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プラチナバンドをめぐる製薬会社営業マンのボヤキ

   先日、学会で東京に来ていた友人らと同席しました。友人らは、それぞれ大手企業の医薬情報担当者、いわゆるMRです。ビールでの乾杯もそこそこに始まった話は、意外なことにスマートフォンについての話題でした。

   その週の火曜日、製薬大手の武田薬品工業がMRに持たせているiPhoneの契約を、ソフトバンクからKDDIへと全面変更したと報じられたばかり。彼らもまた、契約は個人名義だけれど、端末代金と定額制のパケット料金は会社が負担するというかたちで、ソフトバンクのiPhoneを「会社から支給」されています。

いまのところつながりやすさに変わりはないが

   「プラチナバンドって、いつからだったけ。昨日?」とA氏が口火を切り、B氏が「一昨日じゃなかったですか?」と応じて話が始まりました。

「ふだん、オレ、地方にいるじゃない。だから、東京では電波の状態が良いんだろうと思って休憩中に試してたんだけど、遅い、切れる、つながらないってのは、ぜんぜん変わらなかったよ」

   A氏は、関西地方のある県全域を単独で担当しています。そうした例は珍しいものではないそうで、こうした事情も、製薬会社でスマートフォンやタブレットPCの導入が進んでいる理由です。

「ああ、そうですね、ガッカリでしたね」

と答えたB氏はA氏の後輩で、中部・東海地方の某県の南半分を任されています。

   「地方担当のMRの間じゃ、営業車を運転しながら、iPhoneがつながりやすい通称『アイホットスポット』を見つけるってのが、一種の習わしになっているんですよ(笑)」とB氏。

   A氏が引き取って、「エリアカバー率って、アレって何なの?病院の近くでもつながらない場所ってあるんだよね」と訊ねてきました。

   一般に言われているのは、中継局をつくった時点でそのカバー範囲を「通信可能とみなす」というエリアカバー率の算出方法が、実際の通信、通話の状態を必ずしも反映したものではない、ということです。

「ふーん、そうなんだ。でもさ、都会の方が当然iPhoneを使ってるユーザーが多いんだから、プラチナバンドがスタートってなったら、地方はともかく、都会は『超つながるようになりましたー!』って感じでやるんじゃないの?」

とA氏が言えば、B氏も「ただでさえ評判が悪かったんですから、都会でプラチナバンドが凄いってなれば、地方も期待するじゃないですか」。

このタイミングでキャリアを代えたのはなぜ?

   実は、筆者の知り合いにプラチナバンドの中継局の敷設に関わっている人がいます。その人物が「もうね、めちゃくちゃなスケジュールで、てんてこ舞いだよ」と、2か月ほど前にボヤいていたのを思い出しました。

   「そうなんだ…。なんか頼りないよな、ソフトバンクって。武田の件は業界内じゃ、やっぱ話題になってるし、これまでくすぶっていた現場からの不満が顕在化すれば、後に続く会社も出てくるんじゃない?」とA氏。B氏が続けました。

「プラチナバンド前に様子も見ないで通信キャリアを変更って、よっぽど何か情報を掴んだんですかね?あるいは、よっぽどKDDIが好条件を出してきたとか。いずれにせよ、単なる営業活動で変わるってもんじゃないでしょう?」

   そのあたりは、筆者にもよくわかりません。ただ、この勢いであれば、プラチナバンドの実態次第で契約を変更する法人が出てきてもおかしくはありません。

「ただでさえ忙しいのに、つながる場所を探すとかくだらないことで悩みたくないんだよね。薬と一緒で、ある程度の副作用みたいな、ある場所ではとかある時間帯はつながりにくいって部分は仕方ないと思うけどさ。地方では基本つながりにくいですってのは逆でしょう。いつでも、どこでもつながるってのがあって、その上でだと思うんだよ」

   A氏の言は、しごくもっともな指摘です。とはいえ、プラチナバンドもまだ始まったばかり。今後の展開と充実に期待しましょう。(井上トシユキ)