ご連絡させていただきました」

と、しっかりと敬語を使う硬めの話し方になり、その変わりっぷりは本当に同じ人なのか!?と思うくらいです。

   初期滞納の人は、うっかりかもしれないので、まずは気を悪くさせないよう軽い調子でお願いをした方が従ってもらいやすいでしょう。しかし後期滞納は支払いが遅れている自覚がある人が多く、少し緊張感を持って聞き入れてもらう必要があるわけです。

   このように、声の調子は相手の印象に強く作用します。しかし、声が仕事道具であるコールセンターのオペレーターでさえ、声を意識的に操作している人は多くありません。私はこれを、とってももったいないことだと思っています。顔はそうそう変えられないけど、声だけだったら変えられるのに!

特に日本では「見た目よりも声が大事」な理由

   お店で気に入らないことがあって文句を言いたい時に、ものすごい美人や超イケメンの店員さんが出て来たら、腹が立っているのも忘れてしまって、落ち着いたお願い調になったりしないでしょうか。

   初めてあいさつをする時や、クレーム対応しなければいけない時でも、「声が美人」「声がイケメン」なら有利だよなあ――。そんなことを考えながら、話し方の本を読み、セミナーに参加していたとき、こんな興味深い話を聞いたことがありました。

「母国語が異なる多人種が暮らす欧米では、相手の表情やしぐさを見て相手の人となりを判断することが多い。しかし、日本語を話す同人種がほとんどの日本では、見た目よりも声のトーンによって相手の印象を決める傾向が強い」

   あれ…。確か、ベストセラーになった『人は見た目が9割』(新潮新書)では、声や話の内容よりも顔の表情などの見た目の方が、相手の印象をより決定づけると書かれていたはずです。

   でも、『その話し方では軽すぎます!』(すばる舎)の矢野香さんによると、日本社会で相手に印象を与えているのは、意外なことに「声」→「顔や服装」→「体格」の順番だという説があるというのです。

   これはあくまで一実験例のようですが、言われてみれば確かに、私たち日本人は身振り手振りが大きくありませんし、日本語のコミュニケーションが洗練されて、ちょっとした言葉の調子で相手の感情を読み取ったりしている気がします。

   なによりも、電話では見た目で勝負することはできません。みなさんも気の進まない電話をするときには、話す内容や言葉遣いに加えて、高めのテンションでいくか、低めの堅い話し方でいくか、使い分けてみてはいかがでしょうか。(N本=えぬもと)