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アニメのシナリオ会議には「新作お菓子」が欠かせない!

「ここはもっと、何か欲しいよねえ…」
「だったら、こういうアイデアはどう!?」

   出席者が熱く意見を交わすクリエイティブの会議は、時間が長くなりがちです。アニメのシナリオ会議も、短くて2時間、長ければ6~7時間かかり、ときには翌日に持ち越すこともあります。

   とはいえ、長時間ぶっ通しで会議ができるツワモノも少なく、途中に休憩や雑談が欠かせません。特にコンセプトを決めるような長丁場の会議の場合、「アイデアが出尽くした」と思ったところからが勝負です。登山に例えれば7合目くらい、産みの苦しみもこれからが本番というところで、満を持して「甘いモノ」が投入されます。

定番の「柿の種」「ばかうけ」のほか、期間限定チョコも

仕事の成果は「お菓子選び」に左右される?
仕事の成果は「お菓子選び」に左右される?

   あるシナリオ会議では毎回、期間限定の「キットカット」が登場しました。「宇治抹茶味」「大納言あずき味」「大学いも味」といった季節限定品のほか、「しょうゆ味」「八丁味噌風味」なんてものもありました。

   中国出張帰りのスタッフから、お土産として「上海蟹味」や「北京ダック味」「マンゴープリン味」のお菓子をいただいたこともありました。クリスマスやバレンタインデー限定のイベント系お菓子を自分で買っていったこともあります。

   とはいえ、甘いものだけでは口が飽きてしまうのが人間の性。しょっぱいお菓子や辛いお菓子も人気です。「華麗満月」「柿の種」「ばかうけ」は定番。豆菓子は塩味以外に、梅味、チーズ味、ワサビ味、柚子胡椒味、アーモンド味、キャラメル味、メイプルシロップ味も人気でした。

「徹夜でシナリオのときに効くよ!」

と、あるライターさんから眠気対策にブラックコーヒー味の豆をいただいたこともあります。バレンタインデーに意外性をねらって、袋いっぱいに特大のハート煎餅を買ってきたライターさんもいました。

   意外性といえば、ある監督にシャレで「納豆とコーヒーゼリーのサンドイッチ」を差し入れたところ、かなりインパクトがあったらしく、彼は別のシナリオ会議にそれを買っていきました。すると、今まで食べたミスマッチな食べ物の話で盛り上がり、その日の会議ではいいアイデアがたくさん出たそうです。

意外なお菓子は「面白いコト」の記憶を引き出す

   このように、お菓子や差し入れは、会議の流れをよい方向に変えることがあります。会議の途中で意外性のある食べ物が出ると、それが枕となって話題が広がり、シナリオの構成や内容が広がるという効果があるのです。

   「面白いお菓子」は、会議メンバーの雑談を刺激して「面白いコト」に関する記憶を連鎖的に引き出すきっかけになります。認知心理学では、

「芋づる式に想起された記憶は、いいアイデアを生む」

という研究もあります。

   誰にでも経験があると思いますが、アイデアというものは、まったく関係のない別のものがきっかけとなってやってくることがあります。「そういえばあれって…」と何げなく思いつくときには、むしろ飛躍していることが多く、この飛躍が思いがけない新アイデアを生むきっかけになります。

   心理学的に言うと、「メタ認知」によってある事象の抽象化が行われ、それがトリガーとなって一見まったく関係のない事象を結びつけます。このような「アナロジー思考」が活発になった結果、それまでは思いつかなかった問題解決の糸口が見えてくることがあるわけです。

   つまり「目新しいお菓子」や「意外なお菓子」は、メンバー同士の雑談を活発で豊かなものにし、普通に考えていたら浮かばなかった面白いアイデアをポンポン生むこともある、ということです。

   ということで、創造的な会議の準備には「お菓子選び」もだいじな仕事。教育費や会議室の設備におカネをかけるだけでなく、数百円の面白いお菓子を持ち寄ってみるのも、新しいアイデアの起爆剤として効果があるかもしれませんよ。(数井浩子)