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日本人がなぜか登場しないシャープの「100周年記念サイト」

   今年2012年は、大正元(1912)年から100年ということもあり、創業100周年を迎える企業が多い年だ。帝国データバンクの調査によれば、今年100周年を迎える企業は1854社で、前年の2.75倍にものぼる。

   そんな記念すべき年を祝うウェブサイトが、いくつか立ち上がっている。シャープの「100周年記念サイト」も、そのひとつだ。記念サイトには、日本語による日本向けのものと、海外向けのものがある。

海外向けサイトにはベトナム語やマレー語も

アジアからの投稿が相次ぐグローバル向けサイトの「ANNIVERSARY SHARE」
アジアからの投稿が相次ぐグローバル向けサイトの「ANNIVERSARY SHARE」

   日本語版では、創業者・早川徳次の人となりや、シャープの歴代の商品が紹介されている。内容はていねいで分かりやすい。「他社にまねされるものをつくれ」という創業者の肉声を交えた動画もある。

「シャープの社名は、早川式繰出鉛筆(シャープペンシル)から来ているのか。ということは、シャーペンは日本人が発明したんだ」
「シャープには意外と国産初、世界初の商品が多いんだなあ」

という印象を受ける。これが海外向けサイトになると、社史的な要素は減り、まったく違う内容になっている。

   いくつかの印象的な動画が掲載されており、ベトナム、インド、中東、中国、アフリカなど世界中の風景や人の姿が見られるが、日本の様子は映らない。かろうじて、シャープの作業着で誘導する人の後ろ姿が日本人かと思うくらいだ。

   「メッセージ」のページは、英語のほか、タイ語、インドネシア語、ベトナム語、マレー語、中国語、アラビア語で書かれている。

   ユニークなしかけもある。自分や家族の「メモリアル」の瞬間を捉えた写真や動画を、その理由とともに投稿できる「ANNIVERSARY SHARE」というコーナーだ。結婚式や子どもの誕生日、初めて巨大な蛇に触った日など、さまざまな投稿に「Congratulations!(おめでとう)」が押せるようになっている。

   自社に対しておめでとうと言わせるのではなく、自社サイトに集まった人たちがお互いにおめでとうと祝福するという仕掛けだ。ここでもマレーシア、タイ、シンガポール、インドネシア、フィリピンなどアジアからの投稿が目につく。

「日本企業」脱却するメッセージなのか

ベトナム語による100周年メッセージ。日本語のメニューはない
ベトナム語による100周年メッセージ。日本語のメニューはない

   投稿された写真や動画を選定し「ANNIVERSARY SHARE MOVIE」を作成し、サイト上で公開される予定のようだ。選出された人の中から、日本旅行のペアチケットが当たる。また、投稿された写真や動画の投票数トップ5にはシャープ製品のプレゼントが贈られる。

   このページからは、アジアやオセアニア、中東の10の拠点を紹介するホームページに飛ぶことができ、日本を除く各ホームページからも「ANNIVERSARY SHARE」のページへリンクが貼られている。

   報道によると、シャープは12年3月期の連結業績見通しで、純損益が過去最悪の2900億円になると見込まれている。13年度の国内採用数はピーク時(1983年度)の10分の1(130人)まで縮小する一方で、海外の採用数は前年度と同じ400人を維持するという。

   筆頭株主が台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業に代わるなど、100周年記念を迎えたシャープをめぐる環境は大きく変化している。日本で創業した世界展開をする会社に変身するというメッセージが、記念サイトに強く込められている気がしてならない。(岡 徳之


※追記:シャープ広報によると、記事内で紹介した「海外向けサイト」は、マレーシアの海外拠点が製作したアジア、オセアニア、中東地区に向けた100 周年サイトであり、「グローバル向けサイト」とは別の位置づけであるとのことだ。