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日本のプロ野球は、とっとと米メジャーの下部リーグになればいい

   先日、プロ野球のドラフト会議を前に、花巻東高校の大谷翔平選手がメジャー挑戦を表明した。素晴らしい。とかく最近は草食系だとか内ごもりといった言葉を耳にすることが多いが、ちゃんとリスクを取る人は取っているわけだ。国民は素直に若者の挑戦をたたえよう。

   だが残念なことに、彼の英断をあーだこうだ言う人も少なからずいて、母校に抗議電話をかけるあんぽんたんまでいるそうだ。現在、球界には、

「日本球界を経ずにメジャー挑戦した高校生は、日本復帰後3年間はドラフト指名禁止」

というムチャクチャ人権無視な制度があるが、一部にはこの罰則を強化しろという人間までいるという。

メジャーとリンクすれば「野球人気」は復活する

   こういうバカなことをやっているから誰もリスクを取らなくなり、社会が停滞するのだ。こんな制度はとっとと廃止し、選手の行き来を円滑にできるようにしてはどうか。というわけで、人材が流動化することによるメリットについておさらいしておこう。

・アップサイド(上位)のキャリアパスができることで、野球の質が高まる

   現在、ダルビッシュを筆頭に、メジャーで活躍する日本人選手は少なくない。来季も、西武・中島など有力選手の何人かが挑戦するだろう。それをもって日本野球界の空洞化を懸念する声もある。

   だが重要なのは、ダルビッシュ6年6000万ドル、松坂5年5200万ドルなど、メジャーが日本球界とはケタが一つ違う報酬を稼げるキャリアパスとなっている点だ。こういうキャリアパスができることで、日本球界における選手のモチベーションもプレーの質も向上することになる。

・「野球人気」は高まる

   同じく地上波のほとんどないJリーグだが、サッカーの場合は世界レベルでの活躍の舞台が存在し、そこで成功すれば、国内リーグを凌駕する報酬を手にできるというキャリアパスがある。

   サッカーの競技人口が少子化にもかかわらず増加傾向にあるのは、このキャリアパスの存在が大きいだろう。同様にメジャーとリンクすることで、野球自体の人気も高まることになるはずだ。

やがてWBCがワールドカップになる

   恐らく、日本の球界関係者が心配しているのは、日本のプロ野球自体がMLBの下部リーグ的存在となってしまうことではないか。だとすれば、残念ながらそれはもう避けられない。より市場が大きく、報酬の高い側に優秀な人材が集まるのは当然だからだ。

   ただし、主力選手をメジャーに輩出しているわけだから、国全体としての野球地力が高まっていることは間違いない。リーグではなく、国家代表という視点で野球を眺めればいいのだ。

   サッカーのW杯があれだけ盛り上がるのは、世界中のリーグで活躍する自国の選手が国の看板を背負ってドリームチームを結成して戦うことにあり、それは同時に、現在のWBCに完全に欠けている視点でもある。残念ながら現在のWBCは「相手チームがよくわからない片側オールスターゲーム」の域を出てはいない。

   ちなみに筆者は、プロ野球をもう15年以上見ていないし、これから見る予定もない。ただ、選手があちこちグローバルに動き回ってその活躍ぶりが報じられ、定期的に世界中で活躍する日本人選手が集まって代表チームが結成されるのなら、きっとその代表選は見たいと思うだろう。

   そこで夢中になれば、再びプロ野球をみることもあるかもしれない。きっと同じように考えている人間は少なくないのではないか。

「海外に出たら、戻る場所はないぞ」

と若者を脅迫するよりも、海外からも評価されるようになった日本の野球力を素直に喜ぼうではないか。それでも「グローバルに活躍できるだけの人材でありつつ、組織に従順な若者」を求め続けるというのなら、そんな人材が本当に実在するのかどうか、球団の親会社に聞いてみるといい。(城繁幸)