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就活「12月解禁」で短期決戦 ギャップ埋める「試職」に注目

   就活の「12月解禁」が導入されて2年目となる。従来の10月解禁よりも採用広報期間が2か月短くなったことから、1年目はこの「短期決戦」に対応しきれなかった企業も多いという。戦略の見直しを迫られる中で、広がりを見せているのが「試職(ししょく)」という取り組みだ。

「ミスマッチ」「早期離職」のリスク回避

「試職」体験でミスマッチを解消
「試職」体験でミスマッチを解消

   2014年春卒大学生の就活解禁日である2012年12月1日は土曜日だったこともあり、複数の就職情報サイトが合同説明会を主催。博報堂は0時からウェブ上で「日本一早い会社説明会」を開催するなど、企業側は優秀な学生確保に躍起な様子が見て取れる。

   しかし肝心の学生側は不安が先行している。2013年卒の学生を対象に楽天リサーチが行ったアンケートでは、就活期間が短くなったことに関して、「自己分析をする期間が短い」(48.9%)、「企業情報を収集できない」(46.1%)、「就職活動を開始してからの活動時期が短い」(39.3%)といった部分に不安を感じているという結果が出ている。

   企業側・学生側ともに「ミスマッチ」「早期離職」は大きな損失といえる。そのリスクは「12月解禁」でさらに高まっているかもしれない。これを回避する動きのひとつとして「試職」という動きが始まっている。

   この「試職」という言葉、リクルートホールディングスが毎年発表している「トレンド予測」の中で、「就職領域における2013年予測」のキーワードとして挙がったものである。

   リクナビ編集長の岡崎仁美氏は、「知らないことをやりたいと思えないのは当然。学生のみならず企業にとっても知る・知らせる機会は極めて重要」と話す。だからこそ、内定を出す前に仕事体験や実習を行う「試職」を行なう企業が増えているというのだ。

仕事のやりがいを「リアルに感じ」、入社の決め手に

   最終的な決断をする前に、仕事や職場を試すのが「試職」。特に今年はエントリー、会社説明会、面接、内定というオーソドックスな採用フローに、体験型の会社説明会や、職場体験選考、仕事実習を導入するパターンが広がるそうだ。採用・就職時点でのマッチング向上の効果が期待できると、岡崎氏は話す。

「実際の仕事に近いことを体験するのですから、参加学生はそれなりの覚悟が必要です。企業にとっては、かえって手間のかかるように見えるかも知れませんが、よりその企業への就職を前向きに考えている学生に絞って手厚いコミュニケーションを施せるという利点があります。しっかり相思相愛のマッチングをしたい企業にはリーズナブルな手法でしょう」

   実際に導入している企業は大手から中小まで幅広い。またイメージ先行になりがちなBtoC企業なども積極的だ。

「入社後の不適応を最初から望んで就職する学生も採用する企業もいません。しかし実際にはそうしたことが少なからず起きている。お互いが合う合わないを判断する必要がある就職・採用において『試職』は双方にとって良い機会になるのです」

   学生側からも「体感することで、仕事のやりがいや大変さをリアルに感じ、入社の決め手になった」「内定前に仕事の流れを理解でき、入社して1年たったがギャップがない」といった声が挙がっている。

   企業側からも「仕事や職場のリアリティを持ってもらうためには、実際に働いてもらうのが一番」「企業としての姿勢や仕事内容を理解し共感させる場として有効」といった声は多い。この「試職」が新卒採用のスタンダードとなるか注目だ。