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「災害に便乗した詐欺」への対策 卑劣な犯罪を許すな!米国の先進事例に学ぶ

   東日本大震災の後、冷静な行動で国際的にも高い評価を受けた日本国民だが、災害に乗じて犯罪に手を染める者もいた。消費者庁が国民生活センターに設置した「震災に関連する悪質商法110番」には、約4か月間に919件の相談が寄せられたという。

   人の不幸や世の中の混乱に乗じて不正を働く悪人は、許しがたき反社会的存在だ。自然災害大国日本では、一人ひとりが自分の身を守ることが必要だが、国をあげてこれを阻止する米国の先進的な事例に学ぶ余地もかなり多いと思われる。

被災者に「水晶玉」や「お札」を執拗に勧める例も

人の不幸につけこむとは卑怯極まりない
人の不幸につけこむとは卑怯極まりない

   前述の国民生活センターの報告書には、次のような事例が紹介されている。

・水没した車を売りつけられた
・粗悪な放射能測定器を買わされた
・「震災で大量の携帯電話機が流失し、プラチナや金などの貴金属が必要になっている」と説明され、指輪などを安値で売らされ、個人情報も言われるままに提供してしまった
・地震などの被害に見舞われたのはエネルギーが落ちているためなので、水晶パワーで運気をアップさせるというセールストークで執拗に訪問を受けた。断ったら、2万円以上のお札を勧められた

   被災者の弱みにつけこんだ詐欺的行為は、先月ハリケーン・サンディに東海岸を襲われた米国でも起こっている。FBI(米国連邦捜査局)のホームページには、早速次のような注意喚起がなされていた。

「ハリケーン・サンディによる災害発生を受け、国民のみなさんは、eメール、ウェブサイト、戸別訪問、郵便、電話など様々な形で被災者への寄付金の依頼を受けるでしょう。その際には、詐欺の疑いがないか、信用できる相手かどうかを慎重に検討してください(筆者仮訳)」

   米国には、全米災害詐欺対策センター(NCDF)という組織がある。2005年8月のハリケーン・カトリーナに絡んだ詐欺対策を目的に設立された司法省の機関で、災害詐欺に関する情報を国民から収集し、捜査当局に提供する役割を担っている。今回のハリケーン・サンディに関しても、フリーダイヤルにより24時間体制で通報を受け付けている。

日本にもNCDFやFEMAのような活動があってもいい

   また、米国の国土安全保障省の傘下には、自然災害、テロなど「あらゆる危険(ハザード)から国民を守る」というミッションをもった連邦緊急事態管理庁(FEMA)があり、11月19日付で、ニューヨーク市民に対して災害詐欺の注意喚起をしている。

   特に、損壊した家屋の持ち主は、次のような手口の詐欺に気をつけるべきだそうだ。

・FEMA等の政府職員を装って家屋を調査し、修理費用を詐取する
・建築業者になりすまして即時修理を迫り、代金を詐取する
・電話、eメール、手紙、戸別訪問などにより、虚偽の義援金を募る
・公的支援の提供を装って前払い手数料を求めたり、個人情報を詐取する

   FEMAは、「職員証の提示を求めるなどにより相手をきちんと確認する」「職員が現金や個人情報を直接要求することは絶対にない」「修理に際しては必ず相見積りを取る」「疑わしいと感じたらとにかく通報する」など慎重な対応を呼びかけている。

   掲げられているのは、すべて「よくある」手口であり、冷静に考えればだまされないはずだが、被災者や、被災者を助けたいと熱望している人に「冷静に」というのは難しいのかもしれない。

   とはいえ、NCDFやFEMAのような活動があれば、少しでも被害は減らせるし、犯罪行為に対する抑止力にもなりうる。耐震工事など直接的な災害対策のほかに、詐欺のような二次被害の防止策もぜひ取り入れて欲しい。(甘粕潔)