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髪を引っ張る、胸ぐら掴む、物を投げつける… パワハラ被害の経験者は4人に1人

   厚生労働省が初となる「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」をまとめ、2012年12月12日に公表している。過去3年間に「パワハラを受けた」と答えた人は、回答した従業員の25.3%。勤務先で「パワハラを見たり相談を受けたことがある」と答えた人は28.2%を占めた。

   4580社の企業(正社員30人以上、郵送調査)と、9000人の従業員(インターネット調査)から回答を得た。従業員から寄せられたパワハラの具体的内容には、次のような「精神的な攻撃」が最も多かったという。

「お前が辞めれば改善効果が300万円出るなどと会議上で言われた」(20代男性)
「同僚の前で無能扱いする言葉を受けた」(50歳以上男性)
「皆の前で大声で叱責。物を投げつけられる」(30代女性)

40代女性「終業間際に仕事を押し付けてくる」

「営業なのに買い物や倉庫整理などを強要」「草むしりをさせられた」といったケースも
「営業なのに買い物や倉庫整理などを強要」「草むしりをさせられた」といったケースも

   身体的攻撃としては、「足で蹴られる」(50歳以上女性)、「頭をこづかれる」(50歳以上男性)のほか、「胸ぐらを掴む、髪を引っ張る、火の着いたタバコを投げる」(40代男性)といった酷いものも見られる。

   40代女性は「終業間際に過重な仕事を毎回押し付ける」、20代男性は「一人では無理だとわかっている仕事を一人でやらせる」といった過大な要求に悩んでいる。逆に「営業なのに買い物や倉庫整理などを強要」(40代男性)、「草むしりをさせられた」(50歳以上男性)といった過小な要求のケースもある。

   上司から「いい年をして結婚もしていない、子供もいないから下の者に対して愛情のある叱り方ができない」と言われたケースもあったが、そういう自分の叱り方はどうなのだろう。

   しかし、従業員が会社に訴えても、明確にパワハラと認められない場合も少なくないようだ。大手企業ではかなり対策が進んでいるはずだが、中小では手が着けられていないところがあるのかもしれない。

   パワハラを会社に相談した人のうち、会社が「パワハラがあったと認めた」人は11.6%にとどまり、「パワハラと認めなかった」ケースが22.3%を占めている。最も多かったのは、会社は「パワハラがあったともなかったとも判断せず、あいまいなまま」と答えた人(57.7%)だった。

   会社側は、パワハラを訴える従業員に警戒心を高めている部分もある。パワハラ予防・解決のための取組みを進めることで、起こりそうな問題のトップは「権利ばかり主張する者が増える」で64.5%(複数回答)にのぼる。

   2位以下にも「パワハラに該当すると思えないような訴えが増える」「管理職が弱腰になる」「上司と部下の深いコミュニケーションが取れなくなる」が続いている。

「能力不足を他責にする」と嘆く企業も

   会社がパワハラを訴える従業員を警戒する背景には、パワハラを訴える従業員への不信感があるとみられる。自由記述の中には、次のような意見があった。

「軟弱な若者が増えた」(製造業)
「能力不足を他責にする」(情報通信)
「パワハラを楯に要求を押し通す(実際にある)」(運輸)
「相談者の認識誤りや過剰反応」(インフラ)
「遅刻、さぼりなどの指導に応じない若者が増えた」(卸・小売)

   確かに、従業員が訴える「パワハラと感じた行為(会社に相談しなかった場合)」の中にも、会社が判断に迷いそうなものが含まれている。

「何かにつけて業務命令と言う」(20代女性)
「意見を押し付ける」(30代女性)
「ちゃんと仕事を教えてくれない」(40代女性)
「図面を何度も修正させられた」(30代男性)

   社員は給与と引き換えに、上司の業務命令に従うものだが、それを「押し付けられた」と反発されては、会社側としては首を傾げたくもなるだろう。

   一方で、上司と部下との間で最も認識のズレが大きいのは「感情的に怒る」ことに対する評価のようだ。上司は仕事における責任と権限が重いだけなのに、人間的に偉いと勘違いすると、部下に礼を失することを平気でするようになるのではないか。