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人を採用するときには「ネットで氏名を検索」するのが鉄則だ

「不正の前歴がある人は、また不正をする可能性が高い」

   そう言い切れるかどうかはわからないが、少なくとも、求職者が過去に不正を犯しているという事実は、採用選考における重要な判断材料となる。しかし、提出された履歴書や職務経歴書にそのような「前歴」が記載されることはまずないであろう。

   履歴書の「賞罰欄」に、自分が不利になることを正直に書く求職者はなかなかいない。そこでぜひ行いたいのが、求職者のフルネームをキーワードにしたGoogle検索である。

「10年前の不正前歴」も簡単に分かる

Google検索だけで決め付けてはいけないが
Google検索だけで決め付けてはいけないが

   東京都内の歯科診療所に勤務していた歯科医(男性、58歳)が、2011年8月から9月にかけて行ったインプラント治療の診療報酬106万円を着服したとして、業務上横領容疑で逮捕された。

   歯科助手に指示して、カルテに治療の記録をせずに隠ぺいを図ったが、内部調査で不正が発覚。診療所は11年12月に男を告訴していた。

   実はこの歯科医、約10年前に開業していたときに、架空の診療報酬など230万円を社会保険事務所に不正請求したとして、健康保険法に基づく保険医登録を取り消された前歴があった。

   この事件に関しても、容疑者の名前で検索したら、架空請求で行政処分を受けたという2001年4月の記事がヒットした。

   もちろんGoogle検索だけでは万全の対策とはいえないし、犯罪歴や処分歴があるという理由だけで不採用とするのも問題だろう。同姓同名の場合もあるし、インターネット上には簡単にデマを書けるので情報を簡単に鵜呑みにしてもいけない。

   それでも、コストを掛けず手軽にできるリスク管理策として、特に即戦力として迎え入れる中途採用の選考プロセスには必ず組み込むことをお薦めする。

   ところで、医者に関わる不正といえば、医師の国家資格を詐称して健康診断や資格学校講師をしていた男のニュースが耳に新しい。この事件では、病院も資格学校も医師免許証の確認をコピーで済ませてしまっていた。男は、ネット上に公開されている他人の免許証の画像を悪用していたそうだ。

履歴書にある出身校の「学部名」も要確認

   原本確認は当たり前であるが、実際には「原本は実家に置いてあり取りに帰れない」と言い訳されたり、「まさかお医者さんが人をだますことはないだろう」と思い込んだりして、コピーで済ませてしまうこともあるのだろう。職務上不可欠な資格については、何が何でも原本確認を徹底しなければならない。

   履歴書上の学歴・職歴等の記載事項も注意深くチェックする必要がある。ニセ医師であると発覚したのは、男が履歴書に記載した大学の学部名が実在しないことが分かったからだった。これについても、選考の段階で大学のホームページを確認していれば簡単に気づけただろう。

   さらにやっかいなのは、最近「アリバイ屋」という悪徳サービスが横行していることだ。実態のない会社を設立登記し、その社名で源泉徴収票や雇用証明書を販売して経歴詐称に加担するそうだ。

   「原本」ですら鵜呑みにできないと思うとやりきれなくなるが、そのような場合には、その会社に電話する、住所地を訪問してみる、求職者にその会社での経験を細かく質問するなどすれば、ぼろを出すかもしれない。

   相手を疑ってかかるのはよくないが、人を雇うというのは会社にとって重要な投資である。どんなに美しく書かれていても、履歴書は求職者本人が作成するものであり、内容が真実だという保証はない。採用担当者も、監査人と同じく健全な懐疑心をもって、入念にチェックしたいものだ。(甘粕潔)