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あの東芝が? 「女子大生とのバーチャル恋愛体験サイト」を開設

   お堅いイメージの東芝が、「らしくない」ウェブサイトを開設している。現役女子大生との恋愛を疑似体験できる「7Days memory ~おもいで、つくろ。~」だ。7日間の体験後には、登場した女子大生と実際に会えるイベントの情報が見られる。

   フェイスブックまたはツイッターのアカウントでログインすると、サイト上に2人の女性の写真が現れる。好みの女性を選択すると、詳しいプロフィールや写真が表示される。さらに女性と2人きりでデートしているような短い動画を見ることもできる。

   翌日、再びサイトにアクセスすると、前回選んだ女性の隣に、新しい女性が表示される。ここで前回と違う女性を選ぶと、前の女性の写真もデート動画も見ることができなくなってしまう。まるで「思い出が消えてしまった」ような気分だ。

思い出を貯めておく「デジタル貸金庫」を訴求

「7Days memory」は現役女子大生ユニット「PAJACOLLE(パジャコレ)」とのコラボ
「7Days memory」は現役女子大生ユニット「PAJACOLLE(パジャコレ)」とのコラボ

   このサイトでプロモーションしているのは、月額制のオンラインストレージサービス「デジタル貸金庫」だ。独自の暗号化機能を備えたセキュリティ環境のもと、月額390円という安価で10Gバイトの大容量データ保管ができるサービスである。

   サイトのねらいについて、東芝広報部の桑原祐吾氏は次のように説明してくれた。

「過去の動画にアクセスできなくなることで、思い出が消えてしまったような喪失感を抱くでしょう。あらためて『大切なデジタルデータを保管すること』がいかに重要か、このサイトで気づいてもらいたいのです」

   撮り貯めた家族の思い出が、さまざまな記録媒体に収まったまま散逸してしまったという人もいるだろう。安全なオンラインストレージを使えば、いつまでもその記録が残り、取り出せるようになる。

   東芝が「らしくない」サイトを仕掛けるのは、今回が初めてではない。2012年2月には同社の二次電池「SCiB」をプロモーションする目的で、5人の美女と15分間メールのやりとりをする仮想体験ができる「15minute LOVE」というサイトを開設していた。

   古くからの大企業で、こういう柔らかい企画を提案してもなかなか通りにくいのではないか、という疑問を桑原氏にぶつけたところ、意外な答えが返ってきた。

「東芝のルーツは、ユーモアとアイデア、いたずら心のある『からくり儀右衛門』こと田中久重です。私たちはそのようなDNAを受け継いでいますので、こういう遊び心のある企画は、意外と『東芝らしい』と思っているんですよ」

一般的な企業イメージより「生活者の話題性」を優先

矢部美穂さんなど5人の女性と「モテキ気分」が味わえる「15minute LOVE」
矢部美穂さんなど5人の女性と「モテキ気分」が味わえる「15minute LOVE」

   田中久重とは、江戸時代から明治時代に活躍した発明家。彼が創業した芝浦製作所は、後に東芝の重電部門に発展していった。東芝の企業サイトには「東芝のルーツ・田中久重ものがたり」というコーナーがある。

   もしも「デジタル貸金庫」の機能を直接訴求しようとしても、ターゲットである生活者には届かない。高額な最終製品でもないので、有名タレントを使ったプロモーションもできない。しかし、クリスマスという時期に合わせたネットの話題性をねらった企画であれば、理にかなっていることになる。

   とはいえ、単なる遊び心だけでは企画は通らない。社内を説得するプロセスにおいては、桑原氏も「ターゲット、商品性、話題性を検討し、あくまで論理的に説明しています。周りから見れば、ただ好きなことやっているように見えるのが辛いところですが…」となかなか苦労しているようだ。

   そんな企画が功を奏し、「15minute LOVE」は1か月で20万超のサイト来訪者があった。15分間以上のサイト滞在者も3割以上と、ねらいどおりの効果だ。ただ、ネット掲示板などに批判的なコメントがあがったという。

「東芝の企業イメージとのギャップがあるがゆえのコメントも多かったです。担当者としては正直胃が痛みますが、いろいろな意見を受け止めながら、まったく話題にならないよりはよいと思うようにしています」

   企業イメージの「らしさ」にこだわって堅持するか、目的達成のためにそれを崩す企画を許容するのか。大企業のプロモーション担当には頭の痛い悩みだが、果敢に後者を選んだ東芝のチャレンジ精神に敬意を表したい。(岡 徳之